トップ情報カーオーディオに関する情報ローゼンクランツのデモカー製作・・・その3

今のところ予定通りです



 バッフルの素材は何が良いのか?

 ローゼンクランツのホーム用スピーカーでは、ハードメイプルの縦方向継ぎ目無しの1本通し集成材を使っています。しかし、この材料をカーで使うとなると良い音も出る代わりに粗も目立つので条件の厳しいカーオーディオで使うにはあまりにもハードルが高過ぎます。また、狂いが生じ易い上に価格も高いのでちょっと適しません。

 そうなると種類の違いはともあれ自ずと合板かMDFに絞られてきます。合板は反発力があって快活な音がしますが、ある音量以上になると制動が効かず暴れます。反面MDFは暴れはしませんが、反対に暗く沈みがちな音の傾向を払拭するのはちょっと困難です。


 魔法のペースト状パテ

 こんな具合に決め手に欠いているのではないでしょうか。しかし、何事も工夫次第です。私の場合は今回MDFにしました。少し色の濃いやつです。これにクラスAが輸入しているAnti Noise Paste(5,800円)を塗って使うのです。これで両者の良いとこ取りの材料に変身します。程よいデッドニング状態でありながら反発力も生まれます。

 ハンバーグがステーキに生まれ変わると言っていいでしょう。なぜハンバーグかといいますと、おがくずを糊で固めたのがMDFですので、その正体はハンバーグと同じなのです。それにペーストパテを塗ると、繊維質が粉体を一体化して無垢木に戻ったように、正に夢のようなオーディオボードに変身するのです。


 ただこれも量が過ぎると暴れ易くなりますので使い方にはテクニックが要求されます。塗るのは木口(こぐち)の面だけですが、内も外も塗ります。乾いたらペーパーで面を整えます。その後、全面に防水塗料を吹いて出来上がりです。これによって振動は横方向への逃げ場を失いますので、自ずと板面の前後の動きが顕著になります。簡単に言えば左右の動きは無視して前後のみに集中出来るようになるのです。それはスピーカーユニットとの一体となった動きが可能になるのです。音楽振動に呼応するような動きです。打てば響くといったイメージです。

 轟くような太鼓の音からメロディー楽器までみんなで音楽を楽しんでいるかのように歌い始めます。とにかく音が多彩になります。不要共振でマスキングされてしまっていた音楽情報が見事に甦ってくるのです。


 板厚の組み合わせ

 今回のドアーバッフルは4枚の板から出来ております。ドアーからスピーカーを取り付けてある方へ18→15→15→18としてあります。これは振動に緩急と強弱を付与するのが目的です。音楽でいうとテンポとかリズムのノリや溜めです。この感覚は豊富な経験によって成せるもので一朝一夕にイメージ出来るものではありません。

 合計66ミリですから以下のように色々組み合わせできます。その中でも並べる順番によって何拍とか何拍子といった風にリズム感に違いが出るのです。

 12x4+18x1=66
 24x2+18x1=66
  24x2+9x2=66

 66ですと、どうイメージしても18→15→15→18が良いですね。これは音のカラクリでいうと「構造による音の違い」になります。上のパテの話は塗り物すなわち「塗装や塗料による音の違い」です。今回のデモカー製作に当たっても、音のカラクリと題して研究してきた事を確実に実践しているだけです。当然素材の持つ「響きの方向性」も確認して組んでありますし、「形状面」においても音を考慮して設計しております。


 スピーカーをどの場所に取り付けるか?

 元付いてあった所より数センチ斜め上方に移設してあります。これは振動の暴れるポイントから、収束するポイントへと周期を調べた上で修正しました。ドアー周りの音決めの重要課題項目として知っておいて欲しいと思います。


 ドアー部分の制振

 どんな素材を、
 どんな形状にして、
 どの場所に、
 どれだけの量を、
 何の為に、
 どう貼るかです。

 この5W1H全てに理由が分かった上で貼ってやらないと、何度も試行錯誤でやるしかありません。そうなると良かったり悪かったりの開きが大きく出ます。ポイントはドアーの中でも特にスピーカーの周囲(フロント側の下部)のS/Nをどうやって確保するかです。


 その為には振動の停滞を避け、前方から後方へ逃がすしてやるのです。それは制振材の方向性を活かした使い方によって可能となります。特にスピーカーから最初に受ける背圧の部分を、ドアーの表側の鉄板にスピーカーの芯に合わせるように同心円状に貼ります。ここを始点にして振動が収束するようにしてやるのです。


 機器に頼らず、腕で出す良い音

 今回のデモカーは、安い機器であっても良い音は作れるというコンセプトで出発しました。それらの理由で当初はヘッドユニットをナカミチの7万円台の物で組む予定だったのですが、急きょパイオニアの01のコンビに変更を決めました。その理由は、普及率に目を向け、誰でもが分かる共通項の音を用意しておく必要を感じたからです。それが一番関心を持ってもらえる重要ポイントと考えたからです。さらに、ケーブルやインストール技術による音の違いを感じて貰うのは難しいと思ったのももうひとつの理由です。



 仮の音出し

 居ても立ってもいられず、仮結線してドアー部分だけで音出しすることにしました。凄く良い音と、どうにもならない音との混在状態です。でも、結論から言いますとバッチリでしょう!。しかし、佐藤さんにしてみると心配のようです。自分のチェック用のディスクを矢継ぎ早にかけ・・・、『うぅ〜〜〜これは駄目でしょう!』と厳しいコメント。『この風呂の中で歌っているような感じを拭い去るには根本的に対策を考え直さないと・・・』。


 勿論今鳴っている音は良くないのは承知の上です。この鳴り方をしているのであれば、あとでどうにでもなると私には自信があるのです。それは、音が悪くなる要素など何一つないように、完璧な仕事をここまでして来ているからです。

 その理由の一つとして、スピーカーをドアー部分に取り付ける前に、ドアー内部に向かって”あぁ〜”と声を吹き込んだ際に何一つ付帯音なり不要共振はなかったからです。それは佐藤さんも確認済みのはず。それでも実際に今鳴っている音は頂けないのです。ですから、今の時点で言えば佐藤さんの答えが正解です。でも私にとっては先でキッチリと答えが出るのを確信しているから少しも慌てる事はありません。

 「ちょっと待ってて下さいね、佐藤さん、スピーカーバッフルをこれから正式に取り付けますから」。丁度その日は遠く福島の方からローゼンクランツのケーブルにやり変えたいという目的でお客さんがあったのです。実はこの方とは幕張MES会場で落ち合い、彼のエスティマの音のクリニックをして差し上げたので面識のある方なのです。

 「今はこんな音ですが、丁度良い機会ですので、私がこれからネジ1本まで集中して組み立てた音をすぐこの後聴いて頂けますので楽しみにしていて下さい」。「こんな事は滅多に無いですからね」。

 「ヨシ!、さ〜どうだ!」。気合と共に最後のネジを締め終えました。

 良くなりました。

 完璧ではないにせよ、見違えるような音に変身しました。

 1曲1曲、あれよあれよと音は安定に向かって良くなって行きます。

 正式に完成した時の音が大変楽しみです。


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