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人は住む地形や環境によって性格が形成されるのか?


 20年以上も前の話ですが、カイザーサウンドを立ち上げた最初のスタートは店舗レスからでした。自宅は広島市から25キロほど離れた山間の所にありました、それぐらい離れたところでないとマイホームが持てなかった事が理由です。

 そこは広島市の北の一番奥にあたる所で、すぐ北側は山県郡(やまがたぐん)になります。加計町、千代田町、豊平町の3つの町からなっているのですが、車にデモ機の大型ラジカセを積んで毎日職域へ出向き販売するのですが、とにかくこの3つの町の人達の性格がまったく違うのには驚かされました。今回はその山県郡の人達の話です。

 加計町は大田川上流にある地形の険しい林業中心の町です。ある日、採石会社に訪問し昼の休憩時間に10人を前にデモンストレーションを始めました。川原のマイクロバスが休憩場所になっているその中でのことです。

 「オー面白いなー」
 「なかなか音がいいじゃないか!」
 「何んぼするんか〜?」
 「マイク持って歌ってみ〜や」
 「月賦でもええんか〜?」

 次から次に荒っぽい言葉が鉄砲のように飛んできます。新米のセールスなら為す術なしでしょうが、どっこい私もその上を行くやり手ですからたじろぐことは一つもありません。

 「お任せ下さい!それでは下手などさ回りの歌を聴いてやってください!」といって「花街の母」を歌いました。

 「いよ〜!いいぞ〜!」
 「俺買った!」
 「わしも買う!」

 こうした調子でその場の10人全員が買いました。とにかく「宵越しの金は持たん、パッと使う」というような感じでしょうか、自分の思ったことはハッキリと言う「荒くれ男」というのがピッタリでしょう。

 千代田町は山陰へ抜ける途中の宿場町として発展したのだろうと思います。広く開けた土地と、とびっきり明るい性格は他人に対して大変友好的で社交性に富んでいます、どんな人でも受け入れるという大変オープンな気質を感じます。ですからこの町では次から次へと紹介で人のつながりが広くなり、あっという間に沢山のお客さんが出来ました。私はこの千代田町の方達に育てられたといってもいいぐらいお世話になりました。

 その両者の町の中間に位置するほとんどが山の豊平町は、いくつかの小さい村が合併して出来た町ですから、中心になる核となる町もなく地道な暮らしを基本とした日本古来の田舎の姿がここにあるように感じます。物を売り込もうとしても話はきちんと好意的に聞いてくれるのですが、自分の考えを出しませんので気持ちを読み取ることが大変難しいです。

 これだけ長い時間、話を聞いてくれたのだから「気に入ってくれているのだろう」、あるいは「買ってくれるのだろう」、と思ってこちらはしびれを切らして、

 「如何でしょう?」と迫ると、

 「いや〜うちは必要ありません、せっかく熱心に話されているのを、断ると失礼だから話を聞かせてもらっただけですから」といった返事が決まって返ってくる。

 こうした経験は山陰地方へ出張したときにも同じような体験をしました。良いも悪いも日本人のルーツがここにあるのかな〜と思います。同じ山県郡でもこの3つの町の違いは後の私の商売に大いに役立つことになります。


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