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1年掛かりで貯めて買ったRK-AL12/Gen2

必死に貯めたお金だから直接お渡ししたい

昨年の夏にRK-AL12/Gen2をカイザー東京試聴室で試聴し、その音の魅力に虜となったT.Yさんは30歳と若いにも係わらず、健康面に不安があってフルタイムで働く事が出来ないんだそうです。

 にも関わらず、必ず買うんだ!

 そんな強い意志を表す意味で、

 1/3ほどの手付金を振り込んで来られました。


 『それをモチベーションに毎月少しずつ貯めて、

 一年足らずで残りの二十数万円に到達しました!』

 と嬉しそうに電話をくれたのです。


 『感動を与えてくれた感謝の気持ちを込めて、

 現金を直接手渡したいから、

 もう一度そちらの試聴室へ伺ってもいいですか?』


 『自分に生きる喜びを与えてくれたスピーカーだから、そうしたい!』


 「健気です!」

 「東京駅まで迎えに行ってあげるよ!」

同じ一万円札でも彼の一万円は5倍にも10倍にも重たく感じます。こちらも貴重なお金を無駄にしないように活かして使いたいと思います。色々な人に喜んで頂きながらモノ作りが出来る幸せを感じます。有り難い事です。


人並み外れた過敏過ぎる程の感性

T.Yさんは人の声に取り分けて敏感です。複数のユニットに分断された声は不自然に感じて気持ち悪くなるのだそうです。だからフルレンジスピーカーにしか魅力を覚え無いと言います。特に『吸音材を入れると、折角の魅力を吸い取られるようで嫌だ!』 と、ハッキリ口にします。

『4畳半の狭い洋間ですが、上手く鳴るでしょうか?』

『カイザーでは真空管アンプで聴いたけど、

自分のアンプはトランジスターだから、

潤いが無いのではと思って気になります』。


『繋いでいるスピーカーケーブルも、

2ミリのVA単線ケーブルだからキツイ音がしそうで・・・』。

『色んな事が心配で落ち着きません』。

そんな電話を頂きました。


「音を出してみるまでは、

どうにもならないんだから、ゆったり構えたら?!」

「私が納品設置して仮に充分な音でなかったとしても、

今の可能な中での最高の音だ!

と思えば割り切りはつくでしょう?!」


「その時は、何がどうなって、

どうするべきかといいう事を助言して上げると共に、

お金を掛けないでもイイ音になるように考えるから安心して頂戴」。


予想以上に難しかったセッティング

実際に納品日がやって来ました。私がスピーカーを組み立て易いようにとの気配りから、今まで使っていたBOSEのスピーカーを撤去し、部屋は綺麗に片付けてありました。優しい心の持ち主です。

部屋は4.5畳の洋間ですが、壁が薄いベニヤなのとスピーカーケーブルがVAケーブルの単線です。彼が心配していた通り、潤いのある音は期待出来そうもありません。スピーカーは充分に納得行くだけ丁寧に組み上げたので、イイ音を奏でてくれる事を祈るだけです。

スピーカーをセットしただけの最初の状態です。

しかし、産声はキツいものでした。機器の後ろを見ると色々な者がぶら下がっています。全部を撤去して鳴らしてみると、随分力率が向上した音に変わりました。同時にノイズっぽい感じも取れました。

こんなにも不要な物がありました。

次に目を向けたところは機器の足の部分です。薄い皮の端切れを10枚ほど重ねてあるのも、これという1枚だけを残し、他は全て外してシンプルにしました。その際、皮の向きを揃えて使ったのは言うまでもありません。

外した皮の敷物 スッキリした足元

どれも良いと思ってやったことなんでしょうが、やり過ぎはいけません。こうして気になるところをひとつずつ是正して行くと、嬉しそうな音を奏で始めるから不思議です。物にも霊があるのではないかと思いたくなります。

電源タップのどの差込み口にどの機器のケーブルを差してやるのか? どこのお宅で試みても漏れ無く凄い効果が出ます。今日もかなり改善されました。出来る事も残り少なくなった中で、最後は機器の天板に載せてある置物の配置に目を向けました。

最終的なセッティング


キュービックな4.5畳は音作りが難しい

4.5畳というのはキュービックに近いので響きがとても単調です。それらの反射と響きを上手く利用して豊かな響きを生み出すようにしたところ、音楽心と共に美しい音色が誕生しました。

そして、勿論見た目にも美しくなりました。

セットしてすぐは、このt.A.T.uのディスクの音も頂けませんでしたが、最後にはかなり良くなり、ノリノリ、イケイケのサウンドになりました。大ヒットしたディスクというのは、やはり素晴らしいですね!

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