525i M Sportは66歳の私にとっては足回りが硬い。長距離になると左右の肩甲骨の間あたりに何とも言えない筋肉痛的ストレスが溜まる。そうしたしこりも普通は二日で取れるのだが、今回は三日半も掛かった。
M Sportが私の手元に届いて三日と経たない時に、『'95式の素晴らしいコンディションの525iが入った』と、アンカーガレージの宮崎さんから聞かされた。BMWにはラグジュアリーシリーズという乗り味の柔らかいタイプも有るらしい。
『E34は数々扱ったけど、これだけの珠に出会ったのは初めてです!』。
『融雪剤に晒すのを嫌い、冬場はバッテリーを外して一切乗らない!』
『ワンオーナーの室内保管車だから20年選手でも新品同様!』
『走りがこれまた素晴らしいんです!』
殺し文句が次から次へと耳に飛び込んでくる
そんなエピソードを持った車だと聞けば悪かろうはずはない・・・
「よし! 分かった!」
「車を見に行くついでに、富山の旨い魚を一緒に食いに行こう!」
買ったばかりのM Sportで富山まで初の長距離ドライブに出かけた。
前夜、彼がGooに掲載した写真を見た瞬間に私の気持ちは決まっていた!
全てを投げ打ってでも手に入れてやろう!
写真からここまでオーラを感じたのは初めてである!
現車はもっと素晴らしかった!
あとは口説き落とすだけである!
てな具合で、お互い丁々発止のやりとりの末、私の急所攻撃が炸裂。
「経理のお母ちゃんに内緒でポケットに○○万入れたるから?!」
「領収証は要らんよ! 俺のへそくりで払うから!」
「あとは、年式も新しいし、M Sportとすり替えしたと言えば話は解決! 解決!」
『えぇぇ〜〜〜〜、それちょっとマズイ! マズイですよ!』
『もう負けましたわぁ〜! それじゃ、車を置いて電車で帰って下さい!』
「構わんよ! よし決まった!」
『マジっすか!?』
『何か、得したんか損したんか、よ〜分からんわぁ〜』
『貝崎さんは、うちのお宝を二台も持って行ったんですよ〜』
「感謝! 感謝!」
「女も車も、売れる時が花です!」
M Sportが私の手元にあったのは僅か一週間だった。
年寄りの冷水とはこの事か・・・
ツーピース構造のホイールの加速度組み立てをするために買ったのに、目的を遂げられずじまいに終わった。加速度組み立ての研究開発費も高くつくもんである。
感動と直結するエネルギーの正体をこの手で掴んでみせる!!
これも世界一の音を求めんが為なのだ・・・
その夜は富山ならではのとびっきりの海の幸を堪能した。
特に黒むつの塩焼きは絶品であった!
来島海峡の魚とがっぷり四つの旨さであった。
旨いものを取り入れ楽しく仕事をする!
こんな幸せな事はない!
翌日は親切にもホテルまで迎えに来てくれた。
駅まで送ってくれて、切符まで買ってくれた。
強面だが宮崎氏の優しい一面を見ることが出来た。
4月の10日というのに越後湯沢は一面雪景色。
ローカル線でのんびり走るのも乙なものだ。
日本という国は本当に自然が豊かである。