カッパのテストレポートを書こうとデスクに向かったが、確かな感触を得ていないせいかペンが進まない。元々デスクワークは好きでなく、根っからのアウトドア派なのである。
これは走るしか無い! と思って、
深夜に車庫からカッパを駆り出す。
飼い主が変わってから、カッパはずっと筋肉痛との戦いだと思う。しかし、もうろくしたままお迎えが来ようとしていた事を思うと、厳しい愛情を注がれるのも新たな幸せではないだろうか・・・。
ウミガメのように月の満ち欠けが影響するのか、このところは深夜に頭が覚醒するようだ。次から次へと走りの変化が脳に細かく刻まれるのが分かる。先ほどとは雲泥の差である。
流れに乗って走っていると信号が変わった。ブレーキの踏力を強めて行くと、回転音が「フォ〜〜ン♭♭」と、明瞭な音程を伴って落ちて行くのが分かった。
諸々の不要共振と思しき混濁が取れ、
魅力あるエンジン音へと変貌した!。
音の引き脚が速くなった!
引き脚が速いと、それに伴い伸び脚も良くなる。
今回は三つの事を同時に試みたので、どの部分がどんな風に寄与しているのかは特定出来難いが、複合・難解な音のメカニズムやその関連性を紐解くのが本業なので、私の閃きや勘はよく当たる。
それにしても、プラグ交換の効果は凄いものだ!
先日のボディーアースとの相乗効果もあるのだろう・・・。
Quick Response4はエージングが捗ると、
素晴らしい性能を発揮し始めるからだ。
オーディオに於けるインピーダンス・マッチングの良い時の印象とよく似ている。こうした状態を業界では分解能が良くなったとか、S/Nが良くなったと言う。悪い状態の中でも、一番多いのがバスドラとベースの音の区別がつかない状態だ。ボーン、ボーンという鳴り方は、楽器ではなくスピーカーの音としてしか脳が認識出来ないのである。
勿論、エンジンの吹き上がりも格段に良くなったのは確かだ!
アクセルペダルと接する足裏の感触が変わったのが明らかだからだ!
踏むも弱めるも、今までと何ら変わらないのに・・・
吸盤が吸い付いたかのように・・・
ペダルが足裏から離れないのである!
シリンダー内での爆発タイミングの不揃いが改善されたからだろうか・・・?
とにかく、車がシャクらなくなった。
走ったのは、首都高の銀座線からレインボーブリッジを渡るルート。枝川で一旦降り、そこからは一般道の湾岸を千葉方面へ向けて走った。何年も工事中だった新木場の高架道路が完成していた。湾岸エリアは日に日に新しい道路が出来ている。
普段から同乗者に優しいアクセルワークを心掛けているので、
嫌というほどの違いとなって分かる。
だから、もっとデリケートな所がないか?
足裏とつま先がペダルとの塩梅を探り合っているようだ。
僅か後方へとシートを下げたのが良かった!
微細な触知が脳細胞に記された瞬間であった!
この初々しさこそが宝なのだ!
妙なる当たりが得られた!
ひらめきは脳を刺激し成長させる力を持っている!
ステージが一段高くなった事で、
デリケートな指先の使いこなしを、
足裏自身が欲するようになったとも言えるのか・・・?。
これは教えられて出来るものではなく、
本能が身に付けた動きであろう・・・
誰もが持っている幼い時の冒険心が手にした感動のように・・・
彼らの輝く目がそう物語っているではないか・・・
帰りは敢えて信号の多い国道14号、いわゆる千葉街道を通った。町並みに沿った道路は人の暮らしと共に出来上がったもの。曲がった道路がとても自然だと気づかせてくれる。人通りの多い時だと要らぬ神経の為気付くことは無い。現代は情報過多が生み出すストレスで一杯なのだ。
夢を運ぶ夜の街を走るのは良いものだ!
生きている喜びを再認識させてくれる!
前後に車は一二台しかいないので、とても気持ちよく走れた。信号の度にアクセルワークを変えて走ってみた。私の意図を汲んでくれてか、ランチアは健気な走りを見せるのである。
生きた馬の如く意思疎通が出来たかのようだ!
思わず嬉しくなって来た。
残り3本のスパークプラグ交換が待ちきれなくなった。
長い今までの車との付き合い方と言えば、車検時の点検修理、あるいは故障や変調を来たした時のみに対処していた消極的行為であったのだが、今回は、ここをこうしてやったらもっと良くなるのではないか?! 目的を持った積極的行為である。
愛情のかけ方が大きく違うのである!
以心伝心は人も物も全く同じだ!
オーディオに対する私のアプローチは常にそうである!
だから、やっていてとても相性が良いのである!
向いているベクトルが同じだからだろう・・・
車の調教がこんなに面白いとは、新発見である!
お陰で本当に若返った!
目標は、”キズナ”の、この走りだ!
これを、「音の加速度組み立て」の中にどう活かすか?!
さぁ! 世界一の音を目指して頑張るぞ!!