M.Aさんは”まみそぶろぐ”というヘッドホンを中心としたブログを持っています。製品のレビューも思った事をそのまま書くというスタイルを貫いているので、その内容は信憑性が高いとの評判を得、ヘッドホンの世界では多くのファンを持っています。
彼のお父さんが新らしく家を建てるのに便乗する形で、彼の部屋をオーディルーム仕立てにする事になりました。カイザーサウンドに於いても志賀高原の原木杉を使ったオーディオ壁を開発したばかりでしたので、両者にとってこの上ないタイミングとなりました。
しかし、完成したオーディオルームにセットして最初に出て来た音は”バラバラで最悪”との報告を彼から受けていたので大変気になっていました。1ヶ月余りして訪問する事になり、実際にその音を聞くと、彼の言った通りそれはそれは酷いものでした。
以下はその訪問時の事を彼自身の”まみそぶろぐ”で語ってくれていますので、私の訪問記は彼のをそっくり拝借する形にさせて頂きます。
★カイザーサウンド 貝崎親子来訪日記
★はじめに
今回の記事は、初めてのスピーカー体験を記事にしたものです。スピーカー導入→セッティング→何が変わったのか。流れを追って文章化した結果、無駄に長文になってしまい全文読むのも一苦労かと思います。
「前置きはいいから本題だけ読みたい!」という賢明な判断をされた方は「★試聴」まですっ飛ばして下さい。「無駄も又良し!」という気概に富んだ方は、「★初めてのスピーカーサウンド」からお付き合いください。
★初めてのスピーカーサウンド
初めてのスピーカー。
初めてとは言っても、スピーカーの音を聞くのが生まれて初めてというわけではありません。勿論、今までスピーカーの音は聞いたことがあります。オーディオを趣味としてから、自宅でスピーカーの音を聞くのが初めてという意味での「初体験」です。
スピーカーで初めて音を出した時の率直な感想。
「音と自分の間に大きな大きな距離感を感じる・・・」
決して良い印象ではありませんでした。
むしろ逆、期待が大きかっただけに落胆したものです。
これまでの私は、"ヘッドホン限定オーディオ生活"を送ってきました。ヘッドホンに慣れた耳にとって、スピーカーの音の違和感は想像以上でした。ヘッドホンというのは、耳の間近で音を聞くので、音との一体感が強い傾向があります。その感覚が染み付いていただけに、スピーカーの音は一体感に欠けているように感じ、同時に音楽と自分との距離が遠く感じられました。
そしてその音は、大袈裟でも何でもなく、何の感動も無い音でした。「これがスピーカーの音であり鳴り方なのだ」と考えることで自分を納得させることが、スピーカー経験皆無の私にとっての最善の策。
そんな現実逃避の思考が一瞬過ぎるものの、目の前で展開されるスピーカーサウンドが私を現実へ引き戻します。逃げられない現実、「最悪の状況」、「どん底」、そんな言葉に考えが辿り着くのに時間はかかりませんでした。
いったいどんな音だったのか。少し細かなことを書くと、ステージは後方に展開し、音に厚みがなくスカスカしており、音がまとまらずバラバラ。音との一体感が全く感じられず、ただスピーカーから音が出ていることを認識する。そんなレベルでした。特に「音がバラバラ」という要素によるマイナスイメージが大きかったのを覚えています。
買ったばかりのスピーカー、アンプなので、エージングが進むことで改善されるだろうか?そう思って3日ほど鳴らしてみましたが、やはり根本的に何も解消されませんでした。
ヘッドホンで納得いく理想のサウンドを手に入れた私にとって、このスピーカーから出てくる音は苦痛でしかなかったのです。それ以来、一ヶ月間アンプの電源を入れることはありませんでした。
私の出した答えは、
「・・・あんな音なら聞きたくない」
音楽を生活の一部としているオーディオファンであれば、この決断がいかに現状の深刻さを物語っているかを察するのは容易いはずです。
★スピーカーシステムの難しさ
ヘッドホンシステムで使用していたトランスポートやDAC、ケーブル類や電源環境を流用し、それなりのアンプとそれなりのスピーカー、スタンドを用意。(アンプはLUXMAN L-507u、スピーカーはB&W CM5)、更には、スピーカーシステムのために半年計画で準備してきたオーディオルーム。
正直、「最初からそこそこ良い音が出るだろう」と思っていました。
しかし、現実はそう甘くありませんでした。
「これだけのお膳立てがあってこの音かよ・・・どうしろってんだ・・・」
お手上げ状態、降参です。
様々なセッティング(配置等)を試して音を確認する作業を繰り返し、音を追い込む作業をするのがオーディオ醍醐味、面白さ、魅力。しかし、この時の私には、オーディオにそこまでの労力と時間をかける気力がありませんでした。
今思えば、あまりの酷い音に気力をゴッソリ削ぎ取られてしまっていたのかもしれません。スピーカー経験ゼロの私にとって、この難題はあまりにも強敵だったのです。
しかし、敵が強ければ強いほど、倒した時に得られる経験値は多いものです。苦労すればするほど対価を得られるわけです。北斗の拳でケンシロウがこんな名言を残しています。
「お前もまさしく強敵(とも)だった。」
敵を倒し、その敵の想いを胸に刻み込み、敵の宿命を背負い、自身の糧とし、成長し、壁を乗り越え、更に強くなる。
この台詞はオーディオでも通用すると思いませんか。オーディオでも、調整技術によってウィークポイントを改善出来たとき、大きくセッティングスキルを上げることが出来ます。
さて、話を元に戻しましょう。
この最悪な状況、言い換えれば強敵を倒す必要があります。倒さなければ、私のスピーカー道は開始と同時に終了という悲しいストーリーを紡いでしまうことになります。どのような手段を用いて倒すのか、何時その"時"は来るのか。
決戦の日は唐突に訪れました。
カイザーサウンドの貝崎氏が、オーディオクリニック行脚の途中に寄ってくれるとの一報有り。2010年5月21日、私は貝崎氏の力という云わば秘奥義を得て強敵に挑むことになったのです。
なんというタイミング。
結果論になりますが、「このタイミングでこの経験を出来たこと」は、スピーカー道をこれから進んでいく私にとって限りなく最善策であったと言えます。本当の最善策は、もっと早く貝崎氏に相談することでしたが、このタイミングでも余計な金銭的支出、労力、時間を十分抑えることが出来たのは間違いありません。
もう一月時期が遅れていれば、オーディオの魔の泥沼に足を突っ込んでいたかも・・・、そう考えると、尚更ベストタイミングであったと思えます。
★貝崎親子来訪
2010年5月21日。
貝崎氏が多忙なオーディオクリニック行脚の合間を縫って訪ねてくれました。前回の訪問時とは違い、今回は息子の貝崎浄氏と二人での来訪。浄氏と会うのは今回が初めてです。同じメタラーということもあったのかもしれませんが、個人的に馴染みやすい雰囲気のある方だと感じました。
少し話しが脱線して申し訳ないのですが、
「極みに達したときに得られる真理というのは、どんなジャンルでも実は同じなんじゃないか?」
そう思うことが多々あります。
なので、私はジャンルを問わず、何かを極めようと邁進している人に非常に興味を持ちます。そのような人の考えの価値は計り知れません。
話を戻すと、浄氏からは、そんな"極"の雰囲気がヒシヒシと伝わってくるのです。全開でオーラを放つ静雄氏とは異質な"極"の気配、内に秘めたる強固な信念。幾多のオーディオクリニック経験を糧に、極限まで研ぎ澄まされた超人的な感覚から"極"を感じられる静雄氏に対して、カイザーサウンドの真髄である高度な調整技術を継承しつつも、理知的思考をベースにし、現代的な感性による斬新な発想を柔軟に組み込んでいくスタイルの浄氏からは、理論にる"極"を感じます。
私は、浄氏と直接会ったことで、「カイザーサウンドは浄氏にしっかりと受け継がれ、そして進化し続けるだろう」。と感じたと同時に、「商品コンセプトの核になる"理屈"の部分が今後示されていくことで、ローゼンクランツのイメージが少しずつ変わっていくのではないか」とも思いました。「なんでこんな構造をしているのか」、「なんでこの材質を使っているのか」、理由が明白であり、かつ説得力があるほど信頼度は上がるものです。
★試聴
前置きはここまで、いよいよ本番開始、バトルスタートです。
今回のオーディオクリニックは、多忙なスケジュールの合間を縫って来て戴いていたので時間が限られていました。時間がない!大急ぎでやることやらないと間に合わない!そんなわけで、到着早々、3人揃って問題の音を早速聞いてみることに。
スピーカーから音が出た瞬間、
「これは駄目だ」「これは酷い」「100点中の5点」などなど散々な言われよう。
いやぁ〜、ありがたい。
ここまでハッキリ言ってくれる人はなかなかいないですよ?。自分の抱えていた不安が、酷い音であるという事実を共有できたことで一気に安心感へと変わりました。
貝崎氏は、「今まで経験してきた音の中で5本の指に入るほどの酷い音」と仰っていたので、この音の酷さ具合は相当だったのでしょう。
何が悪いというハッキリした原因があるわけではなく、いろいろな箇所が複雑に絡み合って最悪な音になっており、加えて、貝崎氏設計のカイザールームの精度が高いため、誤魔化しが一切きかず、悪い部分がハッキリと出ている状態だったようです。
「間違いない、こいつは強敵だ・・・」
そう確信しました。
★オーディオクリニック開始
オーディオシステムそのものは一切変更せず、何のアイテム追加もせず、調整技術だけで音を改善していきます。これがローゼンクランツの真骨頂であるオーディオクリニック。
元々が最悪な状態であったことは、「調整だけでどれだけ変わるのか」を判断するという見方をすれば良かったように思います。ヘッドホンシステムでは、「セッティング技術による音の改善」を体感できる機会が少ないので、今回の経験はスピーカー初心者の私にとって興味深いものでした。例えば、スピーカーの位置を変えるだけで音が変幻自在に変わるなんて現象は、スピーカーシステムならではの魅力です。
1.スピーカーの配置
まずは、おおまかにスピーカーの位置を調整。クイクイと適正位置へスピーカーを移動させると、明後日の方向へ向かって出ていた音が、とりあえずではありますが前へ向かって出るようになったのです。相変わらず酷い音のままですが、音の出る向きが前になっただけでも大きな収穫です。ここでは、スピーカーの配置の重要性を学びました。
2.スピーカーの足場
次に、スピーカーの下に置いていたアピトンボードを外しました。オーディオルームを設計する際に、壁だけでなく床や天井材も考えて戴いていたので、「しっかりした床があるので、これならボードを使用しないで直接置いたほうが好結果が得られそう」という理由からボードを除去。
更に、片方のスピーカースタンドの天板の前後の向きが逆とのことで、天板を外して前後を入れ替え。その時に、スピーカースタンドのネジを加速度がつくように配置換え。ネジの配置換えは左右両方行っています。そして、その状態で今一度スピーカー、加えてオーディオラックの位置を調整。
結果、"1.スピーカーの配置"の時に「とりあえず」前へ出るようになった音が、今度は「ハッキリ」と前へ迫ってくる感覚を得られる程に改善。
バラバラだと感じていた音が、同じ方向を向いて音を出すようになって統一感が出てきたのです。音のバラバラ感は、初めてスピーカーの音を聞いたときに最も嫌な感覚を受けた要素ですから、この点の改善は音楽を楽しく聞く上でとても有効、かつ私にとって大変嬉しい変化です。
また、音がまとまり統一感が生まれたことで、低域から高域までの繋がりが良くなり、ダイナミックレンジが改善、音の流れ、抑揚も顔を出してきました。僅かではありますが、ローゼンクランツの特徴である生々しい音も感じられるようになり、今後の展開に期待を抱かせます。
そんなわけで、「聞くに堪えない音」から「なんとか聞ける音」へステップアップすることができました。この時点で、ようやく「部屋を使って音が鳴るようになってきた」と感じたのも一つの変化です。
3.オーディオラック
次に、オーディオラック内の機器の入れ替えを行いました。元々は、基本に従って上流機器から順に下段から上段に向かって設置していました。それを、DACとヘッドホンアンプの位置を入れ替え、最下段から「トランスポート→ヘッドホンアンプ→DAC→スピーカーアンプ」という順に変更。
結果、何が変わったのかよくわかりませんでした。
本音を書くのがまみそぶろぐ。若干全体のパワー感が増したようにも感じましたが、「言われてみればそうかも」レベルの変化だったので「変化した」と言える確信が持てません。
4.スピーカーのトルク調整
次はスピーカーのトルク調整です。
先に言っておきますが、コレは凄かったです。
ローゼンクランツの技術の結晶と言っても良いのではないでしょうか。今回のクリニックで一番衝撃を受けたのが「スピーカーのトルク調整」です。ちなみに、この技術の延長上にあるのが、スピーカーのパーツを全て加速度がつくように組みなおす「スピーカーの加速度組み立て」になります。
大きな効果を期待できるので、もし将来オーディオクリニックを貝崎氏に依頼することがあるのなら、何よりも先に加速度組み立てをしてもらうのがベストだと思います。
さて、何をしたのかと言えば、簡単に言えばツイーターやウーハーのネジを締めなおしただけです。拍子抜けするぐらいに些細なことだと思われるかもしれませんが、こんなに軽く言ってしまうのは失礼であると思わずにはいられない職人技なのです。
渾身の集中力でもって微妙なネジの締め具合を決めていく様を見ていると、こちらまで神経を削られるかのようです。現場の緊張感も高まり、ピリピリしたムードでした。
具体的には、音抜けの良い順番にネジを入れ替え、そして独自の技術でもってあえてネジを緩めたりしつつ、ネジのトルク調整でもって音をコントロールしていきます。
ここまで書いてしまって良いのか?と思われる方もいるかもしれませんが、誰にも真似できるようなものではないので問題ないでしょう。これだけの技術を持った職人が、今のオーディオ業界にどれだけいるのでしょうか。実際に現場に立会い、百戦錬磨の経験を積んできたからこそ得られる神技です。
結果、ローゼンクランツの音が開放されました。
何だそれは?意味がわからない。
という方には、是非とも過去のローゼンクランツ関連の記事を読んで戴きたいです。生々しく、音が綺麗に流れ、抑揚があり、ダイナミックで迫力ある生きたサウンド。
低域から高域まで、全ての音の足並みがビシっと揃っていてキレのある音。迫力と実体感、スピード感、キレを備えた低域。ロック向きとは言えないスピーカー B&WのCM5で、これだけの低域を表現できるのは異様な光景かもしれません。
また、音が前から迫ってくるという域を超え、部屋全体を使って音が鳴るようになりました。まるで良質なヘッドホンで聞いているかのような音楽と体の一体感。音に包まれるという、以前頭の中で想像していたスピーカーサウンドが今現実のものとなったのです。
システム側で作り上げたローゼンクランツの音が、しっかりと出てくるようになったのです。スピーカーは音の出口、その出口に詰まっていた栓がスポンと取れたかのようです。楽器や声が生々しく、そして空気感や雰囲気がよく伝わってきます。
ヘッドホンシステムで一番重要なのはヘッドホンですが、スピーカーでも同じなんですね。音の出口、ココで全てが決まると言っても過言ではないように思います。いくら良い音をシステム側で作っても、その音が出てこなければ意味がありません。
少し余談になりますが、今回調整を行う際に使用した楽曲はほとんどがへヴィーメタル、ロックでした。トルク調整作業をして戴いた浄氏は、メタル愛好家でスラッシュメタルが大好きだと仰っていました。
そんな背景もあって、私の好みを正確に把握してくれたように思います。スピーカーのトルク調整によって、ロックに合うダイナミックかつキレのある攻撃的な音に仕上げてくれました。メタル特有のグルーヴ感を含んだタメのある縦ノリを見事に再現出来ている点は見事としか言えません。
途中、上空にキラキラと音が広がるようなサウンドも聞かせてもらい驚いたものです。トルク調整で自在に音をコントロールできるなんて、、、まるで魔法、不思議な体験でした。このトルク調整による音の変化は、私のような常人でも十分感じることができるので、実際に目の当たりにすると驚きや感動や楽しさを得られると思います。
この時点で、もう十分に満足いく音に仕上がっていました。しかし、このオーディオルームにはまだまだ潜在能力があるようです。私の「伸び白はまだありますか?」という素朴な質問に、「勿論、まだまだ良くなる」と断言してくれました。
浄氏は、「スピーカーにインシュレーターを使っていない状態でこんな音を出されてしまってはウチとしては困る」と笑っていましたが、この言葉によって改めて「凄いオーディオルームを作ってくれたんだな」と実感すると同時に、「インシュレーター等を使えば数段良くなる」という更なる向上を期待させる嬉しい言葉でもありました。
★課題
ここまで音を仕上げて、自分の好みと照らし合わせて見えてきた課題があります。それは、音が綺麗すぎること。おそらくアンプとスピーカーが原因だと思うのですが、今の音は僅かに美音系です。もっと汚い音、歪んだ音、乾いた音を出すことを目標に、今後音を追い込んでいきたいと思っています。
★SP-Rosenkranz
現在のローゼンクランツの最高峰スピーカーケーブルを体験させて戴きました。SP-Rosenkranz、ローゼンクランツの名を付けているところから、その音への絶対的な自信が伺えます。
SP-3EXというローゼンクランツのSPケーブルからSP-Rosenkranzへ。
クオリティー的に大差は無いように思います。何が変わったかと言えば、特に感じたのが音の流れ、そしてタイミング。流水の如くなめらかに音が流れ、それでいて止まるところはビタッ!っと止まり、スッっと動き出す。
その一瞬一瞬のタイミングの揃い具合が凄いのです。
それによって、音楽、ニュアンスを今まで以上に手に取るように感じられます。
このタイミングの改善が効果を発揮するのはロックや打ち込みでしょう。あらゆるリズム感に柔軟に適応し、ジャンルに合ったベストな鳴り方をしてくれます。このあたりにローゼンクランツの新たな流れ、息吹を感じます。
また、より音が自然になる、加工された感がなくなるのもローゼンクランツの支配力が上がっていく時の特徴です。先ほど「★課題」で述べたような美音感も減少します。打楽器の弾ける音、管楽器の音、絃を引く音、生演奏では決してとろけるような美音にはなりません。
なんとも表現し難いですが、素を内包したという意味でリアルな音です。ローゼンクランツの支配力が上がると、悪い言い方をすればどんどん味気無い音になっていき、それがリアリティーを生み、逆に人間が本来持つ味を引き出します。
SP-Rosenkranz、フラグシップモデルに相応しい素晴らしいケーブルです。
★進化するカイザーサウンド
「★貝崎親子来訪」で少し触れましたが、浄氏と出会って、話を聞くことで、カイザーサウンドの進化は加速するばかりだと感じました。最近のローゼンクランツ製品を見てみると、実は浄氏の作品で溢れています。
インシュレーターで言えばPB-COREという製品は、今までのローゼンクランツからは想像し難い「全てをありのまま吐き出す」というコンセプトに基づいて設計されています。
また、トランスポートやDAC、アンプやタップなど、用途別に用意されている電源ケーブル、これもまた新しいローゼンクランツを象徴しています。ケーブルの設計図を見せて戴いたのですが、数学の行列を思わせる構造図が描かれており、「何気なく使っているローゼンクランツケーブルの中が、こんな複雑な構造になっているなんて・・・」と唸ってしまいました。
このような理論に裏打ちされた製品を見ていると、まだまだ斬新なオーディオアクセサリーが出てくるだろうと安易に予想できるというものです。自分の考えを狙い通りに形にする能力を浄氏は持っているのですから。
もうひとつ面白いお話を聞かせて戴きました。貝崎親子による、I'veサウンドをひたすら流しながらのドライブです。「え?」ってなりませんか?。ローゼンクランツはカーオーディオも展開しており、その中で打ち込み系音楽の探求がされていたのです。
ローゼンクランツとI'veサウンド、まさかこの二つのキーワードが繋がるとは誰が想像しましょうか。へヴィーメタル、しかもスラッシュメタルとローゼンクランツに強い繋がりがあっただけでも十分衝撃ですが、I'veサウンドはそれ以上です。
これらは全て、最近のローゼンクランツの流れである「全てのジャンルに対応する製品」を実現するためです。クラシックだけ上手く鳴る、ロックに向いている、打ち込みが苦手・・・。
こんな得手不得手がある製品は、不便極まりないのは当然のこと。誰もが、一つの製品で全てのジャンルで良さを発揮させたいに決まっています。インシュレーター、ケーブルだけに留まらず、様々なオーディオアクセサリーにこの流れは波及していくでしょう。
★最後に
長くなりましたがいよいよ最後です。
ここまで読んで戴いた方には感謝感謝です。
今回の経験で一番感じたのは、スピーカーシステムのセッティングの重要性と難しさです。ポンと置いただけでは良い音が出ない・・・それがスピーカーシステム。良い音を作り出すために必要な経験値、スキルが、ヘッドホンの世界とは段違いであることを知りました。
今の私には、残念ながら一人でセッティングによって音を自在に操るスキルはありません。これから学んでいかなければなりません。
スピーカーにおいて、そして自分にとって、何が正解で何が間違いであるかがわかりました。スピーカーシステムで目指すべき方向性が定まったので、これからは道を間違えずに進んでいけそうです。
今の私からアドバイス出来る事があるとすれば、「スピーカーはセッティング次第で改善可能である!」こと。自分の好みの音とは違うから新しい機器を買う。それは最終手段であって、その前にセッティングを煮詰めるステップが必要不可欠です。
限界までセッティングを試行錯誤した上で、どうしても納得いく音が出ない場合に、初めて新しい機器の購入という選択肢があるように思います。今あるシステムを最大限活用しましょう!きっと、まだまだ潜在能力を秘めていると思いますよ。