アナログ時代のオーディオとインシュレーター
インシュレーターは今では音質改善アイテムとしてなくてはならないものとなっていますが、かつてはアナログプレーヤーのハウリング対策用としての需要くらいしかありませんでした。アンプはそのまま置き、スピーカーには単なる高さ調整としてコンクリートブロックや木製スタンドをあてがうのが普通だったのです。
今でもベテランになればなるほどインシュレーターの効果に懐疑的で、使用していない例が多いのはこのような事情からです。長く軽んじられてきたインシュレーターが脚光を浴び始めるのはCDの登場からです。
そして、相前後してワイドレンジ再生とステレオイメージの再現を謳い文句にしたスピーカーシステムが登場。現代につながる一連のスピーカー群です。このスピーカーは能率が82〜85dB/デシベルと軒並み低能率だったのです。
しかし、残念ながらCDとこの低能率スピーカーの組み合わせからは音楽の生命感が聞こえてきませんでした。この貧血オーディオから生気に満ちた音を引き出すにはどうすれば良いのか? 音を追及する達人たちがたどり着いたのが、電気的効率が低下した分を機械的効率、つまり振動の効率を向上させるという結論でした。
ここに至ってアナログプレーヤーのハウリング対策用ではない用途で、インシュレーターが注目されることになるのです。
そこでカイザーサウンドは、「歯と歯茎の構造」にヒントを得た画期的なインシュレーターを世に問うたのです。当時は広島の一介のオーディオショップの商品ですから大きく取り上げることはありませんでしたが、手にした人達からその良さが次々に口コミで伝わり、現在では「インシュレーターの王様」と呼ばれる地位を確立したのです。
ローゼンクランツに続け! と、実際に市場に登場したインシュレーターの大半は却ってギスギスしたデジタルサウンドを強調したり、ある物はデジタルの硬質な音を嫌悪する余り曖昧模糊な軟質な方向に走ってしまったり、と、どれをとっても「帯に短かし、たすきに長し」で、音の世界の住人として市民権を得るまでに至りませんでした。
さて、ここから本論です。インシュレーターを使うメリット、そして、デメリットとは何なのでしょう? これまでもいろいろと述べてきましたが、ここで簡単におさらいとまとめをしておこうと思います。
インシュレーターを使うデメリット
逆説的になりますが、まずはデメリットから述べていきます。上述したように市場に出回った商品の多くはデジタルサウンドの硬調な音を強調したり、逆に緩和しすぎたりというものでした。ですからジャズには良いがクラシックはダメ、あるいはその逆という現象が起きました。
どちらにも共通して言えることは、却って音の生気を殺してしまったということです。これは振動をある一面からしか捉えていなかった為です。
ですから、インシュレーターの選択を見誤ると音のバランスが崩れたり、時間軸が合わなかったりと、音の迷宮に入り込んでしまうことになります。まさに諸刃の剣です。インシュレーターの効果に疑問を持たれた方は一度すべてのインシュレーターを外してみて、素の音を再確認するのが良いでしょう。
インシュレーターの効果に懐疑的、否定的な方は迷宮入りの前で踏みとどまった、ある面、運の良い人とも言えますが、「虎穴に入らずんば虎児を得ず」、今一歩の冒険が足りない人とも言えます。これはケーブルにも言えることですが別の機会に述べることにします。
インシュレーターを使うメリット
では、ローゼンクランツのように正しく設計されたインシュレーター、即ち、振動のメカニズムを正しく理解した上で作られたインシュレーターを使用するとどんなメリットがあるのでしょう。
ローゼンクランツのインシュレーターは他の物と違い振動を絶対悪として捉えていません。振動を全否定せず、適度に遮断した上で良い振動(音楽的振動)を伝達するという考えです。すなわち、ビーチボーイズの曲ではありませんが ”good vibration” ということに尽きます。
結果として、音楽の持つ生気が失われることなく伝達、増幅され、青白きデジタルサウンドにほんのり赤みが差すような温かみのある音を得ることが出来ます。
また、ローゼンクランツが最も重要視するのは時間軸(音楽のテンポ)です。有害な振動を歯と歯茎の構造で瞬時に遮断することで音の足並みが揃います。時間軸(タイミング)が揃うと音楽のエネルギーが最大となり、小口径のスピーカーと小出力のアンプであっても躍動感に溢れた音楽が再現されるのです。これは上述したようなワイドレンジ、低能率のシステムの場合でもそうです。
つまり、正しく設計されたインシュレーターは音楽の力強さ、甘美さを無味無臭と思われたCDから引き出してくれる可能性を秘めているのです。ですから、幸か不幸か、インシュレーターの効果にこれまで懐疑的、否定的だった方達にも是非試して頂きたいと思います。
ローゼンクランツが世に出るきっかけとなったインシュレーターについて、情熱のおもむくままに語り始めると際限はありませんが、今回はここまでとします。興味のある方は商品案内を改めてご熟読願います。