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公正で、あたかも数学の定理のよう


 ----- Original Message -----
 From: Y.I
 To: info@rosenkranz-jp.com
 Sent: Sunday, December 07, 2003 4:16 PM
 Subject: エボニー製フェーズプラグの感想


 貝崎静雄 様

 こんにちは。

 先月28日はエボニー製フェーズプラグをお送りくださって、ありがとうございました。直ちに拝受のお知らせをすべきところでありましたが、今日までご連絡が遅れまして、申し訳ありませんでした。

 起きれば仕事の時間、帰れば寝る時間、というような生活が続く中で、強引に時間を作り上げて、試聴させていただきました。レポートの期限が受取り後10日ということですから、今日でちょうど10日ということになります。間に合ってほっとしているところです。至らない感想文かと存じますが、よろしくご笑納くださいませ。


 今、目の前にフェーズプラグが3つ並んでいます。1つ目は黒いプラスチックの純正プラグ。2つ目は銀色に光るステンレス製プラグ。3つ目ローゼンクランツのエボニー製プラグ。

 以前N804をメインにしていたとき、良くなるならばとステンレス製プラグに手を出し、これをN804に装着して聴いてみたことがあります。最初は音色に若干の力強さと分厚さと高級な感触が具わったように感じて満足していたのですが、装着してから数ヶ月して、SPやアンプのセッティングが進んでくると、その音は高級でも何でもなく、実は著しくバランスの崩れた支離滅裂なサウンドであることが判明したので、純正のプラグに戻してしまいました。

 判ってみれば、冷たいのです。高域が暴れて、金切り声を発するのです。もともと「冷たい」と評価を受けがちなSPなのに加えて、ステンレスプラグにすると、冷たさがますます激しくなり、我慢できなくなります。ちょうど、氷を手のひらに乗せるとジンジンしてきて耐えられなくなるのと同じようなものでした。


 このステンレスプラグを体験中に弟の感想を聞いたことがありましたが、「音色が冷たくなった」と言う他はさほどの感想を持たなかったようです。弟の耳のほうが遥かに進んでいるようです。あの頃はいろいろな要素がまだ未分化で、3重にも4重にも分厚いヴェールがかかっているようなサウンドでしたから、変化の区別がつきにくかったのだと思います。

 弟の提案で、プラグ無しの状態で聴いたことも思い出しました。あれは案外好印象でした。音色を構成するのに何か決定的な成分を無くした感じでしたが、余分な刺激音がなくなったので、聴きやすさという点では確かに上でした。しかし、歯抜けのような、鼻をもがれたような、いかにも間抜けな外観を見ていると、かなしくて、なさけなくて、それからしばらく悩んで、純正のプラグに戻したとき、ホッとすると同時に、N804はこのプラグで音作りがなされているのだという事実を知り、その悲しい宿命にため息をついた事情もあったのです。

 N804だけでなく、同じフェーズプラグを持ったノーチラスシリーズは全て同じ宿命なのでしょう。しかし、そういう宿命を持った悲しさを含めて、私はノーチラスの音が好きなのです。それで、次なるステップアップにN802を導入しました。

 サランネット取付け用の、先端に穴の開いた純正プラグは、同梱の、先の尖った別の純正プラグに付け変えて、その時に、もうこのまま変えずにおこう、と思いました。純正プラグは良くも悪くも調整がとれていて最良であり、これでなくては駄目なようです。

 しかし、プラスチック製ゆえにかどうか、ソースによっては、軽い、派手な、そっけないような、粘り気のない、どこか乾いたサウンドを発してしまうのは致し方ありません。この点に関してはほとんど諦めの境地でしたし、また、RK-BWが効果覿面でそうした欠点を補って充分に心地がよく、トータルで大いに満足していましたから、もはやフェーズプラグを良くしてやろうという野望は無きに等しい状態でありました。


 けれども、そこへ貝崎さんが、新たにフェーズプラグの開発に乗り出された・・・。

 私は、フェーズプラグに重金属を用いるのは駄目だと思っていましたから、貝崎さん十八番のエコブラスや真鍮などでは上手く行かないだろうと思って、腕組みしておりました。また、シグニチュア800などに、アルミ製の改良フェーズプラグが純正装備されたということを知っても、アルミは軽いかもしれませんが、音のほうはそれほど向上しているようには思えず、今一つ魅力を感じませんでした。

 しかし、あの野獣のごとき貝崎さんです。何か恐ろしいことを考えているに違いない。何が起こるやら分からない。動き出すと、ただのカンでもテキトウでもなく、出来上がってくると必ずそこには何らかの理論が存在して納得のサウンドを引き出すのだから敵いません。動向が気になっていました。

 「エボニーです」という発表には驚きました。拍子抜けしました。私の中ではエコブラスの貝崎さんだったのだから。イメージの伽藍が壊れてしまいました。しかし、木製とは、なんという柔軟な発想と方向転換!、たちどころに納得しました。木は軽いし、エボニーというのは楽器に使う素材だそうだから、楽器のように、きっと良質な響きを出すに違いない。

 毎日N802に接している私はN802をただのSPだと思い、貝崎さんは楽器に見立てている。ここが、音を聴く者と音楽を聴いている者との違いなのでしょうか。その後もHPでフェーズプラグ関連記事をチェックして、苦心談や、ますます自信を深めていく文章に、私のイメージが自然と膨らんできて、欲望が熱く湧いてきて、送ってくださるようお願いしたのです。


 ついに、11月28日にエボニー製プラグがやって来ました。

 パッケージから取り出すと、木目のある、シックな、ほのかな香りをもつエボニーと、見覚えの明るく光るエコブラスがまず目につきました。純正プラグを外して、重さや形状を比較したり、ネジきりの精度を比較したりしました。いつ見てもエコブラスは美しいものです。ネジきりを見ると、ギザギザで粗い純正プラグに対し、エボニー製プラグのほうはすがすがしい流線を描いております。

 よく見ると、エボニー製プラグは左右の指定があります。左右の指定まであるのか!これも驚きでした。私は少し難聴ぎみで、両耳で聞こえ方が違うので、よく分からないのですが、そこまで方向管理されている、テキトウじゃないというその事実が嬉しかったし、貝崎さんの商品に寄せる絶対的自信や熱い思いに、私の心も高揚するのを覚えました。


 本格的に試聴を始めたのは先月29日からです。その日は、夕方から自室にこもり、エボニー製プラグを装着して、たくさんのCDをかけ、気が付いたら翌朝5時くらいになっていました。初めは少し良くなったなと思う程度だったのですが、すぐに馴染んできて、前日までの音を「精緻な音」と言ったのが馬鹿らしくなったくらい、段違いに精緻なサウンドを発するまでになってきたのです。

 心地良さも段違いです。また、エネルギーの強さも以前の比ではありません。大音量でも鳴かないように鳴き止め対策をしていたのに、部屋のあちこちが再びビリビリガタガタ言うようになりました。これは嬉しい悲鳴です。すぐに対策を講じなくてはなりません。

 検証好きな私は、それから何度も何度も純正プラグに戻したりエボニー製プラグに変えたりして試しました。まず、ヴァイオリンの響きと減衰していく様を観察します。エボニーのほうは芯のある奥深い響きであり、一音一音が適正な純度と自己主張を持ったまます〜っと無音に溶け込むように減衰していきます。

 それに対して、純正のほうは、悪い意味で華やかで、音がやや散漫な印象です。ヴァイオリンを安物に変えたのかと思えるくらいです。また、音色の縁にシャギーでも入っているのか、減衰のしかたがギザギザっぽく感じるのです。今まで、気が付きませんでした。


 次に、打楽器のアタック音・轟音と減衰の仕方を見ます。エボニーのほうは少々のアタック音など微塵の崩れも見せず、心地よくも強烈なパワーを発します。打楽器の空気のような振動も描いてくれるようです。

 ヴォリュームをどんどん上げていっても、破綻が感じられません。純正のほうもかなり力強くて逞しいのですが、振動が空気漏れしているというか、ブレていると言うか、轟音の先端にわずかにヒビが入った感じです。また、如何にも矩形波の音の減衰でした。残響時間が少し長くも感じました。


 次に、オーケストラの響きを見ます。あれ、ここが一番強い音だったっけ。こういうことは初めての体験だったので非常に驚きました。つまり、エボニーにすると、演奏のアクセントが変わってきたのです。演奏の各シーンにおけるピークの場所が今までと少し違うのです。

 例えば、最強音は、今まで数箇所、同程度の最強音で聞こえていたのが、それぞれ強さの順番に従って聞こえるようになったということです。そうなると、指揮者の意図が細部まで明確に描写され、演奏にメリハリが立つという、嬉しい結果が齎されるわけです。

 オーケストラの響きにいささか食傷気味な私だったのですが、こうも響きの違いが露呈するとなると、これからディスクを聴き直さなくてはならなくなりました。全く、これも嬉しい悲鳴です。

 対する純正プラグは、やはり、安易で平板な感じを受けます。オーケストラが一様にシンセサイザーのように鳴り、べたっとして表情がぼやけています。所々で、制御され損なった音が耳を刺激します。


 次に、女性ヴォーカルを見ます。エボニーでは、サ行の刺激がずいぶん減りました。そして、ブレスの音が暖かさと人間らしい肉質感を備えてきました。ヴァイオリンの音色も同様でしたが、高音域の倍音がふわりと、空中に浮かぶように出てきます。

 純正に戻すと、やはり粗が見えます。サ行の刺激音が強くなり、音像が膨張したような感じです。ブレスも膨張して少し大味になり、不明瞭になりました。プラグの内部損失があまりないためか、残響が長めに感じられます。

 エボニー製プラグを手にとって、105度の面取り加工やエコブラス製ネジなどを見ると、これもまさしく貝崎さんの亀鑑となる作品だと思います。SPに取り付けて鳴らせば、出てくる音はSPの能力にふさわしい、なおかつ最大限に活きたナチュラル・サウンドになりますが、私は、貝崎さんの強烈な個性を想起させるようなサウンドではないと思っています。

 SPが本来あるべき姿になったまでです。研究に研究を重ね、改良に改良を加えた末の作品でありますので、そこには、貝崎さんの動物的勘、職業的勘、主観、好み、興奮、魂なども介在していたことでしょう。しかし、その作品から引き出された音楽には不思議に貝崎さんの「個」や「我」というものが入らず、公正で、あたかも数学の定理のようであり、万古不易の客観性を持っていると考えています。


 もはや、悲しい宿命だとは言いません。ノーチラスシリーズはフェーズプラグ次第で様々に音色が変わりますが、わがN802はエボニー製フェーズプラグのおかげで生まれ変わり、更に活き活きと躍動を始めたのです。音楽に浸ることができます。これでこそ、毎日、命をすり減らしながら聴く甲斐があるというものです。

 すばらしいフェーズプラグをありがとうございました。



----- Original Message -----
 From:Y.I
 To: info@rosenkranz-jp.com
 Sent: Thursday, December 11, 2003 12:08 PM
 Subject: RK-PPはいよいよ冴え渡り、まさに絶好調!!


 貝崎静雄 様

 こんにちは。こちらはいま雨が降っています。

 RK-PPはいよいよ冴え渡り、まさに絶好調!!

 和太鼓の響き、金管楽器の響きに思わずガッツポーズです。

 拳に力が入ります。

 よっしゃ、よっしゃ〜!と叫ぶこと頻りです。

 「RK-BWとRK-PPの連携プレーに敵うものはありません。」

 今、そう吹聴したくなるくらい満足なんですよね。

 ありがとうございます。

 それにしても、恐るべし、N802の潜在能力。

 Y.I

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