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The King Of Theater Sound / ALTEC 817A


 ALTEC 817A を上手く鳴らして欲しい
 札幌でJAZZ喫茶をされているK様はJBLのパラゴンをお持ちですが、さらに、2台目のスピーカーとして最近アルテックの817Aシステムを導入されたそうです。それがなかなか上手く鳴ってくれないで苦労しているというお電話を頂きました。

 ローゼンクランツ製品を色々とご愛用頂いているのですが、私はまだお店にはお伺いしたことがありません。なにせ、北海道というところには一度も行った事がありませんので、当然といえば当然です。札幌には私のお客様が結構いらっしゃるので、近いうちに尋ねて行きたいとは思っております。

 CADを使って何度も図るイメージング
 その上、手く鳴ってくれない817Aのセッティングについて、私なりにプランをご提示させていただいたのが下図の物です。こうして、一品物でもCADを使って丁寧に図面を何枚も書きます。そうしてイメージを膨らましていくのです。

 PB-BIGを主役にプランニング
 もちろん、メインは既にお持ちいただいておりますPB-BIGを生かしてやることにあるのは当然であります。お聞きするところによりますと、店内の広さは20坪ほどあると仰る。「床からどれぐらい持ち上げるか?」、「ウッドブロックの太さはどれぐらいにするか?」、シュミレーションを描き、FAXにて音のイメージのやりとりをします。

 スピーカーと箱を一体として歌わせる
 これだけの大きな箱ですが、板厚は21mmと非常に薄く、とにかく515Bの軽いコーンと箱を一体として歌わせ、気持ちよく呼吸させてやる必要があります。上手くいけば、フロントホーンからJAZZのエネルギーが胸に風圧となってカッ飛んでくるはずです。

 中低音の抜けの良さを引き出す
 その為の設計のポイントとして、中低音の音抜けをよくすることに絞って、気持ちを集中し考え抜きました。その結果、底の部分に10,5mmほどロクロ加工で、外周部をザグルという方法を採用したのです。重要な問題は、柱の四角の部分と丸い脚の部分との面積比です。音の感じに置き換えれば、「力強さ」と「しなやかさ」のバランスと言うことになります。

 1kaiserを基本にデザイン
 136,5mm(1,3kaiser)角に対して、直径94,5mm(0,9kaiser)の約6:4に決定。こうして、細やかな「波動コントロール」をとって、やっと気に入る物に仕上がりました。試作品を作ることなく一発で決めなければならないものは、図面の上で真剣に音のシュミレーションをとるしか他に方法はありません。こればかりは「経験」と「勘」がものを言います。

 紙面上で如何に音を設計できるか?
 幸いにして、この817Aについては過去にシゴいた経験がありましたので、イメージ作りが比較的容易に出来ました。間違いなく、「見事な音に変身すること請合いです!」。こうして、緊張したやりがいのある仕事を引き受け、ひとまず現時点に於いて紙の上ではありますが、完璧な物が出来たと自信を持っています。

 しかし、大事なのは音です!。
 
 まだ、音が出て確認したわけではありません。

 安心は出来ません。

 さて、K様からどんな言葉が返ってくるのでしょうか?。


817-A用ウッドブロックの作り直し


 一品物の難しさ
 アルテックの817-A用のウッドブロックの特別注文を受けて張り切って作らせて貰ったのですが、K氏との連絡が悪く最後の仕上げの段階でチョンボをしてしまったのです。そのチョンボの内容とは、底の部分のペーパー掛けなんです。

 溺れ過ぎた細工と頼もしい職人の年期
 136,5ミリ(1,3kaiser)角のウッドブロックの底を、直径94,5mm(0,9kaiser)の円形に加工した部分の事です。ノコで挽いただけでは正確な水平面が出ていなくて、指先で端っこを軽く押すと微妙なガタがあるのです。円形状にこだわり、その上アール加工も施していますので、底の平面部分の占める面積が充分ではなく、そんなに安定感のあるものではなくなっています。

 私の要望に思案に暮れた果て、2代目は親父さんに相談することになりました。おもむろに腰を上げ、「う〜む、・・・これしかなかろう!」と親父さんはひとことつぶやき、ペーパーを水平台の上に両面テープで貼り付けたのでした。腰を落し気味に据えて、両手で挟むようにしてウッドブロックを持ち、少しずつ左右に回転させてペーパーでついた傷口から水平を判断すると言うものです。

 「これで、どう?」と言って、私に差し出された物を水平台の上に置いてみると、”ピタッ”と、まるで吸い付いたようです。紙の上で書いた物と、実際に出来上がった物との加工上の難しさを改めて実感したものです。私自身多分に細工に溺れ過ぎの感があったのです。

 いつも仕事をお願いしている2代目も同じようにやってみるのですが、やればやるだけ狂ってくるほど微妙なものです。改めて年期の凄さを感じました。問題に出くわした時に解決し結果を出してみせるという頼もしさ、年期と言う凄さを実感しました。

 念には念を入れて
 そんな一部始終をK氏に話していましたので安心していたのですが、指示をしていないので「ペーパーを掛けてしまうかもしれない」と”フッ”と気になり電話をしたのですが、その時はもうあとの祭りでした。彼は彼でいつもの通り丁寧にきれいに仕上げようと思って、ご丁寧にパテ埋めまでした上で、底の部分にサンダーを掛けてくれたのでした。

 すぐに飛んで行ってみてみると、肩が丸くなり平面が無くなってしまっていました。「ア〜・・・、あれだけ神経を使ってやったのに・・・」、しかし、具体的に指示をしていなかった私の落ち度だから言って行く所はありません。

 潔く失敗を認める
 元々狂いが生じる生き物の木に、それだけの精度を要求する私の方がおかしい事に気付いたのです。「よし!、仕方ない!、改めて作り直そう」。そう決めると、その場で注文主のKさんに電話を入れ、とりあえず出来上がった物を送り、次が出来るまで使っていて頂くことで理解して貰いました。
 
 失敗から学ぶ教訓
 音の良さだけに気持ちを奪われて、使う上での安定性がおろそかになっていた事を改めて反省しました。特に今回の物は業務用ですから、丈夫で安心して使える事の方に重点を置いて設計するよう図面を書き直し、少々の事では問題が起こらない物を作る約束をさせてもらいました。

 
 お世話になっております札幌のKです。
 
 先日、届いたウッドブロックを組み込み致しました所、SPの安定感も良く、心配していた音質ですが、前回作って頂いたウッドブロックとほとんど変わらずの音が出て、ジャズエッセンスがある音が出ております。

 最初に作って頂いたウッドブロックも鳴らし込んでいく程、貝崎さんが言っておられる振動の時間軸が揃ってきていたので新しく作ってもらったのと取り替えるのは・・・と思ってましたが、私の注文どおりSPの安定と音質の安定を見事に製作してくれた貝崎さんの『こだわり』充分に頂きました。
 
 今回の私のオーダーでほとんど儲けはなかったと思いますが、音へのこだわりは私も見習いたいと思ってます。東京試聴室ももう少しでオープンのようですが、より多くの人達にカイザーサウンドの音を聴かせてあげて下さい。音は言葉では納得できないので、耳で聞かせてくれるカイサーサウンドのこれからの発展をお祈りしております。

 この度は有難うございました。

 

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