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井上良治さん宅訪問


 新鮮な事に出会えるかな?

 スピーカークラフトを得意な分野としている、井上良治さんのお宅へ行ってきました。

 「こんな素材はオーディオに使えませんか?」。

 といった働きかけが、この最近、色々な業者の方から多いものだから、

 「興味があったら一度見に来ませんか?」とお誘いを受けたのです。


 人工皮膚に似た素材

 数年前にも一度お邪魔した事がありますので、今回が2度目の訪問ということになります。前回はJ.B.Lを中心とした大型マルチウェイのシステムを上手くバランスよく鳴らされていたのが印象に残っていました。

 先ず今回興味があったのは新素材です。見せて頂いたのは医療分野で使われているゼリーのようなゴムのような物です。これを使うと床ずれしなくなるのだそうです。なるほど、触ってみるとその感じが人間の皮膚によく似ています。

 しばらく加えられた力の状態のままを保っていて、次第々に時間を掛けて戻ってくるのです。どうやら、ここに秘密があるようです。ゴムやバネのように、相手がどうであろうと加えられた力の反作用で相手構わず反発したりしません。


 人間で言えば、口ごたえをしない、従順で聞き分けの良い優しい子といったところでしょうか。おそらく、この素材を使うと優しい音になるのではないでしょうか、それも”心のこもった優しさ”一杯の音に。

 インシュレーとして色々と研究した試作の数々を見せて頂きましたが、これはもう他から製品として発売する予定だからカメラに収めるのは勘弁してほしいとのことです。それでも、素材その物はこうして見せてもらいました。


 新たなスピーカー理論

 しかし、私の関心を引いたのはそうした素材ではなく、相変わらずスピーカークラフトに精を出されていて、小型のわりに素晴らしい低音を再生するスピーカーでした。以前にもヘルツホルムの原理を利用した、高さ2メートル以上はあろうかという煙突型のスーパーウーハーを聞かせて頂いたことがあります。

 そうした一連の研究の成果から生まれた物だとおっしゃる。ホーンという物は音を大きくする為に開発されたのだが、低い音を出そうとすればするほど、限りなくホーンの開口部を広くしなければならず、家の壁をぶち抜くような気違いじみた事になり一般性に著しく欠けるので、井上さんはそれには限界があると言い切る。


 目的は如何に効率よく空気を動かすかであって、周波数に関係する波長の問題よりも、むしろ流体力学の方が大事だという説を唱える。極論だが、逆ホーンのように空気を圧縮する方向のほうが、小さくても効率よく力のある低音を生み出すのだと。

 試行錯誤の中から分かってきた事で、もっと正確に位相合わせをすれば、今聴いてもらった音よりも素晴らしい音を作る事が出来るまでになったともおっしゃる。これからが、さらに楽しみになります。


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