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生かされている命


 成人の日にある、青年のメッセージの発表会に向けての九州地区の模様が放送され、その中で代表に選ばれた女子高校生の話です。それは授業の中で一人一人に自分の卵を与えられ、育てていく過程の中から「生きることの意味」や「命の大切さ」を学び取っていくのですが、最後には自分の育てた鳥を絞めて食べるという食物連鎖の仕組みを多感な年頃の彼女達が厳しい現実に直視せざるをえない状況の中から経験するのです。

 可愛いひなが自分のくちばしで殻を割って生まれてくる生命誕生の感動に始まり、よちよち歩きを初め少しずつ育っていく様子を眺めていくうちに次第に深い愛情が芽生えてきます。私も小学生の頃、同じように5羽育てた経験がありますのでその気持ちは共感出来ます。今でもよく覚えているのは、生まれた時から小指の先が少し曲がった特徴のある一番小さく成長の遅かった彼女が気になり、「ちび」と名付けて可愛かったのを今でも思い出します。

 私の場合も結局最後には父が羽や毛を抜き、さばくのを目の前で見た経験がありますので悲しい気持ちはよく解ります、結局家族全員でそれを食べた時の気持ちというのは複雑で、その事から沢山のことを学び取ったのは事実です。

 そして彼女達が愛情をかけて育てたニワトリをさばいて食べるという日がやってきました。全員泣きはらした顔が画面に映し出されます。ある子は抱かかえたまま離そうとせず、それもオイオイと肩を揺らしながら泣いています。

 暴れる鶏を抑える役と、けい動脈に包丁を入れる役と、それぞれ二人一組になり食肉にしていくのです。一見残酷に見えるようですがこの真実を教えずして、生きていくという行為そのものの本質や目的を学び知ることはありえないという強い確信を持って、教育を実施されているその先生こそ真の教育者だと私も思いました。

 そして彼女達は自分たちの命は他の生き物の命によって生かされているという真実を体得していくのです。こうしたことを知れば決して命を粗末にすることなど出来ない、また自分がひよこを育てたことで育てられてきたということに対して感謝する心が芽生えてくるのです。

 最後にいただきますといって自分の育てた鳥を頂くときに、この「い・た・だ・き・ま・す」の6文字にこめられる大切な意味がわかりましたと結んでいます。この文を書いている時に私自身の目からも何故か涙がこぼれ落ちてきました。


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