『ローゼンクランツには、とても強いインパクトを受けた事があります』と、N.Sさんはその時の様子を話してくれました。それはインシュレーターREXWを中古で購入して、CDプレーヤーに装着した時の凄まじい変化と音の素晴らしさが忘れられないのだそうです・・・。
予想を遥かに超えた音質向上に、驚きと同時に衝撃を受けたそうです。
インシュレーターの衝撃以来、ローゼンクランツに更なる関心を抱くようになったと教えてくれました。その後、上京した便にカイザー試聴室へ立ち寄り、試聴及びオーディオ相談を受けたのです。
後日、電源タップNIAGARA Jr.4、NIAGARA ST、スピーカーケーブルの3点を試聴して貰いました。その結果、Jr.4を購入する事になり、自分のシステムにも光明が差して来ると共に、カイザークリニックを受ける気持ちに繋がって行ったそうです。
4月の下旬にその機会が訪れました。広島からですと高速で1時間半ほどの距離です。地中海にある建物をイメージしました。結構広く60坪はありそうな立派な家です。玄関ホールもリビングも天井までの総吹き抜けです。
マイホームと言うよりは小さなペンションといった感じです。二階の廊下部分が僅かに回廊を思わせる作りになっていて、贅沢な雰囲気を醸しています。二階の一角に12畳程のオーディオルームがあります。床、壁、シーリングレスの屋根、それら全てが無垢材です。だから、太い梁も丸見えです。
その中で特に興味深かったのが床材です。工事現場で使う足場板を使っていると聞かされ、これには一本取られました。話声がとても自然だから、響きの美しい音がするだろうなと想像します。強いて懸念材料を上げるとすれば、左のスピーカーの面から右のスピーカーの方に向かって片側勾配になっている点です。
しかし、クリニック後はそんな問題点は一切無かったほど素晴らしい音になりました。当初は天井の高さの割に音が上に伸びていないし広がりもありませんでした。むしろ音像はスピーカーよりも下に向いていました。しかし、スピーカーのセッティング位置は悪くはありません。もうちょっと鳴ってくれても良いのに?! といった感じの鳴り方です。
FE208ES-Rには強烈な方向性があるので要注意
細かい音の分析を脳内コンピューターに掛けると、スピーカーユニットの取り付け方向に問題がある事が判明しました。FE208ES-Rはヒトデのような形状のプレスがコーン紙に施されています。取扱説明書にある写真と同じ方向に付けると、音が全部下方に向いてしまうのです。これが一番大きな問題でした。
FE208ES-Rを使った自作スピーカーの方は、騙されたと思って上下を反転させてみて下さい。音場が一変します。5の星のパターンの凹凸が付いているので、マグネットのエネルギーの力による方向性よりも、その形状による方向性の方が上回ってしまうのです。特にドームツイーターにも縦方向のプレスラインが入っているので、上下に強い方向性が出ます。
元の状態 | 上下反転 |
もう一つ細かい所では、4つのユニットの相性から見たペアリングが良くありません。4発とも箱から外し、並べ替えながら内・外の向きが整うようにして組み替えました。左チャンネルの外側のユニットと右チャンネルの内側のユニットを交換しました。
左から見ると1,2,3,4を3,2,1,4としました。この理由は左チャンネルの1と2は互いに向き合っていて、右チャンネルの3と4は互いに背を向けていたのです。下は向いているし、左右はぶつかり合いと反発の関係なので、これ以上の悪い組まれ方はありません。エネルギーの方向性による差がここまで大きく出るユニットに初めて出会いました。
分解作業をしながらスピーカーの加速度組み立ての魅力と効果をN.Sさんに説きます。商品はあとからでも買えるけど、私の技術はこうして訪問している時しか出来ません。「ローゼンクランツ製品の何を買うよりも価値があります! と言って説得し、加速度組立を敢行することになりました。
自作スピーカーという事もあり普通より安くさせて頂きました。全部のネジとワッシャの裏表の響きの方向もチェックした上でペアリングを取りました。こだわりに拘ったスペシャル加速度組立を施しました。
現金なもので、これを是正しただけで一気に音は部屋中に充満し始めたではありませんか。何事も原因なくして結果なしです。音を聴く前に危惧した左と右の天井高の違いが気になって来たので、これは困った! と更に音を分解して行くと、左のスピーカーの音の繋がりが悪い事に気がつきました。
ホーンツイーターのエネルギーの方向性が下向きになっているのです・・・。これでは低い音から高い音へと波動が伸びて行くはずがありません。180°向きを変えてやると更に音の響き具合が良い方向に化けました。
カイザーの「音のカラクリ」が自明の理として音に現れた瞬間です。
この時点で腕による音のクリニックは粗方終了です。
電源ケーブルとスピーカーケーブルの試聴
次は電源タップに繋げている電源ケーブルを試聴して貰います。AC-RG2の新型です。値段は据え置きの84,000円です。繋ぎ変えた瞬間にそれはまるで別世界と言っても大げさではないほど素晴らしい音楽に変身しました。
ローゼンクランツの電源ケーブルは世間でとても評判が高いですが、それを証明するかのような見事な音像と音場を描きます。悪乗りついでにスピーカーケーブルもSP-Maximum #340も繋いで聴いて貰います。
ご本人は自分の自作のスピーカーが信じられないほど凄い音に変わって行くので、その流れに気持ちが付いて行かなくなりつつあります。それもそのはず、自作の箱はと言うと、30年前の高校3年生の時に初めて作った物だそうですから・・・。
それが、どこのどんなスピーカーよりも素晴らしい音を奏でている現実が今ここにあるのです。そんな事が現実に起こる筈がないし、若しそう聞こえたとしたら、自分の耳がおかしいのだろう? と思っても不思議ではありません。むしろそれが普通の思考パターンですから。
名だたるメーカーが作った物よりブッチギリでイイ音を奏でているのですから?! これがこの場での現実に起こった事です!
そんな訳で、何の衒いもなく試聴した2本のケーブルは即買となりました。
今日の勝利は、部屋が全てです!
この部屋あってのこの音です!
勿論カイザーのセッティング技術もあっての事です!
高額なオーディオ機器だけで鳴るものではありません!
どこの部分が点数を稼いでも構わないのです!
音楽の魅力度、満足度に到達しさえすれば良いのです!