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濃厚・豊満なマッキン・サウンドのアバンギャルドDUO

ジャズ喫茶メグのオーディオイベント

寺島靖国さんが経営するジャズ喫茶メグで毎月第4土曜日に、ジャズオーディオ愛好会の皆さんを中心としたイベントが開かれています。7、8月と連続でカイザーサウンドも参加させて頂きました。

7月は電源ケーブル6社の音の違いをCD化して話題を集めた、T-TOC RECORDS のThe Legend of Cableを中心としたもので、各社持ち寄ったケーブルを実際に試聴し、参加者の挙手によって音の良かったケーブルの順位をその場で決めるといった、K-1トーナメント張りの危険極まりない内容でした。その結果、我が社が○位でした。

8月はインシュレーター主要6社のアコリバ、オヤイデ、カイザー、クライナ、クリプトン、ヒューレンの代表者が集まり、一斉試聴と共にトーク・バトルが繰り広げられました。

インシュレーターに関しては一日の長があるのか、ローゼンクランツの評判はとても良かったです。司会進行はオーディオ評論家の林正儀氏とメグのジャズ・オーディオ愛好会会長の中塚さんとのコンビによって行われました。

当社次世代商品となるBIG3の試聴が始まり、声の表情が素晴らしく良くなったと視聴者の皆さんが感じた時に、寺島さんが『僕はボーカルを聞かないからよく分からない!』と冷めた口調で横槍を入れたその瞬間! 間髪入れずに、一人の男が噛み付いたのです。

『オーディオマニアなのに、ボーカルが分からないなんてあまりにも気の毒過ぎる!』と、哀れむような意見を発したのです。一瞬会場は凍りついたかのような沈黙が・・・。

仕掛けた先制攻撃がブーメランとなって、よもや自分に戻って来ようとは、さすがの寺島さんも想定外だったようです。寺島カンピューターはフリーズし、『そういう言われ方をされると、何も言えなくなる・・・」と本音がポロリと漏れたのでした。寺島さんも人の子でした。

それにしても、メグのオーディオイベントは何が起こるか分からない・・。でも、寺島さんはそんな危険度マックスのスリルを楽しんでいるかのようです。"ジャズ・オーディオ桃源郷"には刺激が必要なんです。


メグでのカイザー単独イベントが12月24日に決定

イベント終了後とは言え、ざわめきと熱気が残る中、『次はカイザーサウンド単独でお願い出来ませんか?』と会長に頼まれましたので、二つ返事でお引き受けしました。

メグでの単独イベントになると、'03年以来ですから9年ぶりという事になります。その打ち合わせを兼ねて、神奈川県厨子の中塚邸をお訪ねし、ついでにオーディオ・クリニックをとなった次第です。

「我がシステムからカイザー・インシュレーターを外すと音にならない! と寺島御大は公言してはばからないし、あのインシュレーターのイベント時の参加者の反応を見れば、会長もローゼンクランツのインシュレーターの一つ位は買って頂かないと、何事も始まらないでしょう!?」。

軽口好きな私が、こう切り出したのです。

『ああ〜ぁ! 勿論買いますよ!』

『あの音は! 素晴らしかった!』

声が揺れながら返って来た答えは、本気ともお愛想とも取れる返事で、豪快に笑って飛ばすところは、どこか大物の雰囲気が漂っています。だから、兵揃いであるメグのジャズ愛好会会長が務まるのでしょう。


何組ものステレオを楽しんでいます

「スピーカーは何をお聞きですか?」 訪問前に伺いました。『アバンギャルドのDUOでしょ、パトリシアン800でしょ、A-7、TANNOY VLZ、JBL etc.・・・』。「一つの部屋にですか?」 『いやいや、三っつですけどね』。「あまり詳しく聞くと、当日の楽しみがなくなるのでこれ位にしておきましょう」。

横須賀方面は久し振りです。島田貴光さんがご健在な時は戸塚までよくお邪魔していました。しかし、横浜市内のジャンクションは何度走っても分かり難く、ヒヤヒヤしながら走るのはとても神経を使います。ナビのお陰で何とか間違えずに到着しました。小高い山の中腹にある閑静な団地に会長宅はありました。


メインシステムはアバンギャルドDUO

うわっ! 思わずのけぞりました! おびただしいほどの機器の山であります。

「よく座が抜けないですね! 1トン、否、2トンはあるんじゃないですか!」

正面にはマッキンの巨大モノラル・パワーアンプ4台が、何か文句があるか!? とばかりに鎮座しています。絵になります。その圧倒的な存在感こそがアメリカの象徴なんです。


その音が、またまたマッキンしてます!

芳醇! 豊満! 濃厚! 完熟!

ホーン型スピーカーの特徴である力強く叩く感じの音よりも、きめ細かい絹やビロードのような風合いの音なのです。追加した3台のスーパーツイーターの影響も色濃く反映された音となっています。アバンギャルドでこの音を狙うのは、自らわざわざハードルを高くしているように思えました。

見た目のシステムの姿と、出てくるサウンドイメージがかけ離れているところが何とも言えません。これは誉め言葉なのか? けなし言葉なのか分かりませんね。コンポにしてもケーブルにしても、高級機になればなるほど、惜しみなく物量を投入し、手間隙掛けますので、どうしてもゴージャスな音の傾向になりがちです。 

「ジャズ特有のリズムやグルーブ感を演出するには、もうちょっと音の頭をハッキリさせたいですね」。

「俗に言う音の入りって奴です」。

「それはそうと、このおびただしいアンプ達はどれが何処に繋がっているのですか?」 

『ミッドのホーンとウーハーがマッキンです、あとはスーパーツイーター3台が、手前の6台のアンプに繋がっています』。


Powered Woofer として鳴らしてみる事を強引に勧める

「ウーハーに内蔵してあるアンプは使っていないのですよね?」。

『内臓アンプで鳴らしている人は一人もいないと思います』。

『ただ外付けアンプの場合は、後ろのレベルコントロールは殆どその変化が聞き取れない位です』。

「だったら尚の事、一度、メーカーが推奨するように、パワードウーハーとして鳴らしてみませんか?」。

「そして、良くも悪くも、そのスピーカーの原点の音を知っておく事はとても大切だと思います」。

『否、それがね、カイザーさん、メーカー自体がライン入力による内臓パワーアンプの使用は音が悪いから、外付けのアンプを使う事を奨励しているんですよ』。『現に説明書にもそう書いてあるんですよ』。

「益々、理解出来ない、何故パワード・ウーハーにしたんでしょうネェ?!」

「では、会長も一度もパワードウーハーとして使った事無いんですよね」

『そう!、一度も無いんだよね』

「だったら、尚の事やってみましょうよ」

「私がウーハーのクロスオーバーとレベルの調整を取ってみますから」

推論だけで話していても何にもなりません!

論より証拠! 先ずはやってみましょう!

「中塚さん、ウーハーから外したマッキンのアンプをツイーターに繋ぎましょう」。 

「これで、中・高音のホーンセクションが同じマッキンのアンプになりますので、二つで一つとなり、システムの殆どをマッキンサウンドがカバーするようになります」


中音・高音ホーンの共振波動が3度違いの関係に

拳の中指の第二関節で、中音・高音ホーンの開口部辺りを交互にコンコンと叩いてみますと、音色が3度違いでバッチリ・ハモります。若しもこれを狙って作り込んだとしたら、私は作者を秀才として崇めたいと思います。

この3度のハモリには驚きました!

嬉しい誤算です!

これで良い音がしないはずが無い!

そう確信した瞬間です。


スピーカーの持ち主自身が初めて体験する鳴らし方

昼間とは言え、薄暗くて小さい文字の表示がよく見えません。持参のペンライトでつまみとスイッチの機能を確認します。LEVELはLINEに切り替え、SUBSONICは20Hz、25HZ、30Hzと選べるので、迷わず30Hzにします。耳は出来るだけスピーカーの前面より前になるようにして、右手は後ろ手に取られるような姿勢でレベルを合わせます。

次にウーハーのクロスポイントの調整です。耳を頼りに合わせ、あとで目盛りを見ると200Hz前後でした。それにしても、付属のアンプを誰も使っていないって事は、マニアのプライドが許さないのでしょうか? ま、そんな詮索事はさておき、音です、肝心な音です。

繋ぎ方を変えてどんな音になったかであります。クロスオーバーとレベルがバッチリ合ったので、読み通り音のタイミングが揃って、アタックがビシッと出るようになりました。

バスドラの風圧もですが、シンバルやハイハットが生き生きと鳴り始めました。さすがに先程の芳醇・豊満な感じは無くなっています。しかし、骨格はこれで良しだと思います。細かい調整は最後の最後です。次に行ったのが部屋とスピーカーとの間に起こる気流のパターン調整であります。

今日の場合は足元にパワーアンプが6台もあるので、動かせる幅に限界があります。しかし、一番小さい幅での音合わせは、カイザーゲージの52.5ミリ四方の中で可能です。


スピーカーセッティング

右のスピーカーを24ミリほど前に、左を13ミリほど前に動かした段階で色々聴いて確認します。ほぼ良い感じになりました。次は微妙な角度調整です。普通のスピーカーに比べるとホーンの開口部が大きいので、耳に入ってくる音を頼りに動かしながらの調整は、普通のスピーカーに比べて何倍も難しいです。

テストには次の6枚を使いました。

:Kenny Barron Trio
:ROY HAYNES TRIO
:GIPSY KINGS
:EAGLES
:TYFFANY Amazing Grace
:John Harrison Trio RomanSun

ケニー・バロンの2曲目=Fragileです。ピアノも左手部分の音が気持ちよくズーンと伸びて来たではありませんか。実在感もあります。スピーカーの音として認識してしまう度合いが減ると共に、ピアノの実在感でありその音色に輝きが出て来ました。

イーグルスのホテルカリフォルニアに至っては、抜群のバランスを見せてくれました。この曲だけはどこで耳にしても、ベースとドラムが不自然に膨らみ、私の頭の中では押し付けがましい音の代名詞になっているほどです。それ位旨く鳴っている場面に出合える事はありません。


ドライブする為の結線に色々な疑問が湧いて来る

外付けアンプの状態では、ウーハーのコントロールパネルを触る事がありませんでしたので、その時の音合わせは今回は一切しておりません。そして今訪問記を書きつつ、撮影したウーハーの操作部の写真を拡大して、しげしげ見ていてふと疑問に思った事が出て来たのです。

接続にはXLRによるライン入力と、スピーカーケーブルを繋ぐバインディングポストの二つがありますが、そこにはLEVELと書いてあるので、いずれの接続にしても内蔵のアンプは必ず通る事になります。とすると、外部アンプを使う場合には異なる2台のパワーアンプが直列に繋がる事になります。これこそマニアが一番嫌う事ではないのか、とハタと頭を抱えてしまうのであります。

少し頭を冷やす為に一寸一息入れましょう。中塚会長は2年ほど前まで茅場町でOSCARというジャズ喫茶を経営していたのです。噂には聞いた事があったので、一度覗いてみたいと思いつつその機会がなかったのですが、その時のシステムがこのマッキンとDUOなのだそうです。

しかし、部屋の四方に目をやればおびただしいばかりの機器の山です。一つ一つはしげしげ見ていませんが、この部屋だけでアナログプレーヤーが5〜6台ありました。それも名器ばかりです。

こちらはDUOとは反対側にあるパトリシアン800のシステムです。クレルで鳴らしているようです。


ローゼンクランツ・インシュレーターの試聴

「会長! 粗方のセッティングは終わりましたので、そろそろローゼンクランツのインシュレーターの威力を聞いて頂けますか?」。

「CDの下に入れて聴いて欲しいのですけど、今のままではボードを外さないと入りそうもないです」。

『しかし、それを外すとラックの棚板はガラスになっているので、あまり良くないでしょう?』。

「その通りですけど、それをもろともしないほど良くなると思いますので、行ってみましょう」。

Tiffanyの"Good Morning Heartache"の歌声も低いところからスムーズで伸びやかです。それに伴い、感情表現がとても良く伝わって来るようになりました。オーディオ的に言うとウーハーとミッドバスの繋がりが良くなった事が一番顕著でした。


ローゼンクランツ・電源ケーブルの試聴

次は電源ケーブルを聴いて頂こうと思います。電源ケーブルは下手なところへ入れるとバランスを崩すので、その心配のないところと言うとやはりCDプレーヤーが手堅いのです。これで入り口は完全装備です。

ローゼンクランツの最大の売りはインシュレーターと電源周りであります。これで会長の顔が曇ろうものなら、私はそそくさと退散するしかありません。ここが信用獲得なるかどうかの関が原であります。

会長の顔色は? 過去に何度といえず、ぬか喜びで終わった苦い経験から来るのでしょうか・・・。すぐには一喜一憂しないと心に決めているかのようです。嬉しさを押さえるように、そして、静かにおもむろに口を開けるのでした。

『随分鳴り方が変わったねぇ!』

『良いねぇ!』

John Harrison Trio "Roman Sun"のドラムのロー、ミッド、ハイとあるタムのリアリティーがうんと増し、シンバルの炸裂音もさる事ながら、タムの上を撫でるブラシの生きた音がまるっきり変わりました。会長はこのブラシの音の変化が一番気に入ったようです。

ネガのピントがバッチリ合った状態と同じように、デジタルデーターの精度アップと見て良いでしょう。これは電源ケーブルとインシュレーターの両輪にて成し得たものです。

又、長年私が口を酸っぱくして唱えている、振動の時間軸と電気の時間軸を揃える事であります。このフィーリングをすべてのジャズファンの人達に、分かって欲しいと切に思うのであります。


スーパーツイーターの調整

『カイザーさん! 次は、外したツイーターを追加して鳴らしましょう!』

ご自分で、スーパーツイーターを足す度に、好みの音に近づいて行った経緯が強烈な印象として残っているのでしょう、セッティングの途中で何度も、最後にスパーツイーターのテストをして下さいね! と盛んに口にしておられたのです。

まるで、飴玉をねだる駄々っ子に、1個だけですよ! とたしなめているような気持ちになり、吹き出しそうになるのを堪えるのに苦労しました。 

「追加するのは良いですが、一つにした方が良いですよ!」

「そして、使うなら無指向性の奴ですね!」

今置いている場所だと奥過ぎるので、DUOのツイーターの波動と、この無指向性の波動とが調和する位置まで前に移動しましょう。そして、無指向性とは言え僅かに方向性があるので、それをも合わせて位置決めしますのでしばらくは動かさないで下さいね。

若し動かしたとしても、元の位置に戻せるようにマーキングしておいてからやって下さい。

豊満! 濃厚! な感じが半分ほど戻って来ました。

それでいて、リスニングポイントのソファーあたりまで、スピーカーによって動かされた初期波動が、部屋の空気を効率よく楽に動かせるようになりました。だから、聴く位置の制約が解かれて、どこに居ても音楽が心地よく聞こえる感じになります。

そんなに沢山の曲では確認しませんでしたが、結果は両者の好みの折衷案的な音になったようです。そんな音に安心出来た会長は、『とんかつを食べに行きましょう!』と近くの行きつけのお店でご馳走して下さいました。


外付けアンプ方式に戻してテストしている

数日後、電話でその後の様子を尋ねると、当日と翌日まではとても良かったのだけど、何故か三日目辺りから低音不足を感じるようになり、現在ではやはり外付けアンプにてウーハーをドライブしているとの事でした。

どうやら、ライン接続によるパワード・ウーハードライブの場合、繋ぐプリとのインピーダンスマッチングにより良し悪しが大きく出るとの情報も入ったようです。特にディスクの録音状況の違いによっての変化が顕著に出るので、外付けアンプ方式を薦めているというのが実情のようです。

近い内にJBL-4345を入れる事にしたそうです。

「奥さんによくも捨てられずに、済んだものですね?!」

『アンタにだけは言われたくない! その言葉、そっくりお返しします』。

かなり前から、私には高性能ブレーキが付いています。

中塚号には、未だにブレーキが付いていないようです。

 

2度目の訪問

三者三様のオーディオスタイル

会長宅にJBL4345が届いたというので、メグでTMDのイベントがあった翌日の日曜日に早速JyaJyaoさんと一緒に押しかけました。会長宅の機器の多さにはオーディオ・ジャングルの異名を持つJyaJyaoさんもビックリ!。 

私から見ると、ご両人の機材の多さについては同類だと思います。ただお二人が決定的に違うのは、オーディオに向かおうとするスタイルです。色々な個性ある音をその時々の気分に合わせて楽しもうというのが会長のスタンスです。

一方JyaJyaoさんの場合は、個性の違う機器達に多様なる表現を求め、マルチチャンネルのメリットを駆使して何十チャンネルもの個の魅力を引き出しつつ、それをいかに一つに纏め上げるかという壮大な考えなのです。それはオーケストラの指揮者に似ています。

これは私がフルレンジ一発で全てを再現しようとしている対極にありますが、テーマであり目的とするところは全く同じと言っても良いでしょう。沢山のそっくりさんを一同に集めるのと、一人で色々なそっくりさんを演じる違いです。要は足し算と引き算の違いであります。


アバンギャルドDUOとパトリシアン800

早速メインのアバンギャルドDUOから鳴らしてくれました。JyaJyaoさんご自身もDUOを持っておられるので、とにかく細部まで知り抜いています。しかし、彼の場合は中高域の二つのホーンセクションだけを、マルチの一部に使うといった変則使用です。

又、彼はDUOのアクティブウーハーは不完全だとさえ言い切っており、アクティブウーハーは倉庫送りとなっているのです。外部アンプを推奨する時点で、ティアック自身もその点は暗に認めている事になります。

明るく華やかなDUOの次は反対側にあるパトリシアン800を聴かせて貰いました。こちらは一変して味わい深い音です。全く正反対のキャラクターですが、お互いそれはそれで聴き方や気分を変えて楽しむには申し分ありません。


オーディオから性格判断が出来る?!

魅力ある音を目の前にすると、会長のように他の事はすっかり忘れてその都度本気になれるのは、それぞれの持つ多様な魅力に惹かれる"現実柔軟タイプ"と性格的に分類出来るのではないでしょうか。

そうすると、Jyajyaoさんと私は、相手にこうあって欲しいと願う気持ちの強い"理想主義者"という事になります。それを物に求めるか? 人に求めるか? の違いとなって現れているのかもしれません。


飛びっきり上物のJBL4345

さてこれから聴くのが、今日の本命となるJBL4345であります。聴く前から、『4345の46センチの低音は魅力あるんだよ!』と会長はすっかりお気に入りのようです。これ以上程度の良い固体は、眼を皿にして探しても見つからないのでは? と思えるほどです。

コーン部分はゴムエッジに張替えられていますが、これまた素晴らしい仕事であります。押してみるに、オリジナルのウレタンと弾力は似ています。これなら元の音を95%は保てていると思いました。

予想通りのJBLサウンドです。最初にかけたディスクがサリナ・ジョーンズと来たから30年前のJBL全盛時代を思い出しました。当時は伺った先で常に鳴っていたのが、このサリナ・ジョーンズやグロバー・ワシントンJr.でした。最近ではさしずめダイアナ・クラールといったところでしょう。


4345の問題点を指摘

私としては、サリナ・ジョーンズの声の出所が右と左で随分違うのが気になって仕方ありません。意を決して会長にその症状と因果関係を説明させて頂きました。右のスピーカーはミッドバスより上から声が聞こえるのですが、左はウーハーあたりの低いところから聞こえるのです。

写真はユニットのエネルギーの方向性を是正した後の物です。

スピーカーの真ん中に身体を置き、先ず右だけを聞く為に頭を右のスピーカーの方へ移動させ声の出所を集中して聞いて貰います。次は同じ要領で頭を反対の左の方に移動して聞いて貰うと右に比べて随分低い所から声が聞こえるのが分かったようです。


マグネットの磁力の方向性が引き起す問題

ユニットの裏に付いているマグネットの磁力の方向性のいたずらがこうした現象を引き起こすのです。常日頃から私が述べている物性の響きの方向性による音の違いが正にこうした形で現れるのです。

ここまでの管理が出来ているスピーカーに過去出会ったのはほんの数台ほどです。それも狙って出来たのか? 或いは偶然にそうなったのか? 定かではありません。少なくとも私の知る限り、「スピーカーユニットのエネルギーの方向性を揃えています」と謳っているメーカーは無いと思います。

会長宅の4345はシステム全体としては左斜め下方向へ音が逃げますので、奥行きの展開は出ませんし、ドラミングの際、大小のタムの位置がハッキリしません。そうした症状をレクチャーし、その意識下で確認して頂きますと、先程とは全く違った聞こえ方をハッキリと認識出来るようになりました。

カイザーサウンドが「音のカラクリ」の解明に取り掛かって20年近くになろうとしていますが、スピーカーメーカーの間でもそんな事があるという事すら知らないのが実情です。即ちその現象に気づいていないのですから、それに対する対策など夢また夢の話です。


正しい筈の判断にも拘わらず、過ちを延々と犯す事に

このようにボタンの掛け違いの中で、アンプとの相性だとか、各種アクセサリーの音の違いに躍起になっても、間違っている状態に合わせようとしている訳ですから、更なる間違いを犯す事に繋がるのです。

一番確かな方法と思われている機器のグレードアップ時に行う「機器のA,B比較」であっても、私の目には「木を見て森を見ず!」にしか写りません。決して全否定している訳ではありませんが、正解から遠ざかる近視眼的なやり方である事を知って欲しいと思います。

このように音に対して正しい判断を下したつもりが、誤った状態を基準にしているのだから、正しい答えを導き出す事は不可能なのです。要するに堂々巡りという状況になるのが落ちです。その方法が肯定されてしかるべきは、機器が正しいコンディションにある時のみです。それが判らないから皆さん苦労するのです。

会長には夕方から用事があるそうなので、手際よく作業に取り掛かる事となりました。会長とは既に信頼関係を築けていますので、気持ちよく「加速度組み立て」が出来ます。又、先日来何かとお世話になっているので、今日は特別大サービス価格で頑張りました。

「加速度組み立て」の完了後は、3枚のルームチューニングパネルの響きの方向性を揃えました。そして、最終チェックには、会長の十八番であるドラムの音を聞きながらアンプの結線を逆相にしてどちら良いかを尋ねました。

二度ほど繋ぎ変えた結果、会長は『こっちの方が自分が叩いていいる時の音に近い』との判断で、正相結線を選びました。会長ご自身はドラムも叩き、今でもバンド活動をしている現役の親父バンドというから恐れ入ります。

ミッドバスとウーハーユニットのアップ写真です。よく見ると、ボイスコイルに繋がっている通称"ナマズの髭"の向きが不揃いになっています。元は全部下向きだったのです。

◎左のスピーカー
ミッドバス → 反時計方向に90度
ウーハー  → 時計方向に160度

◎右のスピーカー
ミッドバス → 時計方向に90度
ウーハー  → 反時計方向に30度

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