道後温泉本館神の湯へ久し振りに行きました。私にとっての神の湯は青春そのものです。ここは高校二年秋から三年夏までの一年弱、野球部の同級生の家である下宿先から毎日通ったお風呂だからです。
その彼は1年の夏から3番に抜擢されるほどバッティングが素晴らしかったのを思い出します。 大学でも西武の監督にまでなった伊原氏と良きコンビだったと聞かされていましたが、海外の家電工場の社長として赴任して間もなく、意識を失って倒れそのまま帰らぬ人となりました。
彼との思い出が湯船の中で瞼に蘇りましたが、湯気とも涙とも区別のつかない蜃気楼のような霞んだシーンでした。午後の授業をサボって道後の湯から赤い顔をして戻り、「いい湯だった!」 と授業中に茶化してみたり思い出は尽きません。
その彼の家は道後温泉とは目と鼻の先で、距離にして300mほどの多幸町というところでした。まさか50年後にお得意さんと一緒に神の湯に入るなんて思いもしませんでした。感慨深いものがあります。
当時の入浴料が幾らだったかは忘れましたが、毎日入っていた事を思えば普通の銭湯と同じ位だったと思います。現在の入浴料は400円ですから一般の銭湯と変わりません。浴衣を貸してくれてお茶と煎餅が付く二階の神の湯は800円です。入浴後に大広間でくつろげるので迷う事無く二階にしました。
窓の外は洗面具の入った竹籠を片手に傘を差し、浴衣姿で神の湯へ向う人達が目に留まりました。この日は小雨だったので特に情緒がありました。柱、鴨居、手摺、簾・・、どこをとっても無垢木なので癒されます。日本人である事を意識する瞬間です。
風呂の中はすべて粗めの伊予御影石で出来ているので、足の裏は勿論身体全体から心地良い刺激を受けます。そのざらっとした肌触りと正反対のすべすべした湯質のコントラストが神の湯の真骨頂です。
最後に掛かり湯をしても石鹸が取れていないのでは? と思うほど神の湯は肌がすべすべします。浴衣で時間一杯ゆっくりしましたが、芯から温まっているので湯冷めしません。
極楽! 極楽!
道後温泉旅館協同組合HP
http://www.dogo.or.jp/pc/honkan/
湯上りは温泉街を土産物店を眺めながら旅行気分を満喫します。道後温泉駅が見えたところで土産物店が並ぶアーケード街は終わりです。
この後は、来島海峡の千年松へ向います。