師走そのものです
この12月は猫の手も借りたいほど忙しい思いをしました。H.Hさんの納品の約束は25日13時という事でしたが、直前の23日に寺島靖国さんから『25日15時からFM東京のラジオ番組に出てくれないか?』と頼まれたものだから、先方さんに急遽納品時間を「朝の10時に早めて頂けませんか?」と電話でお願いをし、ラジオの方は後ろに1時間伸ばして16時にして貰い無理やりスケジュールを付け加えたのです。
その前日の24日に至っては、メグでジャズ愛好会主催の"ローゼンクランツ浸り"のイベントをこなしたばかりで、打ち上げを終えて家に着いたのが午前1時を回っていました。自宅に着くや否やバタンキュウで寝床に・・・。
翌朝は風呂も入りたいし、納品の準備もしなければならず、6時起きです。調子よく出発したと思いきや、そんな時に限ってトラブルは起こるもので、カイザーオペル号のナビが拗ねたのです。住所を打ち込みほんの数百メートル走ったところで突然画面が設定モードに戻ってしまい、慌てて再設定するもすぐに同じ事の繰り返しです。
パナソニックのナビも8年ほど使っていますので、ハードディスクの読み込みが悪くなっているのでしょう。県→市→町→丁目・番・号と入れて行きますが、「只今ディスクを読み取り中です」との表示が出て待機状態となります。いつもナビ頼みで運転しているので故障した時には本当に困ってしまいます。
途中で車を止めてはあの手この手で何回入れ直したでしょう。騙し騙し目的地の近くまで辿り着き、あと数百メートルのところでまた画面が設定モードに戻ってしまいました。仕方なくH.Hさんに電話をかけて迎えに来て頂く事に・・・。
万全の体制でお出迎え
早速オーディオを置いてある部屋に荷物を運び込もうとすると、そこにはスピーカーもアンプの姿もなく、ローゼンクランツのRK-AL12/Gen2の設置を待つばかりの状態になっていました。それにしてもアンプまで外してあるのには驚きました。
事前に私が現在テスト中の中国製の真空管アンプの事をお話したのがその原因となっているのです。「RK-AL12/Gen2に繋いで鳴らしてみると思いの外良いので、ローゼンクランツ流にモディファイして10万前後で売って行こうと思っています」とお話していたからです。
実際には、「当日試聴して頂くべくお持ちします」という流れだったのですが、ご本人は既に買う気満々で、いきなり『そのアンプで鳴らして欲しい』と仰るのです。信用して頂くのは嬉しいのですが、手持ちのアンプと聞き比べる事もせずというのも、責任の重さを感じずにはいられません。
スピーカーの設置に当たって
先ずはスピーカーの組み上げを行います。スタンドはスピーカー本体底部に直接ネジで止める方式になっていて、スピーカーの下にインシュレーターを必要としない設計となっております。
要するにスタンドにインシュレーター機能を盛り込んでいる訳です。そこには最小のコストで最大のパフォーマンスを発揮させるという、財布に優しくも性能は一切妥協しない、エコな製品にしたかったという強い決意が込められています。
セッティングに先立ち、スピーカーベースの調整法をイメージする為に動かそうとするのですがびくともしません。ベースの下に三角形の棒状の足がカーペットを噛んでいたのです。
これではスピーカーをベースに載せたままの状態で、部屋との響きの微調整を取る事は出来ないので、事前にシュミレーション力を発揮して最初からベースの位置を決め打ちするしかありません。カーペットでは突起物があるとこうした事が起こるので、特殊なセッティング力がないと部屋との響きの調整を取る事は不可能に近いです。
RK-AL12/Gen2の音出し
さすがの私でも、全く動かさない完璧な決め打ちは無理なので、最終的にはベースの上でスピーカーを数ミリ単位で動かしてハーモニーポイントを探り出す事になります。とりあえず、結線類は今あるままで、試聴の為にお持ちした真空管アンプにRK-AL12/Gen2を繋いで聴いて頂きました。
音源はPCに取り込んだベニー・カーターのジャズ・ジャイアントです。このディスクは私も持っていますが、ここ10年近く聞いてはいません。それにしてもこんな良い音で聞くのは初めてです。
私でさえそう思うのですから、H.Hさんは信じられないといった表情をしています。そして、3分と経たない内にこのアンプも一緒に頂きますとの言葉を発したのです。それ位この部屋では素晴らしい音で鳴ってくれました。
希望する音に巡り会えない苦労の10年間
子育てと仕事に追われた十数年はオーディオから離れていたとの事ですが、それらが一段落した現在はオーディオの趣味を復活させあれこれご自分なりにやってみたもののどうやってもイメージする音を出す事が出来なかったそうです。
スピーカーに至っては7機種にも及んだといいます。最近のスピーカーの傾向は情報量こそ多いものの肝心な音楽が心に届かない事に不満を覚え、ステレオいじりはもう止めようと思っていた時に、ローゼンクランツのRK-AL12/Gen2のレビューに目が留まったと仰います。
土壇場で当たりくじを引いた
フルレンジだから音楽を素直にあるがままに聞かせてくれる筈だと思い、それを機にローゼンクランツのウェブをしっかりと目を通す事によって、更に信頼を感じられるようになり導入への決断がついたそうです。
私のオーディオに対するひたむきな情熱に、この人の作った物なら間違いないだろう! と思えたと打ち明けられた時には、萎えないで今日まで自分の理想を求めて頑張って来た甲斐があったと感慨深いものを憶えました。
世界の名だたるスピーカーを7台も買ったにも拘わらず満足に至らなかった。そんな苦悶が、RK-AL12/Gen2からベニー・カーターのサックスが聞こえた瞬間に一気に吹き飛んだと言いますから。私のイメージする音楽表現が一度に7社も打ち負かした事に繋がります。"音と音楽の違い"の研究を重ねて来た結集がこの結果となって証明された訳です。
開発者である私自身が個人宅に直接お持ちしてセッティングする等、普通では考えられない事ですが、何が何でも素晴らしい音で聴いて欲しいと思う私の強い信念がそうさせているのです。いつまでもそんな事は出来ないと思いますが、出来る限り続けたいと思っています。それ位、RK-AL12/Gen2にはローゼンクランツの音楽の魂が注入されているのです。
部屋の響きとRK-AL12/Gen2が上手く合致
H.Hさんの8畳の洋間は厚いカーペットと部屋の隅々に吸音材を貼り巡らしているのでかなりデッドな響きとなっています。RK-AL12/Gen2はもの凄いエネルギーを発しますので却って良い結果となっています。
ピアノ、ベース、ギター、歌声・・・。かける曲の何をとっても完璧に再現してしまうフルレンジスピーカーの音楽表現力にH.Hさんは感動しっ放しのようです。スピーカーとは本来このように音楽の魂を表現する事にある訳ですから、物作りに於ける製作者の意図が正しい形で反映されるべきだと考えます。
途中で更に素晴らしい音楽再現になるようローゼンクランツの近日発売予定のスピーカーケーブル(SP-Maximum #34)を試聴の結果導入して頂く事になりました。そのお礼に、部屋に貼ってあるルームチューニング材の響きの方向性を上下左右チェックして差し上げ、ご自分で貼り直して貰う事にしました。
今日も精一杯の仕事をさせて頂き、清々しい気持ちと共に感謝の心であります。