瀬戸内の魚を食べ慣れている自分にとって東京で食べる大味な魚に満足出来ず、いつかは瀬戸内の最高に旨い魚を食べたいとの思いが捨てきれず、2年ほど前から機会があったら泊まり込みで行ってみたいと思っていた宿が今治の大島にありました。
その旅館の名は千年松といって、日本一潮の流れが速いと言われる来島海峡で獲れた魚を腹一杯食べさせてくれるという触れ込みでした。今回の松山への里帰りには私の姉も一緒です。彼女は胃を全摘出していて本当に小食です。それが驚くなかれ出てきた10種類の魚料理をぺろりと平らげてしまったのです。
鯛、ヒラメ、ウニ、アジの刺身
伊勢えびの姿刺身、
鯛の塩焼き、
メバルの煮付け、
アワビの姿焼き、
ハゲの唐揚げ、
伊勢えびの味噌汁、
鯛めし、
思わず「お前の無いはずの胃はどうなっとんのか!」と言ってしまった。その量たるや健康な私がやっとの思いで食べられたほどです。何故彼女がそれだけ食べれたのかというと、釣り気違いだった父はしょっちゅう釣りに出掛け、新鮮な瀬戸内の魚を私達に食べさせてくれたものです。
幼き脳の奥深くに刻み込まれていた数十年前の記憶と今回の魚の味とが一致したから、昔の健康だった時の胃が一時的に蘇ったとしか思えません。正に姉にとっては”最後の晩餐”だったのでしょう。二人で「小さい子供の頃を思い出すね」と言って、無き父を偲びながらのほのぼのとしたひと時でした。