カイザーモディファイした噂のカイヤさんのEdition9。
『アキバのe-イヤホンで聴きましたよ!』
『あの音を超えるケーブルを作って欲しいです!』
『予算はいといません!』
S.Gさんからそんな依頼を頂戴した。
カイヤさんの素線はMusic SpiritのBasic1/\3,600/mを使用。その上となると価格も一気に跳ね上がり\15,000/mにもなる。ケーブル原価だけで6万円。設計製作費に10万円の見積もりでお引き受けしたのだが、プレッシャーの為アイディが閃くまでに二か月も要してしまった。
その間ヘッドホン本体も預かったものだから、彼はずっと音楽を聴けない状態でいた。焦れば焦るほどアイディアは浮かんでくれない。申し訳ないと思えども、こればかりはどうしようもない。
頭を抱えているばかりだから、アイディアは更に遠のいて行くのである。気分転換が必要だと分かっているけど時はいたずらに過ぎて行く。一番辛い時である。一品物のハイレベル品を引き受けるのは目に見えない形の苦労や困難が付いて回る。
では、何故引き受けるのか?
期待に応えたい気持ちもあるし・・・
無から生み出す喜びもある。
ロマンといえば格好つけ過ぎだし・・・
創作意欲をかき立てられるのが一番の理由かもしれない・・・
そんな葛藤の裏で、閃きを得たい為に志賀高原まで二度も足を運び、
気分転換に、私のコレクション車で緑の高原の中を走ってみた。
BMW M3
Alfa GTV 2.0TS ’96
Alfa GTV 2.0TS ’04
SAAB 9-3 Cabrio
Alfa Spider
Jaguar XJS
加速やトルク感、シフトチェンジのスムーズさ、乗り味のフィーリング等々、それぞれの車の鼓動を私の体と脳に蝕知させる。その結果、2台のGTVの違いから確たるイメージが見えた。
双子なのに全く性格が違う!
その違いは逞しさとしなやかさ!
男と女の走りの違いとして私の脳が受け止めた。
その時、音のテーマは男と女と決まった。
閃いたらこっちのもの!
体内のエンジンに火が入ったのが分かった。
『素晴らしい音の為なら金は惜しみません!』
『どしどし、提案下さい!』
こんな言葉に腕が試されるのである。
既にお届けしてある2本のケーブルと内容が似てしまってはいけない・・・。
安い高いではなく、それぞれが必要とされるにはどうすれば良いのか?!
今までそんな事を考えてばかりだったが、全て吹っ切れた。
圧倒的な能力を誇示出来るものにするしかないと決めた!
幸いにもD.U.C.Cという技術を貰った、
Reference1がそれを担ってくれる。
戦力面においては申し分なし。
振動のメリハリにて緩急と抑揚を付与する技術はお手の物だが、音の品位とか芸術性ということになると手間と丁寧さが欠かせない。 ここまで来たら予算を超えても、それらを達成するのが施主さんの希望に応える事だろうと考え、4万円の追加をお願いし、合計20万円で最高峰のヘッドホンケーブルの設計製作に挑む事となった。
どこにどのような振動対策をするのか?!
慎重にイメージを図る。
候補の場所は幾つかある。
その場所の違いによってどんな表現になるか?!
頭の中で鳴る音楽をイメージしていると、
脳が熱くなるのを覚える。
勢いで一気に完成させた!
いつものように2トラオープンのテープでテストだ!
「オッホッホ!!」
いきなり、凄い音である!
この情報量は初めてだ!
さすがD.U.C.C!
その日はケーブルの音に聴き惚れてしまい、
気が付いたら窓の外が明るくなっていた。
施主さんの喜ぶ顔が朝焼けに重なって見える・・・
クリエイターが充実感を憶える至福の時だ!
冒険家の気持ちが分かる気がする・・・