Edition15のモディファイを始めよう。
三次元的な音の展開を、
強くイメージしているのは、
ハウジングの形状から読み取れる。
木枠は精巧なNC立体加工。
とてもコストが掛かっている。
この木枠に金物枠をはめ込む構造では、
ボンド、ネジ等、何一つ使っていない。
木は季節によって痩せたり膨張する。
日本の気候を考えたら怖くて、
この方式には踏み切れるものではない。
見事に結合するその精度には驚きだ。
ヘッドバンドの支持固定方法は特に優秀。
カイザー流モディファイの考え方に、
この構造が即していたから助かった。
このバッフルパネルのプレス形状は、
捕まったら最後、脱出困難な、
全英オープンのバンカーのように、
深く掘り下げられている。
気持ちは解らないでもないが、
何事もやり過ぎは良くない。
低音、中音、高音と全域に渡って、
振動の流れがスムーズになるように、
内アール外アールを施してやると良い。
この形状だと音がこもると同時に、
音抜けの良くない原因を作ってしまう。
ユニットの性能が良いだけに、
マイナス面が増長される。
オーディオ用語で言うところの、
ピークとディップである。
断崖絶壁のような、
バッフル板のプレス形状しかり。
はたまた金属背板のパンチングパターン。
先に頭で音を作り過ぎてはいけない。
策に溺れ過ぎは禁物だ。
細かい事を挙げればキリがないが、
その進化のあり様はしっかりと認めたい。
ウルトラゾーンの殆どの機種は、
モディファイ経験を積ませて貰っている。
だからこそ言えるのだ。
一番気になる点はケーブル!
これはケーブルメーカーに丸投げなのか?!、
ハッキリ言ってヘッドホンが可哀そう。
幽霊みたいに音に骨格が見えない。
酷な言い方になるかもしれないが、
ヘッドフォンを100とすれば20のレベル。
付属のケーブルは、
「おまけで付けているだけだ!」
とでも言いたのだろうか・・・
ハイエンドヘッドホンであるが故に、
この点は猛省すべきだろう・・・
さて、ケーブルの話は次回に回すとして、
カイザー流モディファイ内容を順を追って説明して行こう。
最初に断っておきたい。
ローゼンクランツというメーカーの立場ではなく、
音を極めんとするプロの職人貝崎静雄が行う、
クリニック及びモディファイのメソッドとして捉えて欲しい。
ドライバーマグネット部のカバーには、
大小3枚のシールが貼ってある。
空気圧調整なのか・・・
振動対策なのかは判らないが、
方向性を付けたいが為のプレス形状からすれば、
この貼り方は矛盾している。
振動の流れを邪魔しでいるからだ。
大きいシールはデッドになり過ぎるから剥がす。
糊の跡を綿棒できれいに除去する。
シールの貼る場所を変える。
振動の通り道を塞いである小さいシールは、
剥がして道を解放してやるのだ。
普通ならマグネットの真ん中に、
方向付けの為にAuto Rosenを貼るのだが、
今回は両雄成り立たずと判断し止めておく。
Rosenkranzのオリジナル、
矢印シールで充分だ。
アップ写真で簡単に説明しよう。
流れを引き出すプレス形状と、
矢印シールの方向を合わせる。
バッフルパネルのネジ止めの、
最後のトルクコントロールで解決可能。
これで音楽の流れが一気にスムーズになるのだ。
振動の暴れを抑え過ぎると、
音楽のダイナミズムはデッドに向かう。
逆に内部に溜まった淀み振動を、
活発に放出してやる方が、
生命力のある音を引き出してやるには効くのだ。
「振動は命のメカニズム」
この言葉を片時も忘れない事が大事だ。
そこで出番となるのがTriple Accelである。
これほどの救世主は他に無い。
弊害が無い上にその効果は計り知れない。
ツボを見切って、ここという場所に貼る。
左右で微妙に貼る場所が違う。
これが私の超絶技巧なのだ。
全体の振動の溜まり場を見抜いて,
Triple Accelを貼ってやる。
左右でこのように違いが生じている。
何故そんな事が出来るのか??
人は不思議がるが、
出来るから出来るのであって、
知らぬ間に出来るようになった。
私はただ自然体で向き合っているだけなのだ。
だからこそ見え方が人と違うのだろう。
これは左右のドライバーのマグネットの、
方向性の違いから起こる振動の位相ずれの結果である。
それの辻褄合わせをするとこうなるのだ。
これが私がいつも言うところの、
「見えるを見ず、見えざるを見る」である。
最後の仕事がネジの加速度組み立てだ。
8本のネジの適材配置を決める。
イヤーパッドとパネルには、
強いマグネットが埋め込まれている。
ネジがユニットの振動板に吸い寄せられて、
傷めない為にマスキングテープを貼っておく。
ネジのトルクコントロールを行って完成である。