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その7 「150キロのボールでも、私にはスローボール」


 ミラクルサウンド・スクリーンのお陰でしょうか?、中音以上は申し分ないのですが、床に逃げて行く音が気に入りません。広島の店舗には、振動の横綱である床材のサウンドフロア−を施工しておりますので、その事には申し分ありません。その分コンクリートとカーテンで調整している空間の音には、音質として魅力に欠ける所があります。一番の理想はその両方の良い所が合体すれば何より申し分ないのです。

 今回のミラクルサウンド・スクリーンによる空間の音響処理があまりにも抜きん出ている為に、その生き生きとした音に床の振動処理が今一歩、いや、今ニ歩ついて行かないのです。現時点ではどうする事も出来ないので、簡易型のサウンドフロア−が出来るまで待つしかありません。

 まったく同じシステムを東京試聴室に持ち込んだのですが、その音の傾向として、低い音のエネルギーが圧倒的に弱く物足りません。スピーカーの口径の大きさに頼って低い音を出すという考え方ではやって来ておりませんので、ちょっとした事でバランスが狂ってしまうのです。

 安易な対処療法的な方法で事を済ますと、その場は一応解決したかのように見えて良いかもしれませんが、高度なお客さんの所へ行った時にいっぺんにメッキが剥がれ通用しない事は見え見えです。そうした事は「もう、絶対にしない!」と不退転の決意で10年前から物事に挑んでおります。

 こうして、「振動の時間軸」の問題、「電気の時間軸」の問題と解決して来ますと、あとは、残された「空間の時間軸」との融合が問題となって来ます。あせらず、一つづつ地味な研究を行っておりますが故に見えてくる問題点なのです。

 気の遠くなるような諸問題をコツコツ解き明かしていくのですが、こんな事を一つの会社の中でやらしてくれと言っても100%許可は下りないでしょう。だから、すき間のまたそのすき間のような仕事は、私のような立場の趣味人にしか解決出来ないのです。また、何にもまして大事な事は、あらゆる方面からまんべんなく、また、バランス良くという事が一番要求されます。

 その独特の感覚というものは、色々な音を聴いた時にすぐさま体が反応するようになっております。普通の人にとっては、とても速いと思う150キロのボールでも、私にはスローボールのように見えるといったら分かってもらえるでしょうか。


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