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2002年3月1日 佐賀県 T.M様 |
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音も聴かずにご注文を頂いて気が引けます | ||||
アルテック605用にPB-BIGを6個お求め頂いた事からM様とのお付き合いは始まったのですが、色々と音をご相談を頂くようになり、メールのやりとりの中で、スピーカーケーブル、スピーカーアタッチメント、オーディオラックと次々にご注文を頂き、実のところ、この時点では未だ一度もM様とは言葉を交わしていないのです。 |
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インターネット上での商売というものに経験が浅く、何かシックリ来ないものがあり私は戸惑いを感じておりました。「顔の見えない方」と「言葉も交わさず」、「お金が入ってくる」。そこに何か恐ろしいものを感じます。この感覚が当たり前になったら、人間は感情が希薄になり、生きていくのが今以上に難しいものになるでしょう。そこで私は素直にお尋ねしてみることにしました。「音も聴かずにご注文を頂いて気が引けます」と、そこで「返って来た答えに、私はビックリしてしまいました」。 |
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後に続く若い人達にも解って欲しい、「阿吽の呼吸」 | ||||
「音は既にその文章の中に流れております」。 この一言で「この人は只者ではない!」と感じました。その後の細かいやりとりについては、ノウハウの「音についてのQ&A」のところにその一部始終をM様に無理をお願いして公表させて頂いております。お互いを信頼して「作る喜び」、「売れる喜び」、「買える喜び」というものを実感できるこの心を、後に続く若い人達にも解って欲しいと感じたからです。 最近では悪いことのように使われる言葉ですが、「阿吽の呼吸」という、「日本の素晴らしい文化」の一端をM様のメールの中から感じ取って頂ければこの上ありません。私もかねてより「真の営業」というものを、自分なりに模索してまいりましたが、また一歩自分の目指すものに近づけた喜びを感じるのでした。 |
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「今、佐賀に居ります・・・」 | ||||
遠来の友があるので、出来れば2月10日までにオーディオラックの納品が間に合うと有り難い、という事を伺っておりましたので何とか頑張ったのですが、皮肉にも出来上がったのは前日の夜遅くでした。運送便には間に合いませんので、もう半ばヤケクソでこのまま一気に自分で車を飛ばして配達しようと思い立ち、Sさんを誘ってお昼過ぎに佐賀に着きました。いきなりM様へ電話をし、「今、佐賀に居ります」・・・。実は、これがM様と初めて交わした言葉だったのです。これにはさすがのM様もビックリされたようで、すぐにそこまで参りますと言って姿を我々の前に現しました。お互いに「初めまして」と名刺交換。 |
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初めて見るALTEC605 | ||||
挨拶もそこそこに、ご自宅に案内されオーディオのある部屋に通されますと、滅多にお目にかかることの無いアルテックの605が一番先に目に入りました。40年代に作られた物ですから如何にもアールデコ調のヒューマンな物です。「作った人の心意気」が「波動として伝わってくる」のが私には感じ取れます。 |
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この品格のある音は私には出せない! | ||||
ひとまず現状のまま音をお聞かせいただき、何をどのようにしていくのか自分の頭の中を整理します。605スピーカーの奏でる音楽はM様のお人柄通りの品格のあるものです。この音は「私には出せない!」と直感しました。この音をスポイルすることなく、私の音、すなわち「裸のまんまの音」を組み込むことが今日の私の仕事です。 |
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ケーブルの方向チェック | ||||
最初にやることは信号系のケーブルの方向性チェックです。お尋ねするところによると、10年ほど前に一巻き買ったケーブルをご自分でバランスケーブルとしてこしらえた物だと言うことでした。注意してよく見るとケーブに書かれてある文字の方向とXLRの端子の方向とが無頓着に組まれています。当時はそういうものでした。 |
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「105の整数倍」の長さに組み直し | ||||
先ず手にもってケーブルの方向を調べると<BELDEN 8402 VW-1 KE> という文字と反対です。「今日は徹底してやりますから、信号ケーブルを全部外してくださいますでしょうか?」。どうせやるのでしたら、方向性の合っている物も「音の良い長さの波動」=「105の整数倍」に組み直しますと言って始めたのですが、予想以上に時間がかかります。「お腹が空いたでしょう」と、途中で奥さんが寿司の出前を取って下さり、約1時間ほど楽しいひと時を過ごさせていただきました。 |
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反対勢力との戦い | ||||
全てのケーブルを仕上げるのに7〜8時間は掛かったでしょうか。反対勢力があるとどれだけ音楽を流れにくくしていたのか、新たに作ったケーブルを結線し直して聴いて頂ければ「一”聴”瞭然」に解っていただけます。ケーブルが良いとか、悪いとかそれ以前の問題です。流れるように音楽性豊かにスピーカーが嬉しそうに鳴り始めたのが解ります。思わず3人が顔を見合わせました。 |
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振動の時間軸を揃える | ||||
次は、お持ちした2段のオーディオラック2組の設置です。振動の時間軸を揃えるためにスピーカーの中心のライン上に並べます。パワーアンプにPB-DADDYを使って重心合わせのセッティングをします。すなわち棚板の中心にアンプの中心がくるように置く方法です。これは振幅の一番大きい所を基軸にして一緒に振動すれば、両者は振動にさらされながらも、一体の動きをすることによって、かえって「振動のあおり」や「ダメージ」を受けにくいのです。 |
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「政振」 | ||||
こうして細かく行き届いた「政振」の理論に基づいたセッティングを施して行く度に、チームワークのとれた音になっていきます。また分刻みに音が変化していくのが解ります。途中ケーブルの方向が変わったことによるリバウンドとして、ある時間帯において音が汚くなる時がありますがこれは30分もすれば取れてきます。 |
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アナログとCDの音の差 | ||||
以前はアナログとCDの音の差が大きく開きがあったそうですが、今ではその差はごくわずかなものになったとの事です。こうしてみるとCDのほうが鳴らし方による音の差が大きく、難しいものだという事がよく分かります。アナログとCDの音の差が大きいと感じる方はセッティングが上手くいっていないと見て良いと思います。 |
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EMT927に鎮座する<DAIBUTSU>の姿のなんと美しいことでしょう。厚くシルバーハンマートーン塗装された幾何学的なデザインと温かみのあるゴールドに輝く大仏のコントラストはお互いの美しさを引き立て合います。また、大仏の醸し出す音には人の持つ味わい深いものや、人生の歴史みたいなものまで引き出してくれます。 |
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方向性による音の違いの実験 | ||||
このあと、方向性による音の違いについて色々とご説明させていただきました。話が927DLHに移った時です。論より証拠、実際に試してみようということになり、ターンテーブルを上下反対にして聴いてみます。すると、音が沈むような感じになりました。不思議なようですが、やってみれば必ず何らかの結果となってこうして音に出てきます。 |
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気がついたら午前3時半 | ||||
色々なジャンルの曲を聞かせて頂きながら確認を取ります。クライバーの「こうもり」をリクエストして舞台上の人の動く様を見るのですが、中々リアルに生々しい声が出ています。ただ遠近感が少し気になり、あと25〜30センチほど前に出したい感じです。気が付くと、もう午前3時半です。最後にSさんの希望で三橋美智也を聴いて最後にしました。しかし、これはあまりうまく鳴ってくれませんでした。次回1ヵ月後くらいに福岡に来る機会がありますのでまた足を伸ばして寄せて頂く約束をして今日の所はこれでお開きとしました。 |
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