リン・クライマックスDSのセッティング
リン・クライマックスDSの入荷を待って再セッティングに伺いましたところ、DSは既に聞ける状態になっていました。EMMで鳴らすCDとの音の違いはどうなのか?、楽しみに聴かせて頂く事にしました。
「う〜〜ん、今の状態だとCDの方が良いですね」
息子が次のように尋ねます
「CDとDSの使い分けといいますか、使用頻度等はどのようにお考えですか?」
『その都度ディスクの入れ替えをしなくても済む、DSが中心になると思います』。『カイザーさんにプランして頂いたカーオーディオでも、CDよりもipodで聴いていますから』。
「アナログとデジタルならいざ知らず、同じデジタルですから両者の音にあまり開きがあると楽しめないし、面白くないですよね」。「しかし、それを実際に行うとなると、かなりの難題ですよ」
「とにかく色々な曲をかけ足でかけて頂けますか?」
10分程でしょうか、確認に掛かった時間は。CDとDSの音の違いを大体掴みました。
『・・解りました!』
「この音だと、先ずクライマックスDSに繋がっている配線の配置転換や、方向性のチェックをしましょう」。「コンピューター関係は信号のやり取りが双方向だから関係ないだろうと思われますが、色々なファクターによって、こちらが良い、こちらが良くない、といった違いが意外と出るんですよ」。
「はい、繋ぎ換えました、これで聴いてみて下さい」
『情報量も違うし、ノイズっぽさがなくなりましたね』
クライマックスDSの加速度組み立て
「次に気になるのがリンのDSプレーヤー本体です」。「中がどうなっているか、底蓋を外して見ても宜しいでしょうか?」
『はい、問題ないです』
底蓋のネジをフロント部分から後ろに向かって外していますと、最後の4つ目にはワッシャがありません。入れ忘れたのかもと思いつつ反対側のネジも同じように外していると、やはり後ろの一箇所だけワッシャが入っていません。
音作りの段階で意図的にやったのでしょうか?。変わっているというか、拘りなのかは今の段階では分りません。右の写真にありますように、ネジ8個に対してワッシャが6個しかありません。
開けた内部を二人でしげしげと見て、やおら問題点を見つけ出します。先程から聴いていて感じた事ですが、音の安定感に乏しいというか、どこかそっくり返ったようなところがあるんです。心臓部である基盤が天井にぶら下がる形で付いているのがその原因であると診断しました。
基盤等、部品全てが天吊状態のクライマックスDS
基盤の両エンドに3本ずつ、そしてその真ん中をアルミ棒で押さえる形で3本、要するに9本のネジで吊り下げられているだけです。分厚いアルミ無垢材として得られる筈の耐振面での恩恵が30%しか生かされていないように思えます。
しかし、如何に問題点を指摘したところで、構造上どうする事も出来ませんので、ネジの組み換えや、そのトルクコントロールによって、振動の流れにストレスを溜め込まないように、”加速度組み立て”をやってみましょう。
スピーカー等色々な面で、I.Oさんにとって”加速度組み立て”の効果は何度も過去に体験済みですから、高価な機器であってもすんなり任せてくれました。信頼頂けるのは嬉しい限りです。
筐体の精密加工には驚き
傷をつけないよう一つ一つ慎重にやります。小さな筐体には驚くほど精密な加工が施されています。本体とふたの部分に遊びが少ないが故に、雑な組み立てをしようものなら、きしみが発生しかねない危険性をはらんでいて、それは歪っぽさや音の滲みへと繋がってしまいます。
”これがリンの伝統なんだ!”と言われても、ハイエンドの製品にこれだけの危険を冒してまで、このコンパクトサイズに拘り抜くのは、設計の立場からすると艱難辛苦この上ありません。良くも悪くも、この頑固さこそ英国魂なんでしょう。
凄い手応えは伸びしろの証し
このクライマックスDSには、呆れ、感心しながら”加速度組み立て”を施して行きますと、凄い手応えと共に期待感がふつふつと湧いて来るのが分ります。これは今までに感じた事のないものです。
”驚くほどの伸びしろ”と言ったらいいでしょうか。バルセロナ五輪決勝で岩崎恭子さんが見せてくれた、ゴール直前での驚異的な追い込みが私たちの目に焼きついています。正にそれに似た感じです。
そんな初めての手応えを脳に刷り込みながら、最後に本体と底蓋の当たりを見ながらミクロの調整をし、ネジのトルクコントロールを施して完了です。緊張のあまり手にはうっすらと汗をかいています。
さて、もう一度DSをラックに戻し、結線し、再試聴です。
『Ohh!』
いやはや!、凄いの!何の!
完全に化けました!
EMMに勝るとも劣らぬ音です
本体価格280万ですが、この音の違いをDSバージョンアップメニューとして80万円アップで案内しても、聴いたが最後、この差なら「毒を喰らわば皿まで」の諺のように、クライマックスDSオーナー全員がアップグレードするのではないでしょうか。
その差の大きかった今までの一番はエソテリックのトランスポートでしたが、リンのDSが伸びしろの大きさであっさりと抜いてしまいました。それ位大きな違いが出ました。
ウッドブロックからサウンドステーションに変更
さて、本日の仕事のメインとなるオーディオラックの受け方を、ウッドブロックからサウンドステーションに変更します。今回納品するのは現行のセカンドモデルではなく、幅105ミリのハードメイプルの板を1枚1枚手作業で組んで行くオリジナルモデルです。
倉庫に数年間眠っていたのが出てきたのです。音は良いのだけど組むのがあまりにも大変という理由でお蔵入りになった商品です。納品前日に5年振りに組みましたが、思いの外上手く組めました。でもやっぱりこの構造は大変です。組む度に次はやりたくないと思ってしまいます。
ラックから一旦機材を下ろし、サウンドステーションに入れ替えます。そしてもう一度機材を元あった場所に収め、クライマックスDSを予定していたラックの真ん中に入れて基本フォーメーションが組めました。
次にインシュレーターを入れて仕上げに入ります。I.Oさんのところにはローゼンクランツのインシュレーターが沢山余っています。DSのサイズと音の傾向を鑑みDADDYを使いました。
加速度組み立てを終えた時点でその音の変貌振りに驚かされたのもつかの間、更に追い討ちを掛けるように、その先の先に驚愕する音が待っていたのです。何という伸びしろでしょう。PB-DADDYも凄いがクライマックスDSは3段ロケットいやもっとかもしれません。
ここまで処置前と処置後の音の変化の大きさは私の経験の中でダントツ一番です。クライマックスDSをお持ちの方は是が非でも加速度組み立てとローゼンクランツインシュレーターのペアーで攻めて欲しいですね。
ケーブルをRGBaシリーズに変更
電源ケーブルは今日のところは触らず、デジタルケーブルとラインケーブル、そして、スピーカーケーブルを最近のRGBaシリーズに変更します。
■付属の光ケーブル ⇒ DIG-RGB2a
か細い音から力強く逞しい音に
■BAL-RGB2 ⇒ PIN-Harmonious
楽器の織り成すハーモニーと埋もれていた音が溢れ出る
■SP-RGB3 ⇒ SP-Rosenkranz
音の切れ、ノリの良いリズム、強弱のコントラストが際立つ
一新した信号系ケーブルによってスピーカーの口径がワンサイズ大きくなったような鳴り方に変わりました。更にサウンドステーションの効果も凄いのでしょう、"Kaiser Tower"から生々しく臨場感ある音楽が余裕たっぷりに鳴っています。
”カイザーセッティング”によって部屋の隅々にまで音楽が満遍なく届きますから、ソファーに座って読書していても、ダイニングテーブルで食事していても上質な音楽を楽しめます。
この鳴り方はどこにもない芸術性と豊かさ、そして安らぎを与えてくれます。しかし、ひとたびボリュームを上げようなら、眼前にステージが展開し生演奏さながらの迫力が得られます。
"Kaiser Tower"と共にI.Oさんには素晴らしい人生を歩んで頂きたいと思います。