2011.9.22 07:33 MSN
産経新聞社は21日までに、日米安全保障条約の再改定案をまとめた。
これは昨年6月、安保問題専門家による特別研究チーム(主査・佐瀬昌盛防衛大学校名誉教授)を立ち上げ、1年3カ月にわたり作業を重ねた結果である。
再改定案は現行条約と同じく全文10条からなる。日米同盟をめぐっては、「米国は日本を守るが、日本は基地提供だけで事実上米国を守る義務を負わない」という現行条約の内容から、世界に例のない「非対称の双務性」としてさまざまな摩擦を招いてきた。
再改定案は、日本の自主的な防衛努力の強化を前提に、これを全面的に解消して日米が真に対等な同盟関係を確立できるようにすることをめざしている。
具体的には、同盟の対象地域を現行の「極東」から「アジア太平洋地域」に改め、アジア太平洋において日本が米国を守るという意思と行動を条約上に初めて明示している。
これまでの日米共同対処の対象は日本の施政下の領域に限られていた。これを「いずれか一方に対する武力攻撃」と改め、日本の施政下に限らずに、日米いずれへの脅威や攻撃に対しても両国が対等な立場で臨めるようにした。
あわせて国連憲章に明記されながら憲法解釈で「行使できない」とされる「集団的自衛権の固有の権利」を行使すると明記し、共通の危険に日米が共同で行動すると宣言している。
米国の相対的な力の低下と中国の急速な軍事的膨張により、21世紀の日米同盟はアジア太平洋でますます厳しい戦略環境に直面しつつある。これに伴い、日本が一層踏み込んだ責務と役割を担うことを求められているためである。
一方、日本だけが米軍に基地・施設を提供するよう定めている現行6条は、日米ともに相手国の施設・区域を使用できるよう改め、必要なら日本の自衛隊が米国内の施設などを使用できる原則を明記した。
冷戦後の国際安全保障の見地から、他の同盟・機構や友好国とのグローバルな連携協力も盛り込んだ。
現行条約は1960年の旧条約改定の際、日米共有の民主主義、自由、法の支配を掲げ、「価値で結ばれた同盟」となった。再改定案はこうした価値に基づく平和と繁栄を望むアジア太平洋諸国の機運を踏まえ、日米と地域諸国の「自由と繁栄の諸条件を助長する」ことを目標に加えた。
特別研究チームには佐瀬氏のほかに、谷内正太郎元外務事務次官、坂元一哉大阪大学教授が参加した。
中国の軍事大国化という現代のアジア情勢に即応する形での、日米両国民が納得行く新しい日米安保条約を改めて見直す必要があると思う。経済的貢献という面だけで日本の安全を手に入れるという考えでは、日米双方にギクシャクした関係が今以上に生じるであろう。
それは日本が置かれている地政学的関係から避け難い問題として存在している。日本は開国を迫られた江戸末期と似たような状況にある訳だから、今国策を誤ると国家存亡の危機に陥る事だけは間違いない。