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三権分立中の1.8権を事実上官僚が握っている

以下は大蔵省時代、"ミスター円"というニックネームで世界に名を馳せた榊原英資氏が、民主党よ大人になって官僚使えと苦言を呈したものです。

実際のタイトルは、「青山学院大学教授・榊原英資 民主党よ大人になって官僚使え」です。

その内容の中で、私が一番注意して理解して欲しい部分が以下の内容です。政治家が法律を作ると思わされているようですが、実は行政府である官僚が立法府の仕事の殆どをこなしているのです。暴論と非難される事を承知で言いますと、日本という国は、事実上官僚による社会主義国家状態なのです。


法律についても、成立する法律の9割近くが政府提案。各省の担当部局が内閣法制局などと詳細をつめた上で国会に提出するのです。もちろん、最終的に決定するのは、国会であり国会議員ですが、ここでも事務局は各省庁。担当部局が党の有力者などに根まわしをし、党の主要機関の決定を経て、国会に提出するのです。


2011.6.16 02:45 MSNニュース

官僚中心で作る予算と法律

「政治主導」というのは、民主主義体制の下では、ある意味で、当然のことです。選挙によって選ばれた首相や大臣が国の政策の基本を決め、それに従って政治・行政を動かしていくということなのですから…。しかし、そのあたり前のことが、政権交代をした民主党、そして菅直人政権の主要な政策課題になっていったのです。

たしかに、日本の場合、官僚の果たす役割がアメリカなどに比べると大きいようです。政治家の主たる仕事は予算の編成と法律の制定です。しかし、予算の編成は財務省主計局が事務局となり、政治家もかかわるものの、12月には政府原案として財務省がまとめ上げます。

もちろん、閣僚や主要な政治家の意見は取り入れられますが、アメリカのように、予算の一つ一つの内容が議会で審議され、成立するわけではありません。あくまで、パッケージとしての財務原案・政府原案なのです。

法律についても、成立する法律の9割近くが政府提案。各省の担当部局が内閣法制局などと詳細をつめた上で国会に提出するのです。もちろん、最終的に決定するのは、国会であり国会議員ですが、ここでも事務局は各省庁。担当部局が党の有力者などに根まわしをし、党の主要機関の決定を経て、国会に提出するのです。

筆者も官僚の時代、いくつかの法律の作成に中心的に関与しましたが、客観的に見て、日本では、法律は政治家がつくるというよりも、官僚がつくっている部分が多いのです。もちろん、政治家の合意がなくては法律はできませんが、詳細をつめるのは官僚たちです。


日本の政治家は選挙のプロ

実は、この日本的特殊性の背景には、日本の政治家の欧米にないバックグラウンドがあります。例えば、アメリカ連邦議会議員の前職の35%は法律の専門家であり、ドイツの議員の前職の32%は上級の国家公務員です。つまり、欧米の政治家の多くは法律や行政の専門家なのです。

片や日本。国会議員の前職の27%は地方議会議員、20%は政治家秘書、8%は政党役職員です。つまり、日本の場合、国家公務員や法律専門家とは別に政治家という職業が存在していて、特にここ10年ほどは、政治家を目指す人たちは若い時から、選挙の世界に入っていくのです。

日本の政治家の多くは、選挙のプロではあっても、法律や行政の専門家ではないということなのです。かつては池田勇人や佐藤栄作のように事務次官や局長から政治家になるケースが少なくありませんでしたが、近年は若くして選挙に出ないと、当選し辛い状況になってきています。

日本の選挙は個人後援会が中心になって仕切りますが、その後援会を早いうちから固めておかないと、なかなか当選できないのです。最近でも官僚から政治家になる人たちはかなりいますが、大半が課長になる前に役所をやめて選挙に出ています。

どういう人たちが政治家になるべきかについては様々(さまざま)な意見があるのでしょうが、筆者は民間企業や官庁で幅広い経験をした人たちがもっと政治家になるべきだと思っています。

最後に政策を決定し行政を仕切るのは、政治家です。その政治家の多くが、選挙の専門家ではあるが、他の分野の知識がないということではどうしようもありません。例えば、イギリスのように党中央の力を強くして、政策に長(た)けた専門家をいわゆる「セーフ・シート」(党が押せば必ず当選できる選挙区)から出すようにすべきではないでしょうか。


政官協力で真の「政治主導」を

池田勇人、中曽根康弘、田中角栄、宮沢喜一などかつては経験豊かで高い見識を持った政治家が少なくありませんでした。残念ながら、現在ではそうした政治家は皆無とは言いませんが、かなり少なくなっています。個人後援会中心の選挙が厳しくなっているのも一つの原因ではないでしょうか。

「政治主導」はあたり前のことですが、政治・行政は官僚機構をフルに稼働させなくてはうまく機能しません。野党の時ならともかく、与党になっても「反官僚」、「脱官僚」などと言っていてはどうしようもありません。官僚たちは政治家の手足です。手足が動かない状況で思いつきをいくら言ってもどうしようもありません。

民主党ももう少し大人になって、官僚をどう使っていくのかをもっと真剣に考えるべきでしょう。日本の公務員は、人口千人当たりで先進国では最も数が少ないのですが、優秀です。明治以来、日本の「The Best and the Brightest」のかなりの部分は官僚になっています。政治家と官僚ががっちり手を組んで協力してこそ、本来の意味での、「政治主導」が実現できるのではないでしょうか。榊原英資(さかきばら えいすけ)

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