トップ情報日本国民は日本という国をどんな国にしたいのか?>日本を「最重要国」に選んだ東南アジア

日本を「最重要国」に選んだ東南アジア

日本経済新聞 2014/4/25 編集委員 秋田浩之

いちばん大切なパートナーは日本――。東南アジアの人々によるこんな対日観が、最新の世論調査で明らかになった。第2位は中国となり、米国は3位にとどまった。なぜ、このような順番になったのか。詳しい結果をみると、東南アジアの本音が浮かび上がる。

この調査は、東南アジア諸国連合(ASEAN)の7カ国が対象。外務省が3月、香港の調査会社であるIpsos社に委託して実施し、計2144人から回答を得た。


6年で中国を逆転

「現在の重要なパートナー」を複数回答で聞いたところ、日本が65%となり、中国(48%)、米国(47%)が続いた。前回の2008年には中国が首位だったが、日本が逆転した格好だ。

この傾向は、「将来の重要なパートナー」についてたずねても変わらない。トップは日本(60%)、次いで中国(43%)、米国(40%)の順になった。

それにしても、なぜ、日本が米中を抜いて首位に選ばれたのか。経済でいえば、中国の国内総生産(GDP)は日本を抜いて世界2位になった。一方の安全保障面では、なんといっても米国の存在が大きいはずだ。外務省の幹部に聞いてみよう。

「安倍晋三首相が昨年、ASEANの国々をすべて回り、日本として経済、安全保障で積極的に協力していく姿勢を印象づけた。アベノミクスで日本経済も復活している。これらが相まって、対日重視につながっている」

安倍政権による活発なアジア外交と経済の再建が、日本への評価を底上げしているというわけだ。さらに、昨年12月、安倍首相がASEAN各国の首脳を東京に招き、首脳会議を開いたことも奏功したとみられる。

だが、理由はこれだけだろうか。各国別の回答をながめると、別の要因もみえてくる。興味深いのは、中国と離島の領有権争いを抱えている国ほど、対日重視の傾向が強いという点だ。

たとえば、南沙諸島などをめぐって中国と激しく対立しているフィリピンやベトナムだ。フィリピンでは、「現在の重要なパートナー」として日本を挙げた人が76%と圧倒的に多く、次が米国(65%)だった。中国(32%)はその半分にも及ばない。ベトナムでもこの傾向は似たり寄ったりだ。

逆に、中国と紛争を抱えていないタイやインドネシアでは、首位・日本と2位・中国との差は10〜20ポイント。華人人口が多いシンガポールに至っては、調査対象国で唯一、中国が日本を抜いて首位になった。こうしたばらつきはあるにしても、7カ国全体でみると、日本が最重要国として認知されている現実には変わりがない。

中国からの外交や軍事的な圧力を和らげるため、日本にも存在感を増してほしいという思いがあるのだろう。具体的には、アジアの海洋安全保障などで日本の貢献を期待する向きが多いとみられる。日本がASEANへの経済関与を強めれば、中国への依存度を減らせるとの思惑もあるにちがいない。


米国、存在感取り戻せるか

それにしても気がかりなのは、米国を重要パートナーとみなす回答が、中国より少ないことだ。米企業によるASEANへの投資が日中ほど多くないことや、米国防予算が大幅な削減を強いられていることも影響しているのかもしれない。

アジアの安定にとって、いちばん重要なのが米国の存在であることはいうまでもない。オバマ大統領は日韓の後、マレーシアやフィリピンを訪れるが、どこまで存在感を取り戻せるか。そこにアジア歴訪の成否がかかっているといっても、過言ではない。

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