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その1 「立たないミラクルサウンド・スクリーン」 |
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「さぁー!、ミラクルサウンド・スクリーンの組み立てです」。 必死になって組んでいる横で、 「つっかい棒が無くて立つの?」と妻が心配そうに聞いて来る。 「立つよー!、平面でなく、屏風のように波状にするんだから」。 「いいや!、立つわけ無いよ」。と縁起でもなく、いやに自信たっぷりに言う。 「まァ!、出来上がった物を見れば分かるから」。と、こちらは相手にする様子も無く組み上げるのに必死です。 |
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当初の予定通り11本を一組として組み上げて行きます。 「結構重たいネェ〜」と言いながら、K氏と二人でラックの奥に持って行き、いざ立てようとしますがぐらぐらで立ちません。 「ほれ!立たんでしょう、ネっ!、立たんと思った!」。 ・・・女から立たんでしょう、と言われるほど情けないことは無い。 設計する当の本人は、あの薄い屏風が立つんだから、間違いなく立つものと思い込み、これっぽっちも疑うことなどしませんでした。ヒモで縛って連結する方法では、グラグラ動いてしまって、カチッとならない為に立ってくれませんでした。 全てを否定されたようで、「もう!目の前は真っ暗です」。こうした敗北感を味わうのは久し振りです。 今日のところは仕方ないから、とりあえず立て掛けて音を聴いてみる事だけにしよう・・・。思い直して、残りの11本分を組みます。少し重い足取りで背面のガラスの所に立て掛けるのですが、同じ物がさっきの倍の重さに感じてしまうのはどうした事でしょう?。 |
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細かいセッティングはそこそこに、久し振りに機器に電源を入れるので随分と緊張します。何事も無く順調のようなので、少しホッとしました。「さて、初めてかける記念すべきディスクは何にしようか?凄く迷います」。選別されたディスクが入ったデモ用のバッグから取り出したのは「ナット・キング・コール」です。 「声の魅力」、「歌の上手さ」、「愛情溢れる人柄」、そして、何よりも「生きた生身の人の声」を如何に表現する事が出来るか?、一番に聴いてみたくて選んだものです。恐る恐るアンプのボリュームを上げていきます。すると、バラバラの音ではありますが、今までに聞いた事の無い音が出ているのに気が付きます。 ケーブルは作りたて、ナイアガラも新品、スピーカーのセッティングも大ざっぱなものです。そんな中から期待の持てる音が出て来たのはひとまず上出来といったところでしょうか。音を聞きながら次はコーナー用の7本組みを作ります。そうしている内に見る見る音が良くなって来るのが確認出来ます。 出来上がった物を左のスピーカーのコーナーに丸めて立て掛けます。するとどうでしょう?、途端に右側から音が聞こえなくなったではないですか。それぐらいエネルギーが違うのです。2dBは違うでしょう。こうなってくると、私の耳が俄然研ぎ澄まされ、顔色が変わって来るのが自分でも分かります。 |
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スピーカーの真ん中に頭を持って来て、真剣に片方づつ音の違いを確認します。すると、まるっきり!音の魅力が違うではありませんか?。 「これは大変な事になったぞ!」。 急いでもう一つの方も作り、左右揃ったところで出て来た音はと言うと?『正に生音そのもの』と言っていいでしょう。 これだけの音は、私もステレオでは初めて体験する音です。 「この音を求めて、みんな必死でやって来たんだ!」。という音を今出す事に成功した瞬間です。 「音の消え際の何と美しいこと!」。それも情報量が桁外れに多いのです。またひとつ、音のカラクリを見つける事に成功したのです。この事はこれからジックリと仮説を立てて検証して行きたいと思います。 |
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この音を聞いた妻が言った言葉は、「これは売れる!」でした。 「5本もダメ、11本もダメ、絶対7本のもの!」。と嫌に今日は自信たっぷりに言うのです。 確かに7本組みは美しい。 しかし、このままでは売り物になりません。このサウンドスクリーンがシッカリと自立出来るように考えなくてはなりません。色々とアイデアが出て来て、先程までの冴えない雰囲気はどこにもありません。いい音が出ると、こうも人間て変わるものなのでしょうか?。 |
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