ネットで色々調べ物をしていてローゼンクランツのウェブに目が留まり、内容を読んでいる内に惹かれるものを感じ、カイザーゲージを買ってセッティングを試みた事で、ローゼンクランツ製品をもっと試してみたいと思うようになったそうです。
その後は私の助言を元に、ジャンパーケーブルやフェーズプラグ、ミュージックスピリットのスピーカーケーブル(Swing)を使うほどに音楽の魅力が増して行ったそうです。
過去に例が無いほど難易度の高い部屋
A.Mさんのステレオを置いてある環境は書斎兼仕事場です。12畳のリビングとの続き間であった6畳の和室の縁側の部分を拡張して8畳の洋間に改装した変則的な部屋でした。
スピーカーの左には出窓あり、スピーカーの背後の面の半分は押し入れで右は奥行きのある大きな本棚が陣取っており、そのすぐ右には立派な柱時計があります。右のスピーカーの外側にあたる手前部分は壁になっていますが、すぐ横は部屋の境界で仕切りはなくオープンです。
音楽を聞く位置は左角にあるデスクに向って仕事をしながら聞く事が多いそうですが、そのチェアーの横、即ち右のスピーカーのすぐ前に馬鹿でかいソファーがあってこれが音に悪さをしています。これさえどこかに移動出来たら音作りも易しくなるのですが、A.Mさんにとってリラックスするのに欠かせないとの事なので、別の考えを見つけ出さなくてはなりません。
壁面四面の形状が全て違うので、左右のスピーカーによって生じる気流に澱み部分が多くなりとにかく流れが良くないのです。オリーブのメディアプレーヤーに取り込んだデキシーランドジャズを聞きながら思案を巡らしていますが、その音は痩せていて冷たくきいついので、奥さんから苦情が出るというのも頷けます。
カイザーサウンドは本音を語ります
私のセンサーに出て来たカイザー指標値は100点満点の25点です。このきつい点数を口にしてしまうと、結果を出せなかった時の責任が自分に戻って来るのでプレッシャーはかなり掛かります。
そんな事は分かっている筈なのに、もう一人の私が勝手に口を開けるのです。"善も悪も混じった魂の声"として出て来るのです。これが良くも悪くも私の持って生まれた性なんです。どうあがいても変わりません。お迎えが来るまで変わらないのでしょう。
オフセットセッティングに賭けてみる
さてどうしたものかと部屋をぐるぐる回りながら作戦を練ってみるものの、通常の思考パターンの中では使えそうな物は思いつきません。今回だけは普段私が絶対にやらないオフセットセッティングしか残された手筈は無いみたいです。
フラッターエコーを避ける事が出来るという触れ込みで、一部にオフセットセッティングの信望者が居ますが、素人騙しに毛が生えた程度の結果しか得られません。何軒かそのセッティングに遭遇した事がありますが、脳が腸捻転を起したような音で吐き気を模様したのを覚えています。
にも拘らず敢えてそのオフセットセッティングを試みようというのだから、上手く行くのかどうなのか私自身にも分りません。とにかく初めてのトライアルなのですから・・・?。しかし必ずどこかに、通や玄人も唸るだけの音に繋がる答えが隠されている筈です。それを何とか今日はひねり出してみましょう。
念力と無心の脱力でスピーカーの位置決め
雑念を除き念力にも似たパワーでスピーカーの位置をマーキングします。左に比べて右のスピーカーは30センチは裕に後ろに下げたでしょう。幅も少し広げ気味です。前からスピーカーを動かすのではなく後ろに回って調整を図ります。
何故かと言われると、リスニングポジションのみではなくどこで聞いても良い音になる為には間接音を聴いて合わせなくてはならないのです。聴くのではなく聞こえて来るといった感覚で合わせます。
前後、左右、振り角共に勝手に手が動くようでなければなりません。ジャズの音色も豊かになり心地よくスイングし始めました。曲のリズムに合わせるようにボリュームを上げたり下げたり、乱暴に激しく動かすと水を得た魚のように生き生きし始めます。
ガン細胞のような音を見つけ出す耳
最後の仕上げに入るべく歌の入った曲をお願いすると、美空ひばりの歌がかかりました。かなり良くはなったのだけど、何か相容れないストレスを憶えます。どうやっても取れないガン細胞のような物がどこかで足を引っ張っています。
見つけました。犯人は足回りです。硬く冷たいステンレス製の鋭利なのスパイクにスパイク受けが痛い痛いと言って泣いている悲鳴だったのです。ここは想定していた事だったので、用意していた歯と歯茎構造のスパイク受け(キャップテン)に入れ替えて試聴して頂きました。
見る見る血色がよくなって、ひばりが十八番の曲だと言わんばかりに乗って来る感じが分ります。バックの演奏も埋もれて聞こえなかった楽器が沢山見えて来ました。聞こえない帯域の音があったのは、同じ素材で波長も同じだから振動が打ち消し合っていた為です。
自画自賛が笑い者にしかならない事を分っていても自慢したくなる。
それがローぜンクランツの歯と歯茎構造のインシュレーターの凄さ。