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その8 試作機が出来上がってきました


 8枚描いた図面の中から最終的に残ったのは二つでしたというのが前回までの話でした。しかし、その図面はまだお見せしていませんでしたので今回披露させていただきます。オリジナルの図面と対比出来るように横に並べ、そして、その違いから何を狙ってそうなったのかを説明してみたいと思います。

オリジナルのフェーズプラグ ローゼンクランツフェーズプラグ

 オリジナルと数ある市販品群の形状に見る特徴

 機種によって材質の違いがありますが、私が基本にしたのは805のシグネチャーです。それはアルミで出来ていてネジの取り付けてあるネックの部分が、肉眼では分からないぐらいほんの僅かですが、実は中心に向かってすり鉢状に削ってあります。即ち外周の部分で幅の狭い円接触になっているのです。

 外周部で当たるところと隙間の出来るところを嫌っての設計でしょうが、設計というより加工サイドの人間の考えることなのです。もっと厳密に言うと両者の折中案だと私は思います。これは、ガタツキが出ない為の工法でもあり、職人の世界で言う”逃げ”という手法でもあるのです。

 そんな理由はどちらでもいいのですが、この形状はパラボラアンテナのようにエネルギーを中心に集める作用が働きます。一旦発生した音楽振動エネルギーが聴き手の方向に出て行かないで、自分の方に逆流する事自体が拙いのです。これが音抜けが今一歩の理由の一つでもあるのです。

 いくつかのメーカーから発売されているフェーズプラグを店頭のショーウインド越しに見ますと、もっとも問題なのは階段状に内側の部分を座具っている形状の物です。これでは音楽振動を内部に閉じ込めてしまい、時間軸のズレやニジミを誘発する要因になるのは容易に想像出来るでしょう。

 これはダムを作ったことによって魚が川に戻れないのと同じ状態です。即ち音楽という命が繋がれて行かないのです。この両者の形状の説明からしても、明らかに純正の方が良いのが分かっていただけるでしょう。

オリジナルのフェーズプラグ ローゼンクランツフェーズプラグ

 ローゼンクランツの形状に見る特徴

 ネックの外周部分をアール加工しております。これによって中心のネジで受けた音楽エネルギーの流れは、砲弾の先端方向に向かってスムーズに流れて行くのです。このアールの緩やかさをどれ位にするのかがポイントなのです。これを決めるだけでも波動コントロールというローゼンクランツ特有の微調整技術がモノを言うのです。

 『な〜んだ、それ位の事であれば次回から出来るよ』、と皆さん思うでしょうが、このちょうど良いところを見つけ出すのは至難の業ではありません。何百回、何千回とやっても、あるいは何十年やっても、図面の通りに加工しているだけでは何故と言うのが分からないのです。

 私の設計のイメージは横から見たこの形状をカーレース場のコースに見なしているのです。車が淀みなく、いかにスムーズに流れるように運転出来るかという風に。結局のところ設計に於いては、どれだけ良い音で聴きたいかという思いの強さが最後にモノを言うのではないでしょうか。


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