2012.4.20 20:27 MSN[中国]
【シンガポール=青木伸行】中国と南シナ海で領有権を争うベトナムが、歴史的につながりが深いロシアを"盾"に中国に対抗している。政府はロシア国営ガス会社と、南シナ海の2鉱区を共同開発する。潜水艦の乗組員を訓練のためにロシアに送り込み、軍事技術協力も進めている。中国は共同開発に反発しており、南シナ海へのロシアの"進出"が、微妙な情勢変化をもたらしそうだ。
共同開発は4月初め、ベトナム国営石油会社ペトロベトナムと、ロシア国営ガス会社ガスプロムの間で合意された。2鉱区は南シナ海の大陸棚にあり、総埋蔵量は天然ガス556億立方メートル、原油2510万トンとみられている。
ベトナムはすでに、インド国営石油天然ガス公社とカムラン湾沖の鉱区の共同開発を進めている。これと同様に、ロシアとの新たな共同開発は、逼迫(ひっぱく)する電力事情に対応するのみならず、南シナ海の領有権を既成事実化して中国を強く牽制(けんせい)する動きである。
現に、共同開発の中止を求める中国に対し、ベトナム外務省報道官は「ロシアを含む諸外国との天然ガス・原油の共同開発は、ベトナム領内でのものであり、国際法にも合致している」と正当化した。
ベトナムとロシアとの協力は、装備調達や技術協力など軍事面でも著しい。海洋での覇権を拡大する中国に対処するためキロ級潜水艦636MVを6隻、ロシアから購入する計画のベトナム政府は今月17日、国営メディアを通じ、多数の潜水艦乗組員をロシアに派遣、最新技術の習得と訓練に充てると明らかにした。
こうした事実をベトナム政府が公表することは極めて異例で、それ自体に中国を牽制する狙いがあるものとみられる。
また、沖合に南沙(英語名スプラトリー)諸島を望む中部ニャチャンでは、ベトナムとロシアの国防当局者の協議が17〜20日まで開かれ、軍事技術協力などを推進することで合意した。
中国に対抗し、安全保障分野で「全方位政策」を強化しているベトナムは、23日から中部ダナンで米海軍との合同軍事演習を実施、米第7艦隊の旗艦であるUSSブルー・リッジ(揚陸指揮艦)も参加する。中露も22〜27日、米国などをにらみ、黄海で合同軍事演習を実施する予定で、それぞれの思惑を秘めた"合従連衡"が複雑さを増している。
南シナ海、東シナ海に於ける中国の覇権主義もろ出しに対して、当事国であるベトナム、フィリピン、日本等がその対応をハッキリとさせようとしている。日本では尖閣諸島を東京都が買い上げる話が進んでおり、また、驚いたのはベトナムがロシアの協力を得ながら西沙諸島の権益を守る行動に出ている点である。
大国アメリカ、ロシア、インドまでもが本気になって、中国の南シナ海、東シナ海への横暴を許すまいとの態度を表明し始めた事によって、下手をすると中国は四面楚歌になりかねない状況になって来た。今、東シナ海、南シナ海から目が離せないのだ。旨くパワーバランスが取れる事を祈りたいものである。