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酒造りに命を掛ける


 65歳で酒造りを止めた杜氏の農口尚彦さんは、一旦は気持ちの整理をつけたはずなのに、第二の人生をを見つけられないで悶々としている所に、日本一の杜氏が辞めた事を聞きつけた何軒かの酒蔵から声が掛かることになります。この酒造業界も厳しく生き残りをかけた熱い戦いが繰り広げられているみたいです。その農口さんは糖尿病を持っていて最近では脱力感がひどく大変らしい、それでも強く勧められるうちに嫌とは言えない性格と、持ち前の負けん気がムクムクと芽を出し、奥さんが言うには顔色が次第に良くなり生き生きして来るのがハッキリと見て取れたそうです。

 かくして北陸の名も無い蔵に入って酒造りにもう一度命を掛ける事になる訳です。酒作りは温度との戦いらしく、ひどい時は何ヶ月も蔵に入ったきりだそうです。その酒造りの鬼と呼ばれている農口さんの厳しい仕事を通して若手に匠の技を伝承していく内容のものです。蒸しあがった米に酵母菌を振りかけるシーンの研ぎ澄まされた目は正に敵に立ち向かう格闘家のものです。ある日弟子は言われた温度の19度を保てず、わずか1度超えただけで、勢いよく泡を吹き上げ発酵が進み過ぎ大変!弟子は不眠不休で二日かけてなんとか抑える事に成功。

 一桶毎に微妙に発育が違うのですから、ある物は保温の為に回りを毛布で包んだりその神経の使いようはたいへんなものです。発育が予定の日が来ても発酵しないものは温度を上げる為にお湯を入れたポットを桶の中に入れて撹拌します、一気に上げると失敗するのでその行程を何度もかけてやらなければなりません。まるで生き物のようです。

 やがて酒になる日が訪れ、初搾り。この時ばかりは期待と不安が交錯して何年やってもドキドキするそうです。桶毎に微妙に味が違うそうですが中々の出来栄えに満足そうな顔。うまい酒を手に入れようと酒問屋が農口さんの造った酒を買い付けに来るのですが、蔵そのものに名前が通っていない事を理由に値段交渉が上手くいかず、そのうち社長が徐々に妥協しようとする弱気な姿を見て農口さんはもっと自信をもって欲しいと怒りの表情を現す。提示された値段はもくろみの4割ダウン。

 この事によって経営者との溝が出来ほとんど口を開かなくなりました。そんな状態のまま、全国から集まった酒の品評会に出席する事になりますが「酒は嘘をつかない」。買い付け業者たちは口を揃えて「これは上手い!」と多くの人垣が出来ました。一回りして戻りもう一度農口さんの酒を試しその味を再確認、どうやら一番人気のようです。


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