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ジャズ喫茶メグの「アバンギャルド・DUO」を解体手術

DUOの音に意気消沈の寺島御大

寺島靖国氏が経営するジャズ喫茶メグにて毎第四土曜日に開催されるイベントには出来るだけ顔を出すようにしています。そのメグのスピーカーシステムがアバンギャルド・DUOであることは皆さんよくご存知でしょう。

各メーカーが自慢の商品を持込み、その音に対して好き放題言い合うのが恒例となっていて、ハプニングが頻発するから目が離せない。そんな興奮冷めやらぬイベント後に、普段の状態に戻されたDUOの音が情けなく感じる時があるそうです。

ある日、寺島さんが、か細い声で・・・

『カイザーさん、この音何とかならないかねぇ・・・!?』


「先ずは、今置いてあるスピーカーの位置を変えないと無理です!」

『動かしただけで解決出来るの?』


「大丈夫です!」

「その為には、スピーカーの組み直しもやりたいですね!」


『じゃぁ! 次のイベントでやってよ』

「簡単に言いますけど、今のブロック受けにカーペットの床では、
動かそうにも動きませんよ!」

「スピーカーベースを作り変える必要があります」

「本気でやるとなれば30万近くかかります」


『それは無理だ! メグは赤字だから・・』


「では、私がひと肌脱ぐしかありませんねェ・・・」

「木工所で作らせると高くなるので、

特別に私が設計図を描いて自作しますよ!」


「二人でホームセンターへ行きましょう!」

『俺も一緒に行くの?』


「そうですよ! 少しは苦労を共にして下さい!」

「材料費だけは、寺島さんが直接払って下さいよ」

そんな訳で豊洲のホームセンターへ二人で出かけました。


私自身久しぶりの自作

事前に下見をしていたので、材料の選定に手間どることはなかったのですが、その日を含めて製作に割けるのが二日しか無い中、裁断、穴開け、ルーター掛け、塗装、乾燥、組み立ての工程を終えなければ・・・。


果たして間に合うのか? 

寝不足状態で、滑り込むようにイベントに突入しました。

この苦労を、寺島さん分かってくれてるのだろうか・・・


イメージは”神輿の担ぎ棒”

先ずは、DUO専用に作ったスピーカーベースの説明を行いました。三寸五分の柱を見つけた時に”神輿の担ぎ棒”をひらめいたのです。寺島さんの人柄への天の恵みだったのでしょう。

これならお誂え向き!

よし! 決まった!


この時点で音のイメージは完璧に出来上がっています。

三寸五分はカイザー寸法で言うところの(1/10kaiser)になります。


そんなラッキーな話から始まり、素材の方向を見切り、前後左右上下と最適な組み合わせにします。DUOの鉄製パイプと木柱が音符の”ドとソ”の関係(1:2/3)になるように作りこんでいます。ユニクロネジ切り棒でその位置関係に連結します。

音楽エネルギーを最大限に受け止めると共に、ルーターによる溝加工で素早い振動放出が可能です。正に”数学と音楽”が両立した理想のメカニズムであります。

完成したDUOのベースを見て息子が一言。

「これはとんでもない完成度だネ!」

「メグではみんな驚くんじゃない!」


組み立てている間は音も出ないから、当初はバラバラにした状態からスタートするつもりでいました。しかし、元の音を聞かずに比較云々は出し物として全く面白く無いので、急遽予定を変更。いつものメグの状態で2曲ほど聞いて貰ったところで、皆さんの手を借りてDUOをバラバラに解体しました。


DUOは構造上振動の迷走が起こる

各ユニットをポールとネジで組み立てる構造のDUOは、組み方次第で良くも悪くも音が大変りします。特にホーンというのはアンプと同じで音を増大させます。各パーツの響きの方向性が揃っていないと振動の迷走状態が生じ、左右の音が揃わないといった問題に悩まされます。

私の経験上では最大で2dBの差が出ます。そうなると大問題ですが、その原因に気づく人はただの一人も居ません。設計したアバンギャルド社だって知るよしも無いでしょう。殆どの人は部屋の左右の壁の違いによって起きると思うのが関の山です。

さて、これからカイザー流の加速度組み立てが始まります。左右合わせて6本のスチール製ポールの配置換えに始まり、ネジやスペーサーに至るパーツまで適材配置を行います。

その配置をイメージしつつ各パーツの響きの方向性を見抜いて組み上げるのです。特にネジの間にあるスペーサーの方向性が重要です。鳥が羽撃くようにエネルギーが外に拡がるように方向管理して組みます。


私の場合オーディエンスが多いほど気持ちが高揚し集中力が増します。いわゆる実践型という奴です。だから、普段の何倍ものスピードでセッティング出来ました。

スピーカーベースをピアノの横に置いただけでただならぬオーラが出ています。だから、スピーカーの設置場所はいい加減な状態でも良い音がするのは見えていたので、余裕で聴いて貰いました。

『音のヌケが良くなった!』

『響きが自然になった!』

『ダイナミックレンジが上がった!』


『声量が上がり音伸びが良くなった!』

『端の席でも低音の輪郭がしっかり聞こえるのに驚いた!』

『上も下もしっかりと伸びている!』


いつもは好き好きだとか、好みの違いだとか・・・

意見がバラけるのに、今日は意見の一致ばかりなのです。


中には、『メグで初めて音楽を聞いた!』

そんな辛辣な声も聞こえて来ました。

この言葉には、喜んで良いのか?!、悲しむべきなのか?!


DUO使いで有名な白河のM氏が酔っぱらって乱入

入り口のドアが開くなり、いきなり大きな声が・・・。

『DUOの加速度組み立ての音を聞かせて下さぁ〜い・・・♪』


二年ほど前になりますが、Mさんはメグジャズ愛好会々長中塚さんの紹介で、共同通信の雑誌の取材を兼ねて、「DUOの解体加速度組み立て」を施術させて頂いた貴重なお方です。その時の経験が今日の自信に繋がっております。

”カイザー”の不思議なオーディオクリニックに立ち会った


今回の目的は私の技術自慢だけではありません。メグの店内でスピーカーが最大の能力を発揮するようにしておけば、今後色々なメーカーのイベントを行うにあたっても、製品の実力が目一杯発揮されると共に顧客からも正しい評価が得られる訳ですから、オーディオ界全員にとって良い事ずくめなのです。

東京には出張で多くの人が集まります。

そのついでにメグに立ち寄ったが、

「素晴らしい音だった! さすがメグ!」

そんな声を聞けると嬉しいので、

機会あらば何とかしたいと思っていました。


オーディオクリニックは私の天職ですから、

オーディオ技術の解明に向けて頑張ります。

ジャズファンの皆さんメグへ足を運んで下さい!

楽しいことが一杯ですよ!

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