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その18 「世界一の音を作り出すには、絶対に妥協出来ない」


 市販のナットを買ってきて、とりあえず組んでみたのですが、実際に組んでみれば板の厚みに対して違和感があるのがよく分かります。特に上の扇状の板が21ミリに対してナットの厚みがそれ以上の25ミリくらいあります。これでは次第に上に行くにしたがって中域からデリケートな高域を自然放出するのに妨げとなります。あまりにもナットが重たく、強すぎて、消え際のデリカシーが金縛り状態になる事は見えています。また、音のみならず、上が重いと重心が高くなってしまうので安定性に於いても不利になります。


 下の部分であるベースになる42ミリ厚に対しては重心が低くなる事にも貢献していますし、ベースの全体から感じるエネルギーとナットとの力関係もそんなに不自然ではありません。初回時のナットの選択理由は、厚みの関係と上に化粧用の袋ナットを使おうとして、30ミリと33ミリの径の違う物の採用となったのですが、あくまで叩き台ですから、色々と問題点が見えてくれた方が、逆に何をどのようにしたら良いのかが見えて、却って好都合な面もあるのです。

 波動コントロールされたナット

 ナットに関しては図面から理想の厚みを割り出した後、市販のナットをさらえる事にします。21ミリの板に対してはその半分の厚みである1kaiserの10,5ミリに、また42ミリ厚のベースには2Kaiserの21ミリ厚に削ります。そして、形状が上下対象になるように元に合わせた面取りの加工もします。これで、金属の響きの方向を調べた後も、天地逆さまにしても使えますので申し分ないわけです。


 シャフト棒のネジ切りのサイズの違いも少し気になります。これをシンプルに33ミリのみでストンとストレートに変更です。エンドが直径で3ミリ太くなったのでFRIENDの35ミリ径とサイズ的に遜色なく、従ってアール加工も3から同じ6アールにしても違和感がなくなりました。そして、シャフトのエンドである下の部分も上に出る部分も、殆どFRIENDと同じ加工形状にする事が出来るようになったのです。

 「音のカラクリ」を完璧に実践

 以上のような改良点によって、「音のカラクリ」で解き明かした事は完璧に実践した事になります。これだけ基本に忠実で、理想を追い求めた物作りは、世界でも全く例が無いでしょう。「世界で一番良い音を作り出す為に頑張ります」と宣言しているのですから、決して手を抜く事は私には出来ないのです。

 これで、ナットとシャフトの改良は万全です。あとは、下のベースの転倒防止の為に設けた後ろのステーの部分の一体化の図面を書く事です。安定と音の良さの両面から仕上げていきますと、「ベル」のような形でもあり、「振り子」みたいでもあり、「クランク」のようでもあります。それが何れにも振れて近づく事無く、全く3者の最大公約数みたいなポジショニングを取っているようです。

 そして先ず、後ろに伸ばすステーは3次倍音に当たる長さに決定。それは、脊髄に当たるシャフトからフロントの先端までの1/3の長さにする事です。その次に決めた事は、後ろのアール部分を同じくフロントの大きなアールの1/3にしました。

 残りは扇の先端の大きなアールと、広がる方向の直線との交点の所の35アールに合わせて、新しく出来たステー部分の付け根に当たるくぼんだカーブの所も、同じく逆アールの35に揃えて、完璧な美しいデザインに仕上がりました。

 残る大切なポイントとすれば、インシュレーターのFRIENDのポジショニングです。全てはダイレクトアースセッティングになっていて、ミラクルサウンドのポールの芯の部分で受けるようになっています。各ポールの芯から先端までの距離は均等に出来ていて、今回伸ばした後ろのステー部分の位置とて全く同じポイントになっております。


 しかし、その中でも一つだけ違う事は、転倒防止の為のインシュレーターですから、通常は接地しないように、その部分だけ0,2〜0,5ミリの考査で座ぐるようにしております。したがって、振動の流れの大半は、必ず脊髄に当たるシャフトに流れ落ちるようになっております。

 そうした後、音楽の振動エネルギーが扇状に広がりながら、ダイレクトに前方の3個のインシュレーターに向かって流れます。それに支えられるようにして、しっかりとした足場を得て、こけしのようなミラクルサウンドが、万華鏡のような美しい残響をほとんど萎える事無く、無限の時空間を醸し出すのです。


 もちろんシャフトも垂直、水平方向とも響きの方向管理をしてありますので、それが指揮者の働きとなって力強くも流麗なサウンドが生み出されるのです。 これで、振動のモーメントの時間軸が揃ったものとして、最終デザインが完了した事になります。年内ぎりぎりには全てが揃う予定ですから、楽しみに試聴にいらしてください。


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