通販だけの繋がりではなく顔の見える商売が基本
通信販売が当たり前の時代とは云え、顔の見えない中で売買が成立するという経済スタイルに私はもどかしいものを覚えます。物によっては便利で有難いと思える時もありますが、"微妙な綾が命のオーディオ"に関しては特にそう感じます。
私が納品設置するのと、運送便でお送りしてお客様ご自身でセッティングするのとでは、リズムや音色面、そして、芸術性に於いて格段の差が出るので、オーディオクリニック(お客様訪問)を重ねる度にその思いが強くなって来るのです。
だから機会さえあれば、お客様とお会い出来る事を願っています。又、人との出会いに楽しみや希望を覚えるのは、生きている喜びを感ずる根本がそこにあるからではないでしょうか。
H.Kさんには以前からローゼンクランツ製品を沢山買って頂いております。でも、どんなシステムを組まれているのかまでは知りませんでした。今回の近畿方面への出張に合わせる形で訪問する機会を得ました。
メールでは何度もやり取りしていましたが、言葉を交わしてお話しするのは今回が初めてでした。そんな時の「初めまして」、という言葉を使わなければならない挨拶ほど照れるものはありません。パラゴンと初めて拝ませて戴くSupravoxというスピーカーをお持ちなので楽しみです。
訪問当日の朝、絶好調のカイザーオペル号のエンジンが掛からないという考えられない事が起こり、レッカー車で運ばれるというハプニングに襲われました。約束の時間に3時間も遅れてしまったので、数曲聴かせて頂く位しか時間がなくなりました。
ハイエンド ⇒ マイナーメーカー製へ移行
アナログプレーヤー1台とCDトランスポートが3台、それにSACDプレーヤーが1台ですから、合計五つのソースがあります。
「では、一番のお気に入りの組み合わせでお聞かせ頂けますか?」
先ずはマランツのトランスポートにソウルノートのコンバーターで鳴らすパラゴンの音でした。これといって気になるところもなかったので、すぐにアナログプレーヤーで聴かせて頂きました。
盤に針が下りたその瞬間!
世界が変わりました!
ソファーに座っていたはずの私の腰が、
5センチほど浮いたのが分かりました。
先程鳴らしたCDの音は、
私を油断させる為の仕掛けだったのでは・・・?
今まで聴いたアナログプレーヤーとは一線を画した別世界の音に驚きました。SPに限りなく近い音であり、デジタルに一番近い音です。禅問答のようで何を言っているか分って貰えないかもしれませんが、これがどれだけ大変な事なのか私にはよく分かります。サウンドパーツのそのプレーヤーは、コスト高で生産終了となったそうです。
デジアナこそ違えど、私の目指す音と同じ音がする
私はこの音を、アナログのLPではなく、デジタルのCDで出したいのです。そういう点では、私の出す音であり、出したいイメージに限りなく近い音に初めて出会ったと言っても過言ではありません。
デジタルとアナログの間に生まれたサラブレッドの音です!
私の負け惜しみを一言述べさせて貰えるなら、
私がアナログでこの音を追求していたなら、
もっと早くこの音を出せていただろうに・・・
しかし、当時の業界では既にアナログを捨て、デジタルに舵を切ってしまったのだから、業界人として時間に逆行する事は許されない訳です。何としてもアナログの音を凌駕しなければならない使命が私にはあるのです。
次はフランスのSupravoxのユニットを使った平面バッフルスピーカーを聴かせて頂きます。ウェブを見るとオイロダインからヒントを得たとあります。16cmフルレンジが2本と40cmウーハーが1本です。
キャスター付の台に載せてあるので動かすのはとても簡単です。滅多に見る事の無いスピーカーなので色々な角度から写真に収めました。他社の製品から勉強させて頂く事も重要なのです。
お互いが邪魔しないようにセッティング
パラゴンと一列に横幅一杯に窮屈に設置されていますが、音もやはりその通りでした。パラゴンの邪魔になってはいけないとの考えからこうした置き方になったのでしょうが、やりよう次第では両者にとって音の良い置き場所を見つけ出す事は可能です。
あれこれクリニックして差し上げたいと思ったのですが、今日は車の故障という予期せぬ事態で時間がなくなってしまったので、Supravoxのセッティングだけに絞って良い音を作ってみたいと思います。30センチほど前に出しました。
特に後面開放型のスピーカーは前にも後ろにも空気を動かすので、部屋の壁との反射が従来のスピーカーに比べて複雑になる関係上、いい加減に置いても差が出難い分簡単と言えば簡単ですが、鳴り方の変化の具合を聞き取りながらピンポイントに合わせ込むのは大変難しいのです。