初めて組んだオーディオシステムに苦悩
ヘッドホンとオーディオアクセサリーを本音で論評する事で厚い信頼を得ている、"まみそぶろぐ"のM.Aさんから発売以来大人気のローゼンクランツ・スピーカー(RK-AL12/Gen2)と真空管アンプ(RK2-111B)の注文を頂きました。
"まみそ"さんは私の設計によるオーディオルームを二年前に完成させ、本格的なオーディオシステムを初めて組みましたが、ヘッドホン・オーディオと比べて音の変わる要素の多さと難しさにお手上げ状態となり、しばらくの間ヘッドホン・システムに逆戻りしていました。
スピーカーとスタンド、そしてアンプはご自身で選んだ物です。助言するのは簡単ですが、最初から私がしゃしゃり出たのでは、機器を選ぶ楽しみまで奪ってしまう事に繋がりかねない! との判断で口を出す事は控えました。
もっとも、その相談そのものも彼からはありませんでした。どんな音になったとしても、一度は自分で機器選定するのが良いと思います。それが「吉と出るか凶と出るのか」は、本人のみが知るところです。
私が丸一日張り付き、大工さんを指南しながら完成させた、滋賀高原・原木杉オーディオ壁に対する期待感も大きかったでしょうし、描いていた夢が崩れた時の落胆振りは容易に想像がつきます。
バイオリンの名器ストラディバリウスの如く、技量が高くなるほど凄い音を奏でる反面、セッティング技量が伴わなければ良い音が出ない、二律背反する難局に面してしまったのが主な理由だと思います。最高の音を提供したい! との私の思いが出過ぎてしまったようです。
RK-AL12/Gen2は入念に組み上げます
RK-AL12/Gen2は納品前に細かいところをチェックし、スタンドとスピーカーを一度きちんと組み上げるところまで行います。勿論SPユニットを取り付ける際にはネジの適正を診た上で加速度組み立てを施します。
箱とスタンドの製造は中国ですが、アッセンブルは私が丁寧に行うので完璧な状態でお届けする事になります。その上格安なる費用で私自身が納品セッティングする事を心掛けています。これは迫り来るデフレ時代に対応しようとする、カイザーサウンドの心意気と受け止めて欲しいと思います。
RK-AL12/Gen2が奏でる音楽は、魂に訴えかける魅力があるので大きな満足が得られます。カイザーサウンドはこのスピーカーに全力投球します。今回も東京から兵庫県まで車で納品です。先月は佐賀県まで、その前は広島まで納品に出掛けました。
まみそさんはインシュレーターに始まり、電源ケーブル、電源タップ、信号ケーブル、オーディオラック、サウンドステーションに至るまで、トランスポートとDAコンバーター以外は全てローゼンクランツ製品で固めています。
それら導入時の"まみそぶろぐ"に於けるレビューは、恐れ戦(おのの)くほど克明に綴られていて、ローゼンクランツ製品をここまで精細に分析し論評紹介しているのは唯一無二であると思います。
アンプとスピーカーを納品
その上、今回納品するスピーカーもアンプもローゼンクランツとなってしまいました。もっとも、アンプは中国製のYAQIN(ヤーキン)という真空管アンプをモディファイした物で、カイザーサウンドの技術力を証明・誇示する格好の機器であり機会なのです。
今秋のオーディオショーでは、このアンプを使ってローゼンクランツの各種スピーカーをデモンストレーションする予定です。"まみそ"さんが購入したのは、下記にある2グレードの上級モデルであります。
ハイグレード: | RK1-111B | ¥105,000 |
エクセレント: | RK2-111B | ¥210,000 |
"まみそシステム"は部屋まで含めて、頭のてっぺんからつま先まで、徹頭徹尾ローゼンクランツ思想によって貫かれています。要するに、私にとっては寸分たりとも言い訳が許されない環境なのであります。
スピーカー本体にスタンドを組み付け、エコブラス製スパイク(SK-42)を適材適所に配置し、スパイク受けインシュレーターのCaptainを介して、サウンドステーション上の振動起点を探りつつスピーカーの位置決めを行います。これも職人技の一つです。
"まみそ"さんの好きなヘビーメタルを鳴らして、ドラムの激しいビートとベースのリズムの調和を探り出す作業を行います。このジャンルに関しては息子が得意とするところなので、セッティングの全ては任せっきりです。スピーカーユニットと箱、箱とスタンド、スパイク&スパイク受け、はたまた、サウンドステーションと床との振動の折り合いがつくまでにはその都度30分程の時間を要します。
音の変わる潮目を読み、その度にありとあらゆる調和を計り理想に向けた音を探り出すのです。その調和の中に刻むリズムの正確さと音色の質感、そして最速最大のパワーを捻り出します。そうすると、自ずとピアニシモ時のS/Nも確保出来るようになります。
ブラスプレートでオーディオラックを更に進化させる
楽器の金属的音色のリアリティーを蘇らせる為に開発した"ブラスプレート"をオーディオラックの柱に取り付けます。その取り付けに至っては上下裏表だけでも4パターン、ネジの止め方も4本止めに始まり、3本止めが4パターン、2本止めともなれば6パターンもあるので、合計では11パターンにもなります。更にネジのトルク調整を含めれば無限とも言えるほど音色を自在に変える事が出来るのです。
元々カイザーオーディオラックGen2にはルームチューニング機能が盛り込んであります。4本の柱の曲げ角度によって部屋の隅々にまで音を拡散放出するのが狙いです。スピーカーの間には何も置かない方が良い! というのがオーディオ界の定説ですが、Gen2は真っ向からそれを否定し覆します。
スピーカーの間にGen2を設置する事によって、広い音場と音の定位や実在感を上げる事が出来る一石二鳥であり三鳥を誇ります。この方法は物性その物の自然な響きを利用した音質コントロール法ですから、音が萎える欠点のある電気回路で成すイコライザー等のエフェクターとは"音力"に大きな差があります。
ブラスプレートの力感ある生々しい音色を再現出来る楽器的メカニズムは、強いて言うならば、オルゴールの弾かれたブレードの響き方に似ていると言えます。ただ、この製品を使いこなすには特殊なスキルを要するので、誰でも彼でも簡単にという訳にはいかないのが唯一の欠点です。
えげつなく歪んだエレキギター特有の音色も簡単に出せます。不協和音とも音色とも判別のつかないギリギリのサウンドが、部屋一杯に充満するほどエネルギーの共鳴現象が起こります。
次はモディファイしたアンプの底蓋を開け、全体の鳴り方を掴んだ上で再調整を計ります。主に基板を取り付けているネジのトルク調整で音の摺り合わせを行うのです。正に弦の張り具合で音色チューニングするのと似ています。
カイザー寸法=52.5ミリの生みの親
極め付きはスピーカーアタッチメントです。大小6種類の線径の違うケーブルを52.5ミリの長さで組み上げた、アンプとスピーカー間で引き起こされるさまざまな問題を解消する為の魔法のアイテムであります。
このアタッチメントこそが、ローゼンクランツ・サウンドの起源であります。音の良し悪しには「ある一定の長さの周期がある」と発表した、カイザーゲージの生みの親でもあるのです。
志賀高原オーディオ壁の音の走り具合を見ながら合わせる訳ですが、部屋をもオーディオ機器と共鳴させる考えです。それを成せるのは発音帯であるスピーカーエンクロージャーと、部屋の寸法比をカイザーゲージに則って作り込んでいるから出来る芸当なのです。
部屋とスピーカーが、大宇宙と小宇宙の関係性として成り立っているからこそ、今日の"まみそ邸"では特別な技術を駆使出来るのです。一般のセッティングとは出来る内容でありレベルが格段に高いのです。
カイザー流オーディオルームの凄さを、"まみそ"さんにはじわじわと感じ取って頂ける事でしょう。部屋作りからオーディオシステム・トータルで託して頂いたからこそ実現出来た感動です。
信頼し託して頂いた恩返しに感動の音楽をお届けさせて頂きました。
この度は、有難う御座いました。
Kaiser Sound
Shizuo Kaizaki