トップノウハウポイントベースアプローチ

ポイントベース製作秘話 歯と歯茎の理論とは

●ポイントベ−ス(インシュレ−タ)編


  “流れ”には、「電気の流れ」と「振動の流れ」があります。そのどちらが欠けても「感情の流れ」、すなわち「音楽の流れ」は生まれませんし、このふたつの要素が両立してこそ強弱と緩急のバリエ−ションの組合せである「音楽」を、生き生きと蘇らせることができ、演奏家の気迫や情感が伝わってくるのです。

PB−DADDYPerfect

 これがローゼンクランツの信念…。この基本ポリシ−のもと、それぞれのテーマについてさらに具体的な問題点を列挙しながらひとつひとつ解決していくことが、結局は良い製品を 生み出すポイントなるのです。

 アンプやスピーカーシステムといった機器類もそうですし、もちろんアクセサリーであるインシュレーター、ケ−ブル類に至るまで、この開発ポリシーは一貫しています。

 では、最初に取り上げるインシュレ−タではどうでしょう。理想のインシュレ−ターとは「エネルギーを減衰させることなく、振動を瞬時に断ち切ること」。この点に集約されるでしょう。ところがこれがあい矛盾するテーマであり、なかなか両立が難しいのです。

 普通に考えれば、機器で発生した有害振動はできるだけ押さえ込んで、無くしてしまうのがよさそうです。例えば、ゴムやバネ類で振動を柔らかく吸収してしまうのも一方法でしょう。ところがこんな軟弱な素材では、アタック音に対する立ち上がりが不鮮明(マナってしまう)であり、振動と一緒に音楽のエネルギーまで吸い取られ失ってしまうのです。

 では金属やセラミックなどハ−ド系の素材はどうかというと、処理のスピ−ドは速いのですが、固有のナキが生じたり、肝心の振動吸収効果の点がイマイチ。結局どちらも満足のいく結果が得られないわけです。ローゼンクランツのインシュレターはこのどちらでもない、全く新しい手法によって生まれました。ヒントは「歯と歯ぐきとアゴ骨の関係」です。

 なぜ人間の歯は、固い食物や柔らかい食物を自由に食べられるのでしょうか。それは硬い歯があり、柔らかい歯ぐきがあり、そしてそれを支えるアゴ骨がある。それぞれの部分で振動を少しずつ減衰させることにより、頭まで振動が伝わらないようになっているからです。この関係がちょっとでも狂うとどうなるか…。例えば、歯並びの悪い人は偏頭痛がよくおこるように、振動の減衰が正しく行われないと色々な問題が起きるのと似ていますね。


・ロ−ゼンクランツ・ポイントベ−スの構造と理論

 エネルギ−は「物体の質量×速さの2乗」で決まります。この物理学の真理を、独自の「歯ぐきの理論」と融合させて完成したのが、ロ−ゼンクランンツ・ポイントベ−ス「PB−REX」です。

 例えば大きい車と小さい車とが、正面衝突した場合を考えてください。大きい車は質量が大きいために、普通であれば軽い小型車両の方が衝突のダメ−ジが大きく、見るも無残な姿になってしまいますね。これが、スピ−カからの振動をまともに受けている通常のインシュレ−タの状態です。

 ところがこの小さな車であっても、エネルギ−じたいが十分に大きく、大きい車と同じエネルギ−をもっているとしたらどうでしょう。その場で両者クラッシュして、相討ちになってしまうという道理……。その状態をいかにつくりあげるかです。小さなインシュレ−タが、大きなエネルギ−をもったスピ−カ振動に立会い負けしないためには……そう、振動の処理スピ−ドを飛躍的に高めればよいのです。

 振動を瞬時に断ち切る「速さ」、「敏捷性」をもつ画期的なロ−ゼンクランツ・ポイントベ−スは、こうした発想によって生まれました。本品がただの金属製ポイントベ−スと異なるのは、ハンダの海に浮いているようなかたちで、真鍮の母材と副材とが、完全に密着=金属結合されている点にあります。

 ただ重ねただけのモノとは違うのです。ナキやビビリなど、まったく出る余地がないばかりか、音響的にも徹底的につきつめて開発したことがお察し頂けるでしょう。直感、イメ−ジ、そして確かな仮説と理論のもと。試作につぐ試作、試聴につぐ試聴でようやく完成した最終のカタチなのです。

 人間の歯とよく見比べて下さい。副材(真鍮)がアゴの骨の役目、そして注入したハンダ層が適度なクッション性をもつ歯ぐきの役目、外側の母材(真鍮)が歯の役目をします。そして上アゴと下アゴとが噛み合うような形で、オスメスの両ユニットがポイント接触をするようになっていますね。つまり4ピ−ス構造。これが基本構造です。

REXシリーズの分解図

 機器からの振動をどう受け止めるかですが、浮き島は外側の母材よりも0.2ミリ高くなっているため、振動の第一波は副材の方にしか入ってきません。そして周りの柔らかいハンダ層で急速に振動を減衰させます。REXタイプの場合、ピンポイントタイプのオスとメスの2ピ−ス構造になっているので、効果倍増となります。

 まず最初のユニット(メス)から入った振動を処理し、残ったわずかな振動をふるいにかけ、ピンポイントで集めて下側のユニットで再処理をする。このため完璧な振動処理効果が得られるのです。この方式では、行きと帰りの両方に「関所」を設けたところに特徴があります。CDプレ−ヤのモ−タ−のように機器自らが発生する振動と、スピ−カ等から入ってくる二次的な振動の両方を完璧に、同時に処理できるわけです。

 こだわりや工夫は随所にあります。例えばスパイク部(円すい形)の角度。スパイクは針のように尖っている方がいいと思われがちですが、とんでもない勘違いです。尖り過ぎていては、鳴いて力強い低音がでないうえ、メスの皿を傷つけることにもなりかねませんね。

PB−REXU

 本品のスパイク部が見た目にも大変美しく、指で思いきって押さえても痛くないのは「ピラミッド角」として有名な「105度」に選んでいるからです。数千年の風雪に耐え、強固で崩れにくい角度として、古代の知恵が選んだ特別の意味をもつ数値なのです。不思議なことに、水(H2 O)の分子の結合角度も同じ「105度」となっているわけですが、偶然の一致とは思えませんね。

 地球上のあらゆる生き物の命をはぐくむ水、どんなに高い滝壺に落下しても、決してそのH(水素)とO(酸素)との結びつきの角度を変えようとしない……神秘を感じませんか。

 もうひとつの秘密が、ハンダの鉛と錫の比率です。何でもよいというわけにはいきません。鉛が多ければ音がドンヨリとしますし、かといって錫を増やせばきらびやか過ぎてしまう。そのへんのバランスから、「音質的にこれがベストだ」。というポイントを試聴によって見つけ出すのは、容易ではありません。結果的にはちょうど105度の半分の「52.5%」がベストとなり、このデ−タにこだわった特別な配合比のものをわざわざ作っているのです。

・使い方について

 では「PB−REX」を例に、実際のセッティング法について解説します。必ずオスの上にメスを乗せること。ロ−ゼンクランツのポイントベ−スは、音のエネルギ−の流れとその方向を重視しています。置き方としては、必ず尖ったヤマを上に向け、その上にクボんだメスを乗せて下さい。メスが上、オスのスパイクが下側です。これでエネルギ−が大地から天井方向(下から上)へと、空間高くボ−カルの表情が立ち上がるのがわかるはずです。普通はスパイクを下側に向ける(受けが下側)メ−カ−が多いのですが、本当は逆なのです。

・オスとメスの「Aマ−ク」を合わせること

 下から上への「垂直方向の響き」はこれで確保されるのですが、もうひとつ「前後方向の響き」も考えられます。これを研究、製品化したのが「PB−REX(Aタイプ)」で、金属のもつ結晶が成長した方向(時間軸の流れ)までも厳密な聴感チェックで管理しているのです。

 それを示す「Aマ−ク」がオスとメスの両方のユニットに刻印してありますので、使用するさいは必ずこの「Aマ−ク」を合わせて下さい。ズレていては効果が半減します。機器のセッティングにあたっては、この「A」の刻印を、リスナ−から見て「向こう向き(機器の背後側)」に置くのが原則です。

PB−REXU

 これは結晶の方向性が、このマ−クから入ってノ−マ−ク側(つまり正面側)に抜けるように音合わせをしているからです。これによって、ボ−カルや楽器の音がさらにぐいぐいと前方向に出て、力強さや生命力のみなぎるサウンドとなってきますね。

 もしこれを反対向きにしたらどうでしょう。「Aマ−ク」が前向きになってしまいますと、エネルギ−が後方へ放射される感じとなるために、奥行方向への広がりや奥行感は出るのですが、音楽と対峙して熱いエネルギ−感を体全体で受ける、という感じが薄れてしまうのです。

 この「Aマ−ク」付きのポイントベ−スでは、出来のよいアンプやケ−ブルほどよさが際立ってきますから、クオリティのチェックもできます。まさに、リファレンス・インシュレ−タというわけです。


・置き方の原則は「3点支持」。
なおかつリスナ−側(前側)を1点支持とすべし

 CDプレ−ヤー、アンプなどの機器への置き方は「3点支持」が原則です。基本的にはリスナ−側(前側)を1点とし、背面側を2点で受けるようにしてください。上から見て三角形の頂点がリスナ−の側になるようにセッティングすることで、音のエネルギ−が前へ出てきます。振動の波動が一つになって前へ出るためです。

 但し、すべてがすべてこのル−ルがベストなのではないことにも注意して欲しいのです。機器によってはトランスやメカの配置によって前2点、後ろ1点にした方がよい合もありますし(この場合はステレオイメ−ジ的な広がり感がでてきます)、極端な場合では左1点の右2点、あるいは右1点の左2点の方が、機器の重心位置が安定し、音質的にも好結果が得られるケ−スだってあるのです。

CECのCDトランスポートTL−2Xの装着例

 例えばメカの重心が左の前方にあるプリメインアンプに対し、これを単純に前1点後ろ2点の三角形で受けてしまうと、重心点がその三角形の外になり、バランス上不安定になるわけですね。この場合は、あきらかに三角形の配置を左2点の右1点として、重心を三角形の中に入れたほうがベタ−なのです。

 最終的にはシッカリと安定するように置き、エネルギ−感と広がりのト−タルな聴感バランスで決めます。ケ−スバイケ−スの細かな点については、電話などでいつでもご相談下さい。適切なアドバイスをさせていただきます。

・スピ−カの場合もポイントベ−スは「3点支持」がベスト。

 スピ−カの場合は特に重心が問題になります。重いマグネットを背負ったウ−ファをどう受けるのか、を考えてセッティングしましょう。ウ−ファの直下にポイントベ−スを置くと、S/Nとアタック感のある、はっきりとした解像度の高い音になります。この場合も、やはり前1個、後ろ2個置きとするのが原則。オ−ケストラなども低域の量感、S/N感ともにぐっとアップするはずですね。


・ラックを使用する場合〜機器の「ツラ合わせ」にこだわらず、あくまで音質本位のセッティングをしよう

 ラックを使って機器をセッティングする場合も、この原則が生きてきます。例えば3段のラックでCDプレ−ヤー、プリ、パワ−アンプを配置するときを考えましょう。ロ−ゼンクランツでは入力側の機器、すなわちCDプレ−ヤを一番下の段に置き、信号の伝わる順序に従って音が上へ立ちのぼるような配置を推奨していますが、これらのすべてに対して、厳格に「3点支持」を守ってください。

 その際、特に注意したいのは、機器の正面のラインをきれいに揃える「ツラ合わせ」に、こだわってはいけないということです。見た目は確かにその方が品よく見えるのかもしれませんが、それと音質とは無関係なのです。

 そうではなく、先ほどのル−ルを守りながら棚板のセンタ−に重心を合わせ、それぞれの機器の振動モ−メントを揃えてやる。これによって振動のエネルギ−が上から真下(床)までビシっと抜けきって、エネルギ−バランス、前後左右の定位、S/N、サウンドの一体感が一気に向上します。

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