トップ考え方今のオーディオ業界に対して思う事

今のオーディオ業界に対して思う事



オーディオ業界をあえて辛口で総括

 新たに2000年という大きな節目を迎えたことによって、自分自身への反省も踏まえた上で、オーディオ業界そのものを敢えて辛口で総括してみたいと思います。本来趣味であるはずのオーディオがいつの頃からか、採算性、生産性、合理性の強い潮流に流され、感性というものを磨く事が時代のスピードにおいて行かれるようになりました。あれよ、あれよと、コンピューター全盛へと進んで行き、設計迄コンピューターに頼るようになり、いつの日か職人は会社にとって必要とされなくなってしまいました。極端にいうと、メーカーのロゴをはずすと全くどこのメーカーの物か区別すらつかないような物があります。


だれもが浮かれた80年代

 時は80年代日本が一人勝ちのようなムードが社会にはあり、日本の製品が世界で最高のように思わされてきました。その頃の貿易摩擦が大きな問題となり、時の総理大臣自ら外国製品を買いましょうとパフォーマンスを見せた事がありました。それがきっかけとなったのか、ありとあらゆる世界中のブランドが日本に入って来て、特にスピーカーは実力の違いをまざまざと見せつけられるはめになったのです。


裸で世界と勝負すると、意外と弱かった日本丸

 国産の製品はどれも感情表現に乏しく、感性も個性もなにもありません。横並びの物真似ばかりに消費者は愛想をつかし、海外製品の自己主張と個性溢れる魅力にひかれ、アッという間に多くのシェア―を奪われてしまいました。その結果、名門ブランドが次々と姿を消して行き、今やメーカーは完全に羅針盤を失った難破船のようであります。

 今年の新製品は以前の物よりこんなに良くなったと、どの会社も口を揃えて毎年のように言っています。しかし、聴き比べてみると40年前のアンプやスピーカーの方がえてして音が良い事が多いのです。そして、そんな商品であっても、ベタ誉めの評論家がいたりするものだから、悪循環で、メーカーも、雑誌社も、販売店も信用が無くなって行くのです。

 販売店は、好みとか、相性とか、部屋のせいにして、自分の腕のなさ、勉強不足を認めようとする人が少なくありません。言い訳し放題、いい時は自分の手柄、悪い時は商品のせい、メーカーのせい、責任のなすりあい。行く所まで行かなければ直らない無責任主義、いったいこの国はどうなっているんでしょう。


消費者軽視の風潮は、ボディーブローで効いてくる

 一方、本の中身で勝負出来ないでいる雑誌社の目は広告主の方に向いてしまい、記事の内容もそれらの商品をメインに取り上げて誉め、広告収益をメインに頼る情けなさであります。厳しい言い方をすると、半ば妾化していると言ってもいいぐらいで、一番大切な読者の事を忘れてしまっているのではないでしょうか。いかにインターネットの時代になろうとも、活字文化本来の生き残る道は、遅いけど確実、正確、真面目、誠実といったもののはずです。


脇役にこだわるローゼンクランツ

 今日のような低成長の時代には、しっかりと足元を見つめ直す事が大切ではないでしょうか?。そうした状態の今だからこそ、あえて私はこの度のオーディオエキスポ‘99では、CDの基本フォーマットである16ビットコンバーターを使って、オーディオシステムの基本をキチンと真正面から真剣に取り組んだ音を提案することに努めたのです。その内容とは、全ての物の響きの方向を揃えてやるという考え方で、ケーブル、インシュレーター、アンプ、ラック、スピーカーそしてネットワークに至る迄、完全にセットアップしたものです。

 会場の人達はその音に魅入られ、見事なサウンドに呆然と聴き入っていました。そして、私の持論として展開している「電気の時間軸と振動の時間軸の一致」 こそがオーディオの理想だという事を力説いたしました。


ピンポイントのセッティング

 その中で30年以上も苦労して来た音のプロの私でさえも、1mm単位のスウィートスポットを見つけ出す事は奇跡に近い程難しいものです。私には今までにそのような体験は何度もありましたので、体がその音を憶えています。去年も、一昨年も、その私がピンポイントのセッティングをしていると、廻りの皆さんはビックリするやらあきれたりしていました。


新製品頼みには限界がある

 「どの製品が音が良いか」という切り口でしか情報が流れて来ないようであれば、買い換えを繰り返すだけのお金と時間の浪費でしかありません。「どうしたら音が良くなるのか?」、「なぜこういう変な音になるのか?」、それを確固たる説明も出来ないまま問題を先送りし、次々と次世代のCDやDVDが誕生したところで一体どうなるのでしょう。現状のシステムがうまく鳴っていないのに、100kHz迄再生出来るプレーヤーを持ってくれば、長所以上に短所が余計に目立ち、今以上に問題が大きくになる事は目に見えています。


画期的なレーザーセッター

 その難しさはA&Vビレッジの熱研さんのブースで、レーザー光線を使ったスピーカーのセッティングのデモで明らかになりました。会場ではダイヤトーンの610でデモをしましたが、ほんの10分もあれば誰にでも見事な音が手に入るのです。その製品は、大阪の逸品館の清原社長の提案により熱研さんが開発に当たったもので、同じ様な仕組みの物は一昨年のロサンゼルスのオーディオショウで見て私も買って帰ろうかと思いましたが、何せ20万円前後もしましたのでその場では買えませんでした。それがなんとこの度、約1万数千円で発売されるというのです。こんな喜びと驚きは私にとって久しぶりの事です。

 私は早速、清原社長に私にも売らせて下さいと申し出ますと、彼は快く「O.Kですよ」と言ってくれました。これさえあれば本当にお客様に喜んで貰えると思いました。会場に居られた方、全員おそらく発売と同時に購入されるのではないでしょうか。スピーカーの角度と距離が完全に正しくセットされれば、極論ですがどんなスピーカーでも「あ〜音楽って本当にいいなぁ〜」と感じることが出来ます。

 それさえ手に入れば、どなたも悩む事はありません。楽しさが楽しさを呼び、オーディオの醍醐味を知り、お金で買えない価値が得られます。このボタンの掛け違えのまま、位相ずれの状態で「何かおかしい?どこかが違う?」と身体がシグナルを出していた訳です。そんな状態の中で、いくらケーブルを換え、アンプやCDプレーヤーを買い換えても、結果満足が得られなかったのもうなずけますね。これからは正しい判断が出来るようになりますよ。何は無くてもこの“レーザーセッター”だけは是非揃えて下さい。強くお薦めします。


第2のオーディオ創世記

 そして、最後になりましたが、新しい細胞分裂により、全国で強い志を持った新しいプライベートブランドが沢山生まれようとしています。これから第2のオーディオ創世記が始まろうとしています。私自身これからもより一層本音で、裸で皆様ともぶつかって行きたいと思います。2000年は明らかに個の時代の幕開けだと思います。


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