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物作りの内幕あれこれ

木型に変わる新しい技術 2003/10/28


 小学生の工作の時に紙を重ねて切った物を上に張り合わせて立体的な日本地図を作ったのを皆さん覚えていらっしゃるでしょう。コンピューターを使ってそれと同じように1/10ミリの厚さの紙で立体的に自由な形を作っていくのだそうです。

 木型では奥まった所の細かい細工は大変でしたが、写真のように自由自在な型が出来るのだそうです。そして出来上がったこの紙型の周りに砂を覆い、それを高温に熱すると紙が燃えて自然とその部分に砂型が出来るのです。

 そして、次のような鋳物が出来上がるのです。この写真の物はステンレス鋳物だそうです。色々な技術があるんですネェ。


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電源タップの板取りの打ち合わせ 2003/03/25


 このところ一度に沢山の新製品を開発中の為、どれも予定に少しずつの遅れが出ております。その中の一つの電源タップですが、ラックのパイプに改良の目処がつきましたので、同じ板金屋さんにやっと次に進んでもらう事が出来るようになりました。

 新しいラックのステンレス製脚に新開発のエコブラス製ネジを取り付けテストした様子。

 ローゼンクランツの拘りの一つは音楽性と密接な関係がある素材の持つ響きの方向性を重要視して設計してあるところです。その板取りの打ち合わせを今日やっとしてきました。左右、上下、裏表と慎重に説明させてもらいます。


 また、溶接の方法や箇所によっては歪が出ますので、実際に装着する部品共々、何度も時間をかけて確認を取ります。


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やっと試作までこぎつけたエコブラス製スパイク 2003/02/28


 楽しみにしていたエコブラス製のスパイクの試作が出来上がりました。

 素晴らしい出来栄えです!。

 最近の私は図面を見ただけで、

 音の良し悪しが直感的に分かるようになって来ました。

 そんな風に感覚が磨かれてきたわけですから、

 今日のように現物を見た際には、

 もっと、もっとその感じが強く感じ取れるのです。

 首を長くして待っていただけの甲斐があって、

 見ているだけでいい音楽が聞こえてきそうです。


 NCで実際に加工しているところを見せてもらいましたが、

 材料が粘硬いので少しずつしか削れず、

 10回も掛けてネジ切りをしなければならないそうです。

 短時間で作ろうとすれば刃物が早くダメになり、

 却ってセットし直すのに手間を喰われる事になり、

 どうやら今回は、『急がば廻れ』の諺どおりみたいです。


 『加工の方向はこれでよかったんですよね!?』。

 と言われて、材料が装填されているところを見せてくれたのですが、

 「何と!、それが反対だったのです」。

 まだ5本くらいしか作っていない段階だったので、まずは一安心です。

 あぁ・・・、良かった!。

 こうして、私が1本ずつ方向を確認した上で、材料には矢印を書いております。


 また、念には念を入れて105度の尖り先部分の打ち合わせをします。

 現在0.2ミリの平らな部分を残して加工しているのを、

 上手くアールでつないでもらうように細かい注文をつけます。

 『90度ならすぐに計算出来るのですが、105度ですから細かな計算がいるので、

 二日後の月曜日には出来るようにします』。

 と言う返事を貰いました。


 今の所、高性能で音の良いスパイク製品は発売されていませんので、

 ここで、ローゼンクランツが先鞭を付けたいのです。

 その為には、最後の最後まで音に対してこだわった物を創りたいのです。

 ネジ1本にまで魂を込めて。


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ミラクルサウンド・スクリーンは、「ト音記号」をイメージして設計 2002/08/22


 ミラクルサウンド・スクリーンのロクロ加工試作品が昨日1本出来上がりました。長さ2メートルもある物ですから、旋盤を回すと振動やブレが大きく、1本作るのに半日近くかかったそうです。そんなに時間がかかったのでは、工賃だけでも相当なものになり、とても商品化にはなりません。でも、そこはその道のプロですから、段取りを考え専用の治具を作って、1日5本を目標に工夫をしてみますと言う報告を得ました。

2mもの長さですから、ベアリングを使った振れ止めの治具が必要となります。

 その難しさを尋ねると、木は生き物だから、手に持つ刃物の力の入れ方が微妙に違うそうです。年輪がある木だと、硬いところと軟らかいところが交互にあるので、ロクロ加工の場合、油断をするとザックリと刃が食い込んでしまうことがあるので熟練を要するらしい。従って、年輪の無い南洋材の方がうんと加工しやすいそうです。

 加工がしやすくとも、南洋材ですと音にメリハリやコントラストも無く、何より振動減衰能力に劣ります。やはり、音の魅力を優先するなれば、加工の難しさや値段の高いことには目をつぶるしかありません。何せ目指すは世界最高の音ですから。

丸棒に加工する機械 1次加工された状態 ロクロ治具に材料を装着 クサビを入れて微調整
振れずに加工が出来ます プロの手つきは違います 一番太い部分に黒いライン 3対1の長さのパターン

 しかし、さすがです。その出来栄えは見るにも美しく、例えようのない気品や風格、また、やすらぎ、そして、ほのかな色香までも感じさせるものです。よくよく見れば、芯にはしっかりとした、しなりのある強さも持ち備えています。このような類の情報やエネルギーを発するモノには、ちょっと遭遇したことがありません。

 手の平に感じる感覚は、まるで、昆虫の「触覚センサー」が全開放されたように、、敏感になっているのが自分でも分ります。こうした感覚は初めて感じるものです。手に持つペンが勝手に動いて、あっという間に曲が出来上がってしまったということを、音楽家の口から聞いたことがありますが、こんな時の状態だったのだろうかと思ったりもします。

見事な曲線美に仕上がりました。

 また、ト音記号をイメージして設計した、この1本のポールが発する魅力は女性美に通じるものです。発せられた「スピーカーからの音」を、いとも簡単に、「魅惑の音楽」に変えてしまう、不思議な魔法のような力が頭に思い浮かんできます。


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ロクロ技術が生み出した、惚れ惚れするスピーカースタンド 2002/04/04


 普段よく見かける木製のスピーカースタンドは私にとって音の面で気に入る物はありません。何故ならばどのタイプの物をとっても振動が必ずループになる構造をしたものばかりだからです。それでは肝心の音楽のディーテイルを表現することなどとても無理があります。その為に私はその事を嫌い、今までは、ただ独立した柱だけでスピーカーを受けることを薦めてきました。しかし音質面ではそれでいいとしても、部屋中を走り回るような元気な子供さんのいるような環境ではどうしても不安があります。

完成したRK-MB1

 そこで両方、すなわち「音質面」と「安定性」を兼ね備えた物を作ることに、この度はチャレンジすることになったのです。それはお客様からの強い要望があったことがきっかけでした。PMC/MB1の能力を最高に発揮させることの出来るものを任せるから作って欲しいという内容のものです。

 スピーカーから休むことなく発せられる複雑な「音楽電振エネルギー」に対して、時間軸の折り合いをどうつけるかが今回の最大のテーマになります。日々「振動の時間軸の研究」をしてきたことの応用問題を解かなければなりません。ローゼンクランツの名に恥じない最高の物を作るには予算のことはいくらになるか分りませんよ、ということから始めさせていただきました。

 構想を練ってすぐにイメージは出来上がりました。こんなことはそうあるものではありません。よっぽど頭が冴えていたのでしょう。暮れも押し詰まった12月29日のことです、ラフスケッチから一気に図面を書き上げ、その間わずか2時間強でしたでしょうか。柱の部分は今までに何度も作って音の方は成功していますので、肝心なのはそれらをつなぐ連結棒をどのようにするかということ事だけでした。

 上からも下からも振動の出合い場所である真ん中に丸ホゾを組むことにします。これが今回の設計のキーとなるところです。イメージとしては、バイクのアイドリング時にはマフラーが大きく振れていますが、アクセルを噴かしていくと途中で共振点が一致して、ピタッと止まるところがあります。「振動の芯を捕らえる」。それ故に、真ん中で連結させる意味があるのです。

RK-MB1正面図

 しかし、簡単に考えてもらっては困るのですが、この方法は燃え盛る炎の中に飛び込んでいくようなものですから、余程の「勇気と決断力」と普段訓練された「卓越した身体能力」がないと出来ることではありません。「振動の瞬間」というものを熟知した者でなければ出来ないことなのです。

 上に行った振動はインシュレーターに、下に行った振動は床に逃げて行きますので、残ったわずかな振動は何のストレスもなく連結棒が自然減衰させてくれます。また、もう一つの縦波の方はと言うと、「歯と歯茎構造のインシュレター」が完璧に処理してくれるのです。今回その役割についてはPB-BIGが受け持ちであり、勿論寸法はBIGを入れて丁度いいようにしてあります。あとはローゼンクランツのDNAである105の数字を基本に寸法決めをしていきます。柱は105ミリ角で、高さは3.6倍の378ミリ、連結棒は52.5ミリ角、これで「波動コントロール」は完璧です。

 インシュレーターを置く最適ポジションを決めた上で、スピーカースタンドの幅と奥行きを決めます。もちろん、柱の中心にインシュレーターが来ることは言うまでもありません。

 強度を増すことを目的に3本の柱を連結していますので、底の部分がガタが無く、ピタッとそれぞれが面で受けることが出来るかという事です。それを考慮に入れて丸のホゾで微調整し、逃げるように設計したのですが、それでも尚且つ左右前後のどちらかの面で、実際にスピーカーを乗せて置いて見ると、どうしても紙1枚位は入る隙間が現実には生じてしまいます。

 この様な状態であれば、「シッカリとした低音は愚か」、「音もにじんで汚くなります」。そこで方法として、柱その物の底を丸くドーム状に加工する方法(PB-JRに採用済み)と、スパイクを埋め込んでスパイク受けインシュレーターであるPB-JR(H)で受けるという、二通りの方法を状況に応じて採用することに決定致しました。

 あとは材料を「木の成長の時間軸」に合わせて切った順番に「後ろから前に」、「内から外に」、と管理してL.Rを組んでいきます。このことが後に拡がりと奥行と高さの見事な音空間である3次元再生を可能にするのです。

精密に加工された丸型のホゾは見ただけで良い音を予感させてくれます

 ボンドで止めてしまうのか?ホゾ組みとネジ止めだけにするのか?、ボンドは使わないことにし、最終的に丸型のホゾと鬼目ナットを埋め込んでのネジ止め方式で行くことに決定しました。それはいつもお世話になっている木工所がロクロを本職としていることが決め手になったのです。定在波等を考えると丸型が当然いいのは分っているのですが、金属と違って生きた木の場合果たして完璧にズレなく組み上がるのだろうかというのが心配事でした。

全ては手作業で仕上げていくのですが、木工でこれほどまでに上手く組み合うとは信じがたいものです

 結局木工所にも私のほうから予算のことは言わないからということで、職人気質に火を付けさせることに成功。特殊なノミを片手にロクロを回し完全に手動で正に腕1本でやってしまうそうです。ご覧のように出来上がったものは見事というほかありません。私も思わず「精一杯請求してくださいよ!」、とついつい言ってしまいました。本当に気持ちのいい瞬間です。

あらゆるスピーカースタンドの特注を承りますので遠慮なくお問い合わせ下さい。

カイザーサウンド有限会社
担 当 貝崎 静雄(かいざき しずお)
E-mail info@rosenkranz-jp.com
Hiroshima Tel 082-230-3456

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スピーカーアタッチメントは、なんと!手の込んだ物か! 2001/12/30


 お客さんから注文を頂いてから作ろうと腰を上げるまでに今回は2ヶ月くらいかかったでしょうか、今年の忙しさは半端ではありません、ケーブル関係は誰の手にも一切触れさせていませんので、全部私が一から手作りでこつこつと作ります。特にこのスピーカーアタッチメントは神経を使いますので、気力が充実している時でないと作ることが出来ません。とにかく、作り始めたら一気にその勢いで行ってしまわないと出来栄えが良くありません。

 特に今年はナイアガラという世界でも例の無い、気違い沙汰とでもいうべき製品を手がけましたので、半端でないプレッシャーを受けました。そうした理由もあってなかなかアタッチメントを作る気持ちになれなかったのです。しかし、いくらなんでも何時までも待っていただくわけには行きません。

線径の太さ(エネルギー)順に並べます

 久し振りでしたので段取りは悪く、調子のいい時の倍近く時間がかかってしまいました。いざ「さぁーやろう!」と思ってもケーブルの配合を書いた手帳を何処へやったか分からず肩透かしを食いました。記憶を頼りに作っても、後で気がついた時、違っていれば大変です。

 ですからその日は確実なものだけケーブルを切断しようと思い・・・始めましたら、次第に記憶がハッキリとよみがえり結局ケーブルの配合に関してはレシピーに頼らず出来ました。52.5ミリという精密な長さで各ケーブルの長さを切って揃えるというのは並大抵の集中力で出来るものではありません。忘れていた緊張感が少しずつ指先に戻ってくるのが分かります。体で覚えたものは「思い出すのですねー」、本当に不思議です。

音の骨格を成す低中域部分の工程

 正確な長さに切断されたケーブルは響きの方向の順番にL用、R用、また、それぞれプラス用マイナス用と管理されて組み上げていきますので、とにかく一時も気の抜けない作業の連続です。WBTのスピーカーターミナルの方向にしましてもマジックで印を付けてはいますが、うっかりすると水平方向なんかは間違いやすいですから大変神経を使います。

 その中に6種類のケーブルを線径の太さの順番にターミナルの内壁部にシッカリと当たるように、中心にはダミーの芯を入れます(この芯とて響きの方向を調べた上で使います)。こうしてターミナルとケーブルの間にハンダが必要以上に入らないように下ごしらえするのが、良い音と、尚且つ、バラツキの無い物を作る最大のコツなのです。

こんな大きなハンダゴテ見たことありますか?!

 またイモハンダにならない為に、このような200Wの巨大な半田ごてを使って短時間で強力に金属結合させるのです。とにかく、たった5センチほどのケーブルの中には気の遠くなるようなノウハウが数え切れないほど詰め込まれていますので、決して人に託すことが出来ないのです。こうして愛情を込めて出来上がった素晴らしい音楽芸術と呼ぶにふさわしい、私の分身のSP-8N(Perfect)を貴方も一度是非聴いてみてください。


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選りすぐられた18の精鋭たち 2001/11/11


 PB-BIGは今回でもう第6ロットになります。1ロットで約100個作るのですが、その都度少しずつノウハウを積み上げていき性能はアップしてきております。このたびのテーマは、母材と副材を金属結合させた後の焼鈍工程に於いて、事前に南北の方向を磁石で正確に計りデスク上にラインを入れてそれに沿って常温下で焼鈍させることです。

 このようにして毎回私がテーマを一つ掲げ、それを実行してもらいます。前回はハンダが一番強い力を発揮するであろう温度を徹底して管理する事により、音質に大きな効果を上げました。さらにその前は、金属の表面の油等の汚れをきれいにクリーニングして、巣が少しでも減るように気をつけてやりました。このようにしてたゆまぬ努力を続けております。

音の良い順に番号を書いています

 「金属の方向を調べる時の集中力」、「金属を加工する職人の拘りとやる気」、「真面目さと根気が要求されるハンダ入れの温度管理」、一つでも欠けるといい物は出来ません。とにかく「誠実さ」と「真心」を込めて作らないといい音にならないのです。そして、その効果が音にハッキリと現れたら=(私自身が感じる感動の大きさ)に対して工賃を気持ち良く上げさせて貰うという方法を取っています。結果を出せば報酬で応え、士気が上がるようにしております。また半面、失敗した時にはぺナルティーを科せることもあります。

 なぜならば、私の先には音楽愛好家の皆さんの「厳しい耳」と「ハート」の審判が待っています。その一歩手前の段階で更に厳しい感性を持ち、難しい事でも簡単にこなせるようなその道のプロでなければなりません。言い訳は決してききません。今日のような不景気な時代ですから良いも悪いも全て結果として出てきます。その分、厳しいですけどやりがいのあることです。

次回のロットでは左上の1番にまた挑戦いたします オスメスペアーで揃った18個の精鋭たち

 今回のBIGは95%以上が前回の一番音の良いリファレンスの音を越えました。そして「新たな18個の精鋭達が選ばれました」。それによって、前回の18個はローゼンクランツのリファレンスシステムから今日限り外される事となります。そして、その肝心な今回の音の出来栄えですが、なんといっていいか、私の耳が喜んでいます。とにかく何も言う事は無い。それが正直な実感です。

 そんな素晴らしい出来栄えのPB-BIGを是非この機会にお聴き頂きたいと思います。


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ハンダの溝切りの精度出し 2001/10/07


 CDトランスポート・P-0の専用脚RK-P0の場合は長さが10センチ近くもある大きなキノコのような形をしております。それにインシュレーター部分=PB-REX(A)を靴に見立てて履かすような格好になっています。その二つの物を金属結合させた後、ハンダ層の部分の溝切りを1/100ミリ精度で加工するのですが、どうしても長く大きな物になると、チャックの掴みようによっては5/100〜20/100ミリのブレが出ます。

 わざと旋盤のチャック側に遊びを持たしておいて、1個づつ槌で叩いて芯出しを1/100ミリまで追い込みます。いい加減に叩いているように見えますがその間約20秒位、叩く場所、叩く強さ、見る見るゲージの目盛りが追い込まれて行く・・・、とにかく神技です。そうすると回転させても写真のように完全に止まって見えます。精度を要求される物作りには、こうした職人の経験と技術に頼る部分がまだまだ沢山あるんですねぇ!、とにかく見ていて関心させられる事が一杯です。

レベルゲージを使っての芯出し あたかも止まったかのように見えます
波動コントロール手法による溝切り レールに磨耗が生じるとこうして自分の手で調整する

 手元の1/100ミリの違いでも10センチ先では大きなブレになって現れます。話は映像の事になりますが、4〜5メーター先のスクリーンに投影する三管式プロジェクターの場合ですと、もっと顕著に輪郭の甘さやにじみが出て乱視状態で耐えられません。こうした時にもローゼンクランツのインシュレーターは凄い効果を発揮いたしますので、映像ファンの方には是非お試しいただきたいと思います。


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パーフェクトモデルのオーディオラックについて 2001/10/04


 ローゼンクランツのオーディオラックの音の基本理念は「柔」と「剛」が織り成す、「コントラスト」と「ハーモニー」から成り立っています。木だけでは音が萎えますし、かといって金属だけでは、リジッドな音は得られるものの、変な響きが乗ってしまいます。それぞれの素材が持つ物性の長所と短所を見極め、ペアーで使ってやることによって、見事な音楽を生み出します。

 その金属部分に於ける鳴きの問題点は、那智石と清流の川砂のコンビで巧みにデッドニングを取っています。勿論剛性の高いステンレスのパイプの響きの方向性を揃える事については当然のことであると同時に、特に注目して頂きたいのは棚受けの取り付けの手法です。それは音質最優先設計で、一切のガタツキを無くす為に敢えて高さ調整は出来ず、直接ネジ止めにしてあります。また、振動の流れの方向を明確にするために接合面積を最小にします。そうする事によって音にしなりをもたらす効果が出ますので、音楽に心地よい自然な揺らぎが生まれてきます。

パイプに棚受けをアルゴン溶接 棚板とステンレス脚の接合部

 音質面に一番大きな影響を与える棚板には、ローゼンクランツ独自のハードメイプルを採用。その拘りは縦方向継ぎ目無しの一本通しの無節の最高級物を使用。普通のメイプルの倍ほどのコストが掛かっております。兄弟の木から響きの方向の順に切り出し、「信号の流れ」と「振動の流れ」を下から上に揃えて組み上げます。その事による音質面の効果は音の高さの表現において特に大きく、普通の部屋であっても広々とした空間を演出いたします。

兄弟の木から切り出した棚板 完成した5段ラックAR-5(Perfect)

 塗料については数多い物の中から、特に音の良いドイツ製の自然植物性塗料を採用しております。これは溶剤を使いませんので人にとっても優しく、自然で心和むような質感の仕上がりです。またそれは塗るというより刷り込むといった感じですね。


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PB-FRIENDが出来上がるまでの工程 2001/10/02


 PB-FRIENDが出来上がるまでの一連の工程をカメラに収めてみました。普段消費者の方達にとって、完成品と接する事があっても、この様な製作現場の様子を知る機会は滅多に無いと思います。誰でもどんな風にして製品が出来上がっていくのか?興味のあるところだろうと思います。そこで私自身もこの際勉強したく、職人さんの技術をじっくりと見せてもらい、また色々なノウハウの説明も受けました。

裁断された材料 NC旋盤に取り付けられた5本の専用刃物
外形のR部分と端面の粗加工 左の写真の加工専用刃物
センターモミ加工 左の写真の加工専用刃物
外形のR部分と端面の仕上げ加工 左の写真の加工専用刃物
センター穴空け加工 左の写真の加工専用刃物
内径のR部分とテーパー部分の仕上げ加工 左の写真の加工専用刃物
旋盤加工を終えたPB-FRIEND Aマークの刻印を打っています
鏡面磨き仕上げ 製品に成ったPB-FRIEND

 ローゼンクランツのインシュレーターの中でPB-FRIENDが一番簡単な加工なのですが、それでもこれだけの工程があります。ご覧頂いたように1個、1個、職人による手作り品です。愛情あふれるローゼンクランツのサウンドはこのようにして誕生いたします。


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理想のサウンドフロア-とは? 2001/09/27


 3年程前にローゼンクランツの試聴室には最高級床材(メイプル)を使い、徹底した独自のノウハウを駆使してサウンドフロア-を施工してあります。私の目指すところは世界最高の音ですから、この部分にメスを入れずして今以上に音を良くすることは不可能と感じていました。そこで業者の方に、「ここはこのようにお願いしたい」と私の希望を述べるのですが、恐れをなしたのか、儲からないと見たのか、「音が良くない!」と、後でトラブルになってもいけませんので、「この仕事は辞退させて下さい」と二社たて続けに断られました。

 そんな事で1年ほどそのままになっていたのですが、ある時、いい楓材が入ったという知らせがありましたので、「よし!これを機会に自分でやろう」と思い立ちました。いざ始めたのはいいんですが、床のコンクリートがかなり波打っていて一筋縄ではいきません。水平出しのサンダ-掛けが思いのほか大変で、結局仕事の合間を見ながらですから完成には2週間掛かってしまいました。

 やっとの思いで完成した後の音はイメージどおり、「まるで別世界!」。”人の声には潤い”が、”弦楽器に限っては生音そのもの”を聴いているようです。それは、”オーディオで聴く音”と、”目の前で聴く生の音楽”との違いと言っていいでしょう。以前はコンクリートの上に下地がゴムの厚手のカーペット敷きでしたので、振動移動が上手くなされず音が止まる感じといったらいいでしょうか、今思えば音楽が流れていませんでした。

 また、相当条件が良いといわれているお客さんのお宅でも、せいぜい楢の無垢木で出来たフローリング。この場合ヒワリを避ける為に長さは70〜80センチの物を1枚づつ繋いでいく工法ですので、ベターではありますがベストではありません。ローゼンクランツのサウンドフロア-は幅3.6m、縦方向継ぎ無しの1.8m、厚さ21mm(畳にして4枚分です)。

 その構造は、米松で出来た根太材を殆ど隙間なく22,5mmピッチで敷き詰め、目の詰まった硬い木を後ろから、前に来るに従って柔らかい木を順番に並べます。これは振動の習性を利用したもので、音が前方に流れるような配慮からです。勿論木の根元から枝先の方向と地磁気の流れの方向も完璧に揃えてあります。基礎になる根太材はこの様な考え方で施工してあります。

 次に楓の床材はというと、幅の不揃いの物を使うのですが、狭い物を中心にして次第に外に行くに従って広くなるように組み上げていきます。こうして広がりのあるサウンドステージが演出出来るようになるのです。これも振動の習性=(狭いところから広いところへ行きたがる)を利用したものです。

 素材そのものが本来持っている習性や特徴を理解してやろうとせず、科学偏重の物量を投じた力ずくのパワーで鳴らそうとしても鳴るものではありません。ですから、機材による音の違い(A:B比較)を拠り所にグレードアップを試みても充分な満足が得られないのもその為です。これからはこうしたトータルマネージメントなくしては市場をリードして行けません。正に本物しか生き残れない時代に突入したと言って良いでしょう。


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間違ってはいけない!物は機械ではなく人間が作るもの 2001/09/24


 新しいシリーズとして、私の物作りの動機やその過程での悲喜こもごもな事を、体験の中から語っていってみたいと思います。改めて振り返ってみますに、最初の動機は「このような商品を作るんだ!」という、物作り的な発想が原点にあったようには思えません。ですから「技術屋的発想とは全く違うんでしょうねぇ!」。ただ、「どうして良い音にならないんだろう?」とか、「何故このような結果になるんだろう?」とか、素朴な疑問から始まっていったように思います。ですからそこには「こうしたら売れる!」という様な商売的発想が無かった事が結果として良かったのではないかと思います。

 すなわち、「買い手の立場の発想」から始まっているわけです。そこには「確固とした自分のイメージする音」があった事と、「良い音で聴きたい」という思いの強さが引っ張っていったのでしょう。それと、手元には何の測定器も無かった事が幸いします。全ては耳と感性だけが頼りですから、暗闇の中で針を探すような労力と、一見無駄とも思えるような時間の掛かり方などが、他の人達とは違う立場から物を観察したり自分独自の考え方が知らない間に確立されて行ったと思われます。

 真の実力は恵まれない環境や、苦境に陥った時に発揮されるものであると信じています。そして、私のくじけない自己管理法の一つであるトンネル堀りの例えですが、横から見てしまうと、あまりものその長さに気が滅入ってしまいますので、決して横を見ない事です。今日1日一生懸命掘れば、必ず向こうから薄明かりが差してくると信じて、今を一生懸命頑張る事に勤めます。そして明日が来れば、また今日1日だけに目標を絞って頑張ります。その繰り返しの中から、ここまでやったんだから最後まで頑張ろうという気持ちが芽生えてくるようになります。

 人に頼らず自分の身体で経験してきた独特の感覚といったらいいでしょうか、一見あいまいで頼りないようですが、これほど確かなものは無いと、今では自信をもって言えます。地道な努力の積み上げ無くしていいものは出来ません。その身体で覚えた技術という事についてですが、現在、ローゼンクランツのインシュレーターの製作をお願いしているところは2社ですが、そのいずれも親子でやっています。技術革新の端境期にあって、親は汎用旋盤で叩き上げで鍛えられていますが、コンピューターのNC旋盤は使えません。息子の世代はそのまた逆です。

NC旋盤によるSTB-51中仕上げ 最終仕上げと1/100mm精度の溝切りは汎用旋盤で

 一見NC旋盤の方が優れているようですが、やはり試作の段階や仕上げでは人の技術がなくてはならなものです。その技術の伝承という事をそばで見ていますと将来が少し不安ではあります。「近頃の若いもんは刃物を研ごうとせん、刃物が全てなのに、すぐ金出して買おうとする」。「ボタン押すだけじゃけぇ、人並みのことは出来ても人以上のことが出来ん」。そして、「困った時だけ聞きに来る」といって親父は嘆く。

切れなくなった刃物の山・・・1個2,400円 材料を掴むチャックも莫大な数

 まこと、私も横で見学するに、NCの場合はドア-を閉めたら後は全てコンピューターが加工するので、材料が刃物によってどのように削られているのかが見えてこない、手を後ろに組んでじっと立っているだけ。だから振動等ハンドルを通して五感に伝わってくるものが無いから、機械と一体になって身体で覚えるという感覚が身につかないようです。その汎用旋盤を自分の手足のように操れる人がいなくなったら、今のようにいいものが果たして出来るのか将来が心配ではあります。


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日々たゆまぬ努力のインシュレーター作り 2001/09/03


 この度のPB-BIGのメスの円錐状のくぼみの部分の出来が良くありません。よく見ると、「ニキビの芯」のように山が残っているのです。肉眼でもよく見ないと判りにくい位ですが、オスのピラミッドの先をそれにあてがうとセンターにピタッと止まらないでわずかに逃げます。いつも一生懸命作ってくれている姿には感謝しているのですが、でもここは心を鬼にしてやり直して欲しいといって説明しました。

X50で見た所

 刃物の先は0.2ミリのアールがついている日本刀のような片刃ですから、完全には図面で書いたように尖った三角垂にはならないのです。次第に刃先が磨耗してきたのと、刃物をくわえるときに真円がでてないのが原因です。それと機械その物の精度の差もありますが、今回は両者の間でどこまでの物を良しとするか考査の数値を決めましょうということで50倍の拡大鏡を使って0.175ミリという目標数値を掲げました。

加工が終わった時点でのチェックの様子と拡大鏡

 これは新品の刃物を使っても0.2ミリは最低でも出るわけですから大変な数字です。その為には刃先を1/100ミリほどで研きこむ技術が無ければ達成出来ません。完全に尖らしてしまっては折れるし、加工の最後は行き止まりになる訳ですから大変です。しかしそんなことは言っておれません、とにかく私は「世界一音のよいインシュレーター」をお客様に届けることを目標にしていますので、「何が何でも貴方の力を貸して下さい」。といって技術者魂に何とか火をつけようと必死です。

 解りました何とか頑張ってみますと言ってくれたのでとりあえず一安心です。その後一緒にお願いしていた第2ロット目のPB-DADDYも出来上がってきましたが、さすがに今回の出来栄えはピクリともしない、今までで一番いい感触でした。


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こだわりのヘリカル式カプラー 2001/08/30


 ローゼンクランツのパッシブコントローラーのC-1EXに使っている部品ですが、これ1個で4,000円ほどします。機能上は無くてもいい物なんですが、それでは私のこだわりが許さない。これでなければならないのです。クリック式のアッテネ-ターと操作ツマミの間に挿入するジョイントカプラ-です。


  アッテネ-ター特有の手に感じる「カツ〜ン・・・♪」という感じ、頻繁に使うところですから譲れないものがあります。「カチ、カチ」では味気無いし、色気も何もあったもんじゃない。それには独特のらせん状の切込みが入っていてわずかに弓のようにしなるのです。この感触がたまらないんですねぇ。

 東京のお客さんで現在ローゼンクランツのパワーアンプP1-EXを使って頂いてる方から、今回C-1EXの注文を頂いたものですから、組み立てる過程の中でインシュレーターだけではない、そのこだわりぶりを見て頂きたかったのです。


 シャーシー本体の中に実はもう一つシャーシーがあってなんと2重構造になっているのです、その中のボックスは上下にマイクロベースのインシュレーターで挟み込んだアイソレーション構造となっております。もちろんフロントパネルとサブシャーシーの間にもマイクロベースで振動対策済みですから、アッテネ-ターは外部の振動からしっかりと守られています。もう4年も前からローゼンクランツでは振動に対してここまで徹底した考えの元に設計していたのです。


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インシュレーターパッケージの裏話 2001/08/28


 PB-CHILDという新商品を開発中の今、パッケージ製作をいつもお願いしているNさんから連絡があり、「一応出来たから、これから行きま〜ス」。といって、1時間ほどしてやってきました。そのNさんというのはカイザーサウンドのお客さんでもあります。そんな訳で安くしてくれるし、親身になって考えてくれる私にとってはかけがえのない人の一人です。

 いつものようにひょうひょうとした言い方で・・・

  「あの〜一応やり方を見せますから、後は自分でやってください」。

 そして、

  「金槌貸してください」。

 といいながら、取り出したのはホッチキスのステップルのようなものです。

 何をするのか?・・・と思いきや。

  「BABY用のパッケージも下さ〜い」。

 といって、

  「BABYより数ミリほど背が高い分だけこうやって切って下さい・・・」。

  「おい・・・お〜い・・・、1個づつそうするのか?」。

  「そうですよ、まだなんぼ売れるか分らんのに、もったいないでしょう」。

  「そりゃ・・・そうだなぁ!」

 変に納得させられてしまった。

  「木型をおこしてやりゃ〜・・・10万はかかりますよ〜」。

 商売っ気は全くなし!。

  「よし!、よし!解った・・・。そうするよ!」。

こうしてBABYとLOTUSとCHILDの3種類が同じパッケージで可能となりました。

 内心、そこまで考えてくれているのかと思うと、まんざらでもなく嬉しくなってきた。しかし、とはいうものの、ただでさえ梱包には手間が掛かるのに、1個づつ金槌で叩いてくりぬかなくてはいけない。PB-CHILDが売れたら、当分は嬉し、悲しいが続きそうです。CHILDを買われた時はくり抜いた後を眺めて見て下さい。多少ゆがんだ手作業の後が見えるかもしれません。その時はいいように私の愛情と汲んで下さいませ。


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