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音のプロが組み上げる芸術的領域のPCトランスポート

音のプロが組み上げる芸術的領域のPCトランスポート

一度に3台も同時に組むなんて事は再びあるとは思えませんが、売り物ともなれば検証すべき事が随所にあり、それはそれは大変です。しかも今回は発注者であり、その使用目的に合わせた音を作ろうとしていますので、顧客の好みを隅々まで掴んでいなければ出来ない仕事であります。

その為には数え切れないほどのパーツを買い集めてアッセンブルする事になるのですが、それらの音の違いや癖を見抜かずしていい物を作る事は出来ません。そこを手抜きすると、今まで築いてきた音の信用をいっぺんに無くしてしまいます。信用を築くには何年も何十年も掛かりますが、無くすのはあっという間です。それ位信用とは重いものであり怖いものです。

CPUの心臓部に取り付けるファンの構造によっても音がごろごろ変わります。ネジのトルクコントロールが重要なのは最早言うまでもありませんが、ここはカイザーサウンドのお家芸である、「加速度組み立て」が音のS/Nや抑揚表現にもろ効きます。本体の底にはネジ締めも出来るインシュレーター(Captain)を装着しました。下の写真は組み上がって側板を取り付ける前の物です。


デジタルの秀逸技術とアナログの芸術性の融合

パソコンマニアからすると、パーツの価格を足しただけで出来そうに見えるかもしれませんが、試聴と検証の繰り返しには想像以上に膨大な時間と人的コストが掛かります。だからホビーとして組まれた個人のPCとは、オーディオ的完成度であり、音楽芸術表現面に於いて「月とすっぽん」程の差が生じるのです。

何故ならば、イメージする音のテーマと次元が違い過ぎるからです。目指したのはマスターテープのアナログサウンドとデジタルテクノロジーの融合です。それを実現する為に、20台程のオープンデッキコレクションと共に、切磋琢磨の耳鍛錬に明け暮れています。

もっと率直な表現をしますと、カイザーサウンドが組み上げるPCトランスポートの狙いは、何百万もするCDやSACDで組まれたデジタルオーディオシステムを軽々と凌駕する性能と音楽的魅力にあります。

その為には僅かな妥協も許されません。特に振動対策には予算度外視で挑みます。「インシュレーターの王様」と呼ばれるプライドがそうさせてしまうのです。

今件を機に新たに開発したPCトランスポート専用のサウンドステーション(オーディオボード)がその端的な例であります。長年の実績を誇るハードメイプルとスプルースの黄金のコンビネーションである事は言うに及びませんが、注目して頂きたいのはその独創的な政振構造です。

不協和音を発生させる事無く振動の逃げを速くする為に、倍音構造を用いた細長い台形状の足を前後に向けて組みました。また、後ろ側の足は振動のサイクル運動化を狙って∞型にしてあります。

有り難い事に、このPCトランスポートを組み上げて行く作業の中で、デジタルの可能性の高さを嫌というほど知らされました。今後の音作りの上で思いがけない「音のカラクリの解明」に繋がりました。

巷ではCDの音をデジタル臭いと言って敬遠する向きがありますが、デジタルの鳴らし方のノウハウが上がって来るに従って、聴くに堪えないと思っていたCD盤も同じディスクとは思えぬ程素晴らしさが見えて来るのです。

今回のPCトランスポート開発のお陰で、デジタルと音楽性の関係を付きとめる事に成功し、以下の格言を発表する心境になりました。

悪しき音の原因デジタルにあるでなく

良き音ならざるは己の技量貧弱故なり

May 2011
貝崎静雄

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