ATH-ESW950
解体してみればよく分かるが、
シンプルでとても理に適った構造だ。
良い音が鳴るようになっている。
ハウジングパネルは無垢木の削り加工。
これまた、絶妙の寸法比と深さで構成されている。
ここら辺りに音の良い秘密がある。
左右と下部にパーツ取り付けの為のザグリがあるが、
振動の流れに大きな影響をもたらすものだ。
機能の為にはこれで良いのだが、
円形パネル全体の振動の流れから見ると、
上方部分にもその道筋が欲しい。
その理由は空間の高さ表現が出難いからだ。
それを補う為に鉛筆でTriple Accelを描いた。
僅かではあるが芯の先で溝加工を施した事になる。
又、芯の炭素は元は木だから馴染みが良い。
毛細血管を張り巡らすイメージだ。
年輪の粗密波のナチュラルな、
インシュレーター効果と相まって、
静寂な空間から音楽の陰影が、
見え隠れするように滲み出て来る。
ヘッドバンド部とユニットを取り付ける為の、
黒い輪の樹脂製パーツを、
ハウジングパネルに木ネジで止めている。
先ずはこの4本のネジの適材配置を見極め、
適切なトルクコントロールで締める。
この組み立てが音の調律の元となる為、
一発で決めなければならない。
最も集中する瞬間である。
最後の調整はユニットを取り付け、
イヤーパッドを付けては聴き、
外しては締め直して聴くを繰り返す。
多い時だと10回ほどの確認が要る。
惜しい・・・
もう一歩・・・
といった具合に集中力を高めて行く。
ピンポイントに入った時はエネルギーが、
最大となり一気に場の空気が変わるのだ。、
オーディオアスリートの感覚が、
研ぎ澄まされる瞬間である。