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スズメバチの尻に見えたり、高価な茶器のように見えたり |
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----- Original Message ----- From:O.S To: kaisersound@rosenkranz-jp.com Sent: Monday, December 15, 2003 12:31 AM Subject: B&Wスピーカー用フェーズプラグRK-PP試聴記 貝崎様 先日は、お電話ありがとうございました。O.Sです。 RK-PPの感想をまとめましたのでお伝えします。 B&Wスピーカー用フェーズプラグRK-PP試聴記 プロローグ 先日、待ちに待ったB&Wスピーカー用フェーズプラグRK-PPが届けられた。 早速、包装を取り手にとった。 適度な重みが指先に伝わってくる。 なめらかで、温かみのある肌ざわり。 エボニーという木の素材だという。 何でまた木製なのだろうか。素人の私には判断がつかなかった。ただ、思い当たることがないではない。先日、TVで女性のバイオリストが世界で一つしかないというガラス製のバイオリンで演奏していた。もちろん、余興なのであろうが司会者は「素晴らしい」を連発して彼女を讃えた。彼女の方も得意満面。 しかし、音はひどかった。硬く、詰まったような音。彼女の演奏が悪いわけではない。ガラスでできたバイオリンなどで演奏するからだ。やはりバイオリンは木製に限る。「スピーカーは楽器である」とするなら、スピーカーの部品の要所に木製を用いるのも頷ける。 そんなわけで、RK-PPがエボニー製であることは理にかなっていると私は思った。 ノーチラス804 このRK-PPに付け替えたら、私のノーチラス804(N804)はどんな音楽を奏でてくれるであろうか。否が応でも期待が膨らんだ。そもそも私は、エレクトロニクスやメカニカルなことがあまりわからない。音楽は好きでロック系のコンサートやN響の定期公演などへ足を運ぶことはある。そんな私を友人は「単なる音楽ファン」と決め付ける。 私はオーディオ機器の選定をこの友人に委ねることもある。しかし、意見が食い違うことの方が多い。以前、トランスポートを買う際も彼はある有名なメーカーのものを薦めた。確かに音は分厚く、怖ろしく澄んでいた。けれども私は違和感を覚えた。音が硬くコンサートホールの雰囲気とはずいぶん異なっていたからだ。 私の好みは、音が柔らかく温かみのあること、音場感が豊かなことだ。そのあたりをを念頭に機器を選んでいった結果、私のシステムはなぜかクラッセ、コードといったユーロ系のブランドになっていった。 N804もそんな私の好みに合うものであった。N804はスピーカーの後方に音場を形成する。トールボーイでありながら、コンサートホールの雰囲気を多少なりとも味わうことができたのである。そしてこのN804は、あらゆるジャンルの音楽を生真面目に鳴らす。一定のジャンルのために特化されたスピーカーには敵わないかもしれないが、何でも聴きたい私にはもってこいだったのである。 そんなN804であったがもちろん不満もあった。中、高域がきつく、妙なくせがのっていると感じることがある。ツイーターのネットをはずすと幾分おさまるような気はしたが、根本的な解決にはならない。またロックやボーカルなど音が前に出てきて欲しいソフトでも音がひいてしまうのには困った。 そんな折りノーチラスシリーズのプラグは取替えがきくことを知った。そこで早速ネットで検索するといくつかヒットした。ちっぽけな部品であるにもかかわらずたいそうな価格のものもある。本当に効き目があるのだろうかとの疑問がわいた。 ただ、一つだけ気になるものがあった。 それがこのRK-PPなのである。 今年の夏、私は友人に連れられて行ったイベントで初めて貝崎さんのレクチャーを聴いた。 氏の印象は、「誠実、実直」であった。 氏の話はきわめて興味深く、理由もわからず納得させられてしまった。 そして氏の言葉からは「本当に素敵な音楽を聴いて欲しい」との思いがかんじられ、感銘を受けた。 RK-PPの試聴 前置きが長くなってしまった。早速レポートしよう。 まず、「コラボレーション」(Fujii Kan Quintet)から。雑誌でも絶賛された極めて評価の高いソフト。もともと優れた録音がフェーズプラグの交換でどれだけ変化するかがポイント。一曲目の「Sugar」での評価。 ・ まずはB&Wの純正から。 うーん。けっこう良いではないか。 ヴァイブの音色はとてもクリアー。 N804の高域のきつさもあまり感じさせない。 優れたソフトはシステムの弱点をもある程度補ってしまうものなのだろうか。 リピートしてもう一度音のニュアンスを確認する。 ・ そしてすぐにRK-PPに換える。 何かが変わった。 けれど具体的に何が変わったのかを言うのはちょっと難しい。 しばらく聴くことにする。 なるほど、音がふっくらと柔らかくなった印象。 それでいてエネルギー感がでてきた。 純正を聴いてから再びRK-PPに換える。 やっぱりそうだ。エネルギー感が増している。 音が太く、前に出てきた様に感じた。 ヴァイブはクリアーでありながら、 豊潤で、響きが豊かになった印象をもった。 ローゼンクランツの製品は響きに特徴があると聞いたことがあるが、 それはこのRK-PPにもあてはまるようだ。 また、一つ一つの音が力強くなり、細かい音まで良く聴こえる。 楽器の音がスピーカーの周辺のそこここから聴こえるため、音が立体的になった感がある。 アレンジャー達の演奏も切れ味を増したように感じた。 クールに感じた「Sugar」がにわかに熱を帯びたように変わった。 私は嬉しくなった。 次にロックを試した。RATT の「Ratt&Roll」。 思いきりイコライジングされた曲がどう変わるか興味をもったからだ。 ・ まず純正から。うーん。 やはりハードロックはうるさい。 究極のドンシャリ。 学生時代にこれを大音量で聴いていたことが信じられない。 それでいて音が前に出てこない。 なんだか、N804の弱点ばかりが目立つ。 ・ そこで、RK-PPに換える。 イコライジングされた音が艶めかしくなったことがわかる。 無機質な音が有機的になる。 プラスチックから木へ。 素材の変化が音に反映しているのだろうか。 ヘビメタの退廃的な雰囲気がよくでている。 RK-PPが毒々しいスズメバチの尻に見えてくる。 収穫だ、RK-PPに換えるとN804でもロックが楽しめるようだ。 そこで今度は、ビートルズの「LET IT BE NAKED」を聴く。 アルバム「LET IT BE」のオリジナル音源CDだ。 プロデューサーの趣向から解き放たれた素のままのビートルズが聴ける。 ・ 純正。さすがに古い音に聴こえてしまう。 あまり楽しめない。69年の録音だから仕方ないか。 化学調味料に慣らされた私の舌は鰹だしの旨味を物足りなく感じてしまうらしい。 ・ RK-PPに換える。 温かみのある、素朴な雰囲気。 刺激の少ない、本当に素の音といった感じ。若かりしころの、生真面目そうなジョンがそこにいた。 最後に「雅楽 平安のオーケストラ」(宮内庁楽部)。 雅楽のCDはいくつか出ているが、私が聴いた中ではこれが一番。 「越天楽」を聴く。 雅楽に詳しいわけでは全くない。 だが、私はこの曲が大好きなのだ。 ・ はじめからRK-PPで聴く。 もう、音のディテールはどうでもよくなってしまった。 ただ、ただ音楽に聴き入ってしまう。 馥郁たる笙の調べ、神楽笛の典雅な響き。 箱庭的ながらN804でも和のみやびを堪能できた。 RK-PPが高価な茶器のように見えてくるから不思議だ。 エピローグ 先日、オリジナルノーチラスを聴く機会があった。とある試聴会でのことだ。私は初めて見るノーチラスにいたく感動してしまった。その黒光りする鸚鵡貝は居並ぶ巨大スピーカーをただの背景にしてしまう程の存在感があった。 私が注目したのはアヴァロンのアイドロンダイアモンドとの比較だった。どちらもある意味で音場型スピーカーと言われており、私は憧れていた。さて、結果は。個人的な感想として言わせていただく。私はダイアモンドのほうが好きだ。 広い音場、ストレスを感じさせない鳴りっぷり、それでいて一音一音が緻密。 若干のニュアンスの差はあるが、これらの点で両者は互角に思えた。 しかし、ダイアモンドにあってノーチラスにないものがあった。 熱気である。 作り手のほとばしるような情熱がノーチラスからは感じられなかった。 貝崎さんがおっしゃる「B&Wは音が冷たく、音楽性に欠ける」という意味を理解した。 そんな折り、わたしは、このRK-PPを手に入れたのだ。 これによって少なくともN804は変わりつつある。 元々のスピーカーの性質がそう簡単に変わることがないことは素人の私にもわかる。 けれどもこのRK-PPには貝崎さんの情熱が込められている。 製作にあたってのご苦労などもお聞きしている。 その情熱はダイアモンドを作り上げた二ールパテルに比肩するものかもしれないなどと考える。 そんな貝崎さんの創られたRK-PPによってN804は画竜点睛、 すなわち一つの完成をみるなどといったら少しオーバーだろうか。 とにもかくにもN804がまだまだ良くなる可能性があることがとてもうれしい。 以上がRK-PPを一週間聴いた私の偽らざる感想そうです。 貝崎さん、本当にありがとうございました。 O.S |
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