トップ情報日本国民は日本という国をどんな国にしたいのか?>中国「ミサイル撃ち合うだけが戦争ではない」資源侵略に対抗せよ…「水」「メタハイ」「都市鉱山」「人材」日本は“資源大国”なのだ

中国「ミサイル撃ち合うだけが戦争ではない」資源侵略に対抗せよ
…「水」「メタハイ」「都市鉱山」「人材」日本は“資源大国”なのだ

2014.2.11 MSN[国際ビジネス]

「人」も資源

前回、日本期待の資源「メタンハイドレート」に少し触れましたが、日本に限らず各国にとって、「資源」というのはとても重要な要素なので、ここに改めて述べたいと思います。

資源というと、つい石油や鉄鉱石とか、希少鉱石などを想起しがちで「日本は資源に恵まれていない」と思う人が多いようですが、手元の「大辞林」をめくると「産業を支える全ての要素のこと」とあります。つまり、「労働力や開発技術力、デザイン力などのインテリジェンスを含むヒトそのもの」も資源の一つであり、突き詰めれば、「与えられた天然自然物をいかに産業に生かし、人間世界の進歩に貢献するかを工夫し努力する人間総合力」に行き着くのではなかろうかと考えられます。

「水と油」は馴染まないモノ同士ですが、共に資源であり、取引可能であり、中東・カタールの水不足は日本の技術力(海水を淡水化し、深井戸を掘って地下水をくみ上げたり、排水・下水処理から工業用水を賄ったりする水の活用・流用ノウハウ全般)で解決してあげるお返しに、日本が欲しい石油を手に入れるという資源交換になるのです。

もっとも、中国のレアメタル禁輸のようなWTO協定違反によって、多くの自由貿易世界諸国から強い糾弾を受けるような独裁偏向外交は御免こうむりたいところですが。


「水」は世界が欲するレア資源

水と安全はタダだと思っている多くの日本人には意外かも知れませんが、世界の水不足の深刻さはすでに待ったなしの状態です。水飢饉だけでも世界人口の1割にも達する6億人強、さらに人体に安全な飲料水が不足しているとみられるのが、25億人(何と4割を上回る)もいるのだそうです。

ご存知のように、地球上の水の97.5%は海水、残る2.5%の淡水のうち75%が南北両極の氷なので、地下水を含む河川・湖にある淡水は、僅か0.6%強しかないのが現実です。

日本の淡水化技術は、優れた合成繊維技術をベースにした「逆浸透膜」というビールスよりも三けたも小さな微小な孔を持つフィルムシートを使って塩分を排除するもので、世界トップに立っております。また、同じ技術の延長線上で、有害な病原性原虫を除去できるほどですから、下水や雨水、排水などを飲み水に変える精密濾過技術の粋は、量産化さえ保障されれば、コストダウン、実用化は目前だそうです。

生活用水飢饉が深刻な中国・インド・中東やアフリカ・南米への支援は急務ですし、農業用、工業用など大市場が世界に広がっております。そして、これらの地域こそ、日本が求める地下資源には恵まれているわけですから、資源外交の機は当に爛熟しているといっても過言ではなさそうです。


ひそかに進む“侵略”

繰り返し言いますが、日本は資源小国ではありません。国土の7割を占める森林や水資源に加えて、広大な排他的経済水域を有する世界6位の海洋大国であり、世界トップクラスの「ヨウ素」や前回触れた「メタンハイドレード」など諸々の海底資源も加味すると、相当の「資源大国」なのです。そのことを日本人は認知し自覚すべきではないでしょうか。

すでに中国資本が東北のブナ林を買ったとか、豪州資本が北海道山林を手に入れたといった問題が(ほんの一部だけ)明るみに出てきつつありますが、こうした事例の怖いところは、大半がダミーとして日本人名や日本企業名が登録されているケースが多いことです。実態を政府や地方自治体が正確につかんでいないことは、後々大問題に発展するでしょう。

農地の場合は、農業委員会が認可権を握っていますが、山林の場合、地上地下(地下水汲み上げや温泉掘削まで)の地籍管理や売買ルールは曖昧だそうで、今後外資を含む国際紛争のネタになりそうです。縦割り行政の弊害も心配され、国土交通省・林野庁・環境省・厚生労働省・経済産業省・財務省などにまたがり、この問題の対処は一筋縄でいかないように思えます。

個人私有地の国有・公有化や過疎地の特区化、大手私企業や公共投資の促進策なども、林業再生、土地制度を含めた抜本対策が急務といえそうです。山岳で国境を接する西欧先進国の進んだ地籍制度を学習し、あわせて強烈な規制を掛けて国土を守る共産独裁国の厳しさからもヒントを得て、国土を守るため、島国ボケから一刻も早く目覚めるべきときです。尖閣諸島危機だけが政府国民の喫緊の課題でないことを認識し合いたいものです。


都市鉱山

転じて「都市鉱山」という話題に移ります。この現代語が意味するのは、リサイクル(使用済みパソコンやケータイなどから、有価金属を回収する)事業によって、レアメタルを含め17種もの貴重な金属が回収できる技術でも、日本が世界一だそうです。金を例にとれば、金鉱山では1トンの鉱石から5〜20グラムの金しか取れないのに、携帯電話の残骸1トンからは、なんと200グラムもの金がとれるようです。

ほかにも、低品位鉱石から日本独自の技術で、金銀銅を採る画期的な「塩化法」や産業廃棄物(従来方式では利用済みで捨てられた鉱石も含めて)から「バクテリア法」で極微量な残存銅を抽出するなど、資源循環型発想ネタが次々出現しているのも、心強い限りです。

日本が資源の大量輸入・加工・消費国であったことを裏返せば、各種資源が大量蓄積されていることになり、まさに世界最大級の都市鉱山保有国というわけですから、回収・再利用ビジネスにとって追い風なのです。秋田の小坂製作所の「自溶製錬法」によると、黒鉱と呼ばれる17の金属元素を含む複雑硫化鉱から不純物を除去し有用金属を回収する技術開発で、「世界のリサイクル製錬の拠点」たる存在感を高めているそうです。


世界的な中国包囲網を

「戦争とは、単にミサイルを撃ち合うことだけではなく、スパイ行為やテロを弄したり、貿易制限や資産没収など、多面にわたって展開するものだ」と明言し、現にそれを実行しているのが中国です。

政治外交的にも軍事的にも、怯えるだけで、正面から堂々とこれに立ち向かうことができない日本に残された道は、多くの諸国との平和的、経済的、技術文化的「資源外交」によって、世界的な中国包囲網を築くことで対処するほかないように考えます。幸いにも、最近国家安全保障会議と秘密保護法が法制化され、わが国の資源を守るインテリジェンスも今後強化されやすくなったのは、喜ばしいできごとでした。あとは正しい運用ができるかどうかです。

「豊かな資源」に加え、わが国には多額の外貨準備金もあります。さらに、公的年金積立金を低利の国債から資源保有国の開発投資目的に特化した戦略的ファンドに組み替えるなど、国民財産を最大限活用することで、現下の戦いに勝利することが可能なのです。これこそ、わが国が取り得る唯一かつまっとうな資源戦略だと確信する次第です。

(上田和男)

上田和男(こうだ・かずお)
昭和14(1939)年、兵庫県淡路島生まれ。37年、慶応大経済学部卒業後、住友金属工業(鋼管部門)に入社。米シラキュース経営大学院(MBA)に留学後、45年に大手電子部品メーカー、TDKに転職。米国支社総支配人としてカセット世界一達成に貢献し、57年、同社の米ウォールストリート上場を支援した。その後、ジョンソン常務などを経て、平成8年(1996)カナダへ亘り、住宅製造販売会社の社長を勤め、25年7月に引退、帰国。現在、コンサルティング会社、EKKの特別顧問。




上田和男(こうだ・かずお) 氏の視野の広さと国際感覚に優れた経済論は日本の将来展望を的確に掴みその取るべき進路を啓示しています。私の信頼する人物の一人です。

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