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赤い屋根の喫茶店

広島市内が一望のロケーション

市の処理場へ大型ごみを持ち込んだ帰り道、折りしも台風6号が接近している時に、「赤い屋根」という名の喫茶店へ行った。今回で2度目である。

安佐南区の毘沙門台という小高い山の中腹にあり、その恵まれたロケーションは広島市内が一望出来る。特に天気の良い日には海軍兵学校で有名な江田島まで見えるそうだ。


母性の聖地

ママさんは私より少し上だがとても若く見える。"赤い屋根の喫茶店を持ちたい!"というのが若い頃からの夢だったそうだ。その自己実現が叶った中での毎日だから輝いているのだろう。

何より一番驚いたのは、その店内の清潔さと爽やかさだ。きれいな雑巾掛けはとても気持ちが良い。窓の敷居の真鍮レールがピカピカに光っているのだ。私の妻も掃除好きで、部屋に埃が落ちていた事はただの一度も無いが、その上を行くほど隅々にまで掃除が行き届いているのである。

毎日磨かれている窓ガラスほど気持ちのいいものはない。外の景色を撮っても、窓越しの方が更にきれいに感じるのである。鏡は心を写すとも言われるが、鏡は透明ではありません。だから赤い屋根のガラスは鏡以上の透明な鏡なのである。

昨今では、掃除済みのサインボードを大型店でよく見かけるが、そんな義務を果たしたと言わんばかりの掃除とは雲泥の差なのだ。日本全国から赤い屋根のような本物の店が減って行くのを見るのは寂しいものがある。だから事の他赤い屋根でのコーヒーのひと時は何物にも代え難いのである。

母性の聖地と言っておこう


赤い屋根は奇才今中敏幸による設計

開業は1979年カイザーサウンドと偶然にも同い年なのだ。それも親近感を感じる要素となっている。その赤い屋根の建築時にまつわるエピソードを聞いてまた驚いた。その設計をした方は今は亡き今中敏幸という建築家で、自然の木を活かした家を広島市の北部を中心に40軒ほど残した奇人として有名だったようだ。

"赤い屋根の喫茶店を建てて貰うのはこの人しかいない!"と、その今中氏の作る家に彼女は惚れていたそうだ。気に入らないと何度でもやり直すほどだから、オーバーする事はあっても予算内で収まる事はないらしい。

赤い屋根でも同じ事があったそうだ。
「私も覚悟を決めた!」、
「持参金を崩してでも払うから!」、
「気に入るようにやって頂戴!」と、タンカを切ると。

『あんたにゃ負けた!』、
『最初のままでええよ!』と言って、
それ以来一度も値上げの事は口にしなかったという。

まるで"緋牡丹お竜"のようではないか。


喫茶店のBGMとしては過去最高の音

目の前にはトルコ桔梗の花が活けてある

煎ったばかりのコーヒーの香り

窓越しに見える青々とした木々

そして広島の町並

店内にはアダージョ調の音楽がゆっくりと流れている

この音量、全てがジャスピンなのである

計算され尽くした空間

至福のひと時である

この選曲はどうして出来たのだろう?

素直な疑問が湧いたので尋ねてみた

「ママさんの好きなディスクを3枚選んで頂けますか?」

迷う事無くカウンターの上に出してくれた

「それぞれ1曲目を掛けて聞かせて下さい」

不思議な事に3枚とも全く同じゆっくりとしたテンポの曲だったのだ。曲は勿論、演奏者も楽器の構成も違う、しかし全く同じフィーリングなのだ。

悠久のメロディーは癒しそのものである

自分にとっての最高の物をそのまま分かち合いたい

それが彼女にとって至福のひと時なのだろう

平和都市広島にこそ相応しい

広島の地でこそ味わえるこの喜び

被爆者の慰霊のようにも聞こえる

音楽の力は偉大である

ステレオ屋をしていて良かったと思える瞬間である


http://yogananda.cc/daily/you/akaiyane.html

731-0152
広島市安佐南区毘沙門台2-4-3
営業時間:10:00〜20:00
TEL:082-879-3006 定休日:金


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