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幻の煎餅


 四国道後の温泉煎餅です。明治15年創業の老舗、今でも1枚1枚昔ながらの手焼きです。いきなり店頭へ行ってもすぐには買えません予約待ちで1ヶ月から2ヶ月待ちの状態。そのお店の名は玉泉堂、以前は店先からあぐら座りで焼いている所が見えたのですが、今回久しぶりに訪ねてみると一見下田屋みたいで商売しているようには見えません。

 ごめんくださいと言ってガラリ戸を開けて入ると、感じのいい若奥さんが出て来られて、出来るだけ急いでお送りするように致しますからとのこと。その応対からは自信と誇りに満ちた何ともいえない風格さえ感じます。サービスマニュアル丸暗記の今時の店員からは絶対に感じる事の無いものです。その接客から感じる事は必然として身についたもので何とも自然でした。早速その場で3個頼みました。味を頑固に昔ながらの伝統を守り決して商売に量的発展を求めない、責任の持てる物を作る事を考えれば1日に出来る量は自ずと限られます。

道後温泉の神の湯(本湯)と同じドングリじるし

 予定よりはるかに早く10日ほどで届きました。気に掛けてくれたのでしょう、茶筒のような缶に入った温泉煎餅が久しぶりに食べられます。軽く香ばしい音が、「パリッ」、「カリッ」何ともいえない風味と歯応えがします。自然に顔がほころんできます。おいしいというより愛情を感じるのです。「嬉しいですねぇ」、「あり難いですねぇ」こうした頑固さは大歓迎です。

 ちょっと売れれば残業、或いは三交代勤務、やれ今度は機械化したり工場を増やしたり、景気が悪く売れなくなると今度は従業員の首切り、拡大路線を歩んだ所が今は苦しんでいます。そのような姿を見ていると、欲張るとロクな事は無いなとしみじみ感じます。それに最近つくづく感じる事は食べ物の味が人工的で画一的で美味しくなくなった事です。野菜にしても・・・果物にしても・・・。それに引きかえ久しぶりに食べた温泉煎餅の味は流石でした。商売とはかくあるべきと教わりました。


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