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「あんた!、ちょっと頭がおかしいんじゃない〜ん・・・?」 


 名古屋まで行って手に入れたXM-Xは、明らかに以前の持ち主が愛情をかけていなかったことを物語るところが随所にうかがわれます。それでも、1,300キロ走ったことで、この車が仮に大事に扱われていたらどうだったかという時の魅力を想像するには充分でした。

 そう考えると、中途半端が嫌いな私は大事にされたXMが次にどんな印象をもたらしてくれるのか、とても興味が湧いてくるようになりました。それから、そうであろうXM探しが始まったわけです。同じ’94年式の走行距離105,000キロのブレークが候補に上がりました。

XMブレークのメーター周り

 その持ち主のSさんに今の私の心境をお話し、都合がつき次第現車を確認に金沢まで伺いたいとお伝えいたしました。新幹線で新大阪まで行き、後は琵琶湖の西岸沿いを走る湖西線でゆっくり揺られながら、のんびりした旅気分で目的地の金沢には夕方の6時に着きました。

 金沢駅西口を下りたすぐのところにXMブレークが目に入ってきました。しかし、その車のそばにいる人はどう見ても34〜35歳の若さ、丁度ペルージャのオーナー風なイメージではあるが、実際にはもう少し男前。

 メールのやりとりで感じていたのは、肩書きやお仕事の内容からしててっきり60歳前後の方と思い込んでいました。まして、車を4台も持っていると聞かされていましたから、まさか30代の方とは思ってもみません。「Sさんですか?」とお尋ねすると、「はい、貝崎さんですね!」と返ってきたから間違いはありませんでした。

 色々お尋ねすると、ワンオーナーでオイル類もきちんとディーラーで交換し、まめに定期点検も受けているというものです。78,000キロ時点でオートマオイルを新品に交換した直後に、ガッ、ガッ、ガッ、ガーという異音とともにトラブルに見舞われ、破損したそうです。

 ATを新品に載せ替えれば60〜70万円は下らないそうです。いろいろと調べていく内に、XMのATは非常にデリケートで壊れやすいと言うことが判明。オイル交換するなら定期的に2年に1回とか、30,000キロ毎とかでするべきで、長くそのままにして置いた物をいきなり交換すると大体壊れることの方が多いそうです。

独特の乗り心地のシート

 歯車との間に金属粉や汚れが溜まって丁度良いように癖がついているところに、まったく新しいオイルに交換するとそれらの物が洗い流され、歯車間に大きな隙間が生じその衝撃によって破損してしまうというのです。

 そうした過去の推移を聞かせていただきながら運転を代わってもらい、市内をほんの3〜4キロ走ったでしょうか、いつの間にか私は、「これ貰います!」と言っていました。あまりにも唐突だったものですから、Sさんはビックリしたようで、「エンジンルームも、何も見なくていいんですか?・・・」。

 「ハイ、大丈夫です」。「乗って、走って、これだけの話をお伺いしての事ですから充分でしょう」。「それでも足らないようであれば、それ以上の情報を得たところで決断は出来ないでしょう」。「私は長年セールスをしてきておりますので、逢ってお話すればどういった人かすぐに直感的に判るんです」。

 ただ、一つお願いがあるのです、それは最初の話に戻りますが2台しか停めることが出来ない車庫に3台になってしまいますので、9月の中頃まで車は保管しておいてほしいのです。もちろん、お金の方はすぐに決済致しますから、ということで目出たく商談成立であります。

 「あんた!、ちょっと頭がおかしいんじゃない〜ん・・・?」という妻の声が耳元でハッキリと聞こえました。


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