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ヘッドホンATH-W2002のモディファイ

-----Original Message-----
From: info@rosenkranz-jp.com
To: C.Y
Sent: Sunday, March 4, 2012 14:07 PM
Subject: ヘッドホンATH-W2002のモディファイ

貝崎静雄様

初めてメールさせていただきます。
以前カイザーサウンドのホームページで
ヘッドホンのモディファイの記事を読んだことがあるのですが、
今でもやっていただけるのでしょうか。

 オーディオテクニカのATH-W2002という製品を所有しているのですが,
30分位聞いていると耳が痛くなり,
長時間聞くことができません。

通常のステレオも持っているのですが、
時々、大音量で聞きたくなる時があり不便を感じております。
ご教示いただければ助かります。

C.Y

----- Original Message -----
From: info@rosenkranz-jp.com
To: C.Y
Sent: Monday, March 12, 2012 17:10 PM
Subject: ヘッドホンATH-W2002のモディファイ

C.Y様

 昨日ヘッドホンを受け取りました。

 早速今日1時間ほどかけて、オープンリールテープのFM放送仕様である2トラ19cmの音源で聴きました。これは情報量が多く安定感抜群のソフトですから仰るほどのストレスは感じませんでしたが、30分程で次第に違和感を覚えるようになるのは間違いありません。デジタル音源でしたら仰る症状は顕著です。


ATH-W2002の解析は終わりました

 しかし、この2002はW5000よりも音色的に魅力が随分優れています。あさだ桜と黒檀の響きの差でしょう。ケーブルもW5000のゴム系のシースと違って布なので、音楽エネルギーの流れが大変スムーズです。

 私の数少ないヘッドホンの体験の中に於いて、トータルバランスは群を抜いて素晴らしいと思います。今後これを超えるヘッドホンが出現するかどうかの可能性を考えると、今回のモディファイは予算を圧縮するどころか、増やしてでもやるべきだと思います。これが私からの助言です。とにかく音色がとても魅力的です。


大きな問題点は二つあります

 1.ストレスを感ずる原因は、左右SPユニットのエネルギーの方向性が真反対である点にあります。右は前から音が来るのに、左は後方から音が聞こえます。この問題点を理解しているメーカーはありません。

 2. 3メートルというケーブルの長さが、リズム感やテンポの面と周波数バランスを良くない状態にしています。


ご提案

 ユニットのエネルギーの方向性を揃えるのは、この固体に於いては必須です。それで聴き疲れはしなくなります。長さの修正でリズム、テンポ、周波数バランスも解決します。長さの修正時にプラグは別の物と交換するか、前の物を使うかの判断があります。

 作業としては新しい物に交換する方がやり易い面はあります。音と両面を考え折り曲げたり戻したりのストレス等を考え、最終的には任せて欲しいところです。

 作業的にSPユニットの加速度組み立てという、モディファイに於ける一番コストが掛かる技術が入りますので、見積りを圧縮するのは困難という判断になりました。

 1.と2.の技術で最低で63,000円は必要となります。音楽の陰影や抑揚表現等、芸術性項目までやろうとすると、お見積りは84,000円になります。

 それでは、ご検討賜りますようお願い申し上げます。

 カイザーサウンド
 貝崎静雄

 追伸
 今週末は近畿への出張がありますので、
 お届けまでには2週間ほど掛かりそうな状況です。

-----Original Message-----
From: C.Y
To: info@rosenkranz-jp.com
Sent: Tuesday, March 13, 2012 23:36 PM
Subject: RE: ヘッドホンATH-W2002のモディファイ

 貝崎様

 早速の解析ありがとうございました。
 左右の音の方向性に違いがあるなどと全く思っておりませんでしたので(近接距離での音場空間なので)、驚きです。

 以前エンゼルポケットで貝崎様の加速度組立のデモを拝見させていただきましたので、スピーカーの音の出る方向性に違いがあることは理解していましたが、イヤーパッドという狭い空間で、そのことが違和感の原因になっているとは全く思っておりませんでした。

 又、貝崎様のご助言通りこのヘッドホンの音色については、全く同意見で大変私好みなのですが、買ってから10年、違和感が原因でこの機器をあまり使用しておりません。

 当初予想していた予算を越しましたが、貝崎様に全ておまかせいたしますので、この先長く使用できる最高の機器に仕上げていただければと考えますのでよろしくお願いいたします。

 C.Y


モディファイ開始

ヘッドホンに採用されているケーブルの長さをテクニカのウェブで調べてみると、どの機種も3mのようですが、これが最悪です。3mという長さは、どんな音楽を聴いても抑揚感が乏しく平板で一様です。

写真にありますように、音楽性の高い長さの場所をマーキングし、音の良い順番に1,2,3,4と番号をつけました。一度切ってしまうと元には戻せませんので、そこのところは慎重に行わなければなりません。集中力を研ぎ澄ませ音楽表現をイメージして導き出したポイントです。

カイザーサウンドの強みは、正にこのシュミレーション力にあります。この正解率の高さは半端ではありません。この波動コントロール技術のお陰で、設計段階に於ける試作数を大幅に減らす事が可能となります。

この領域に至るまでには、長さの違いによって生じる音の変化の傾向を掴み取ったデーターと統計の賜物なのです。メーカーの皆さんは機械という測定器で計りますが、私の場合は音楽を人間の脳が感ずる認知学として測定しているのです。

そもそも音楽とは人間と人間の間で交わすコミュニケーションの一つです。その部分を測定器に頼らなければならないのであれば、見合いの相性も結婚相手も測定器で測って決めるという事になりかねません。私にとってはオーディオ製品の設計も、普段の人間社会のありようと同じスタンスで捉えています。

柔らかい皮製のイヤーパッドを外そうとして破ってしまいました。購入後10年ほど経っていたので弱くなっていたのか? 縫い目のミシン穴の部分にそって切手を切り離すように簡単に破れました。

弁償しなくてはいけません。テクニカのサービスセンターに電話で問い合わせると部品として在庫はあるし、価格も左右で5,250円と予想以上の安さです。どの程度の力で破れるのかが分かったのは不幸中の幸いでした。

ATH-W2002の欠点であるアタックとリズムの弱さを改善するには、ケーブルの長さの調整で解決を計りました。柔肌のような絹のケーブル外皮であり、あさだ桜のハウジングキャビ、そして木製のプラグに金メッキプラグ・・・。これでもかと言うほど、柔らかく雅(みやび)な音の素材のオンパレードです。

音に若さとみずみずしさを注入する為に、ローゼンクランツの電源ケーブル用に開発した緑とオレンジ色のネットをかけてやりました。又、過ぎたる雅(みやび)さを減じる為に敢えて金メッキプラグは使わずシルバー色のプラグに変更しました。

これで完成です。

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