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アバンギャルド:トリオ+バスホーン4台 (2度目の訪問)

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バスホーンと部屋との音合せの重要性

二度目のクリニックは、トリオ部の足場の改善と電源周りの提案がメインです。これはローゼンクランツ製品の魅力を知って頂く事にありますが、もう一つ、カイザーサウンドのセッティング技術という重要な仕事が控えています。

それはバスホーンの最適な位置決めです。こんな低い音を受け持つスピーカーをミリ単位でセッティングをするのは、世界中でカイザーサウンド以外に無いと思います。残念ですが、スーパーウーハーの置き場所の重要性についての認識は、オーディオ界の指導的立場にある人達ですら持ち合わせていません。

大切な事こそが疎かになっている典型例です。

そんな世の定説はこうです。

低音には指向性がないので、どこに置いても問題ない!

この程度のお粗末さにも係わらず、

スーパーツイーターを入れたら低音が変わる!

と宣う訳ですが、そんな事は当たり前です。

ミクロ・マクロに、波は指数関数的に関係し合ってるのですから。


100Hzの倍音は200Hzです。その僅か100周期の中に、1オクターブの12音階が存在しています。方や10,000Hzの倍音は20,000Hzですが、10,000周期の中にだって同じ12音階しかありません。

その差100倍ですが、低音の方がほんの僅かな違いで大きな違いが出るのです。それをどこでも良いというのは、一体音階というものをどう解釈しているのでしょう・・・。 

そんな訳で音の元の元を成す300kg(片側)のバスホーンを動かすのに、今回はお二人に手伝って頂く事が出来ました。メグ・ジャズ愛好会々長でありオスカーサウンドの代表でもある中塚さんと、上海のオーディオクリニックツアーに同行下さったノンフィクション作家のJ.Tさんです。J.Tさんは主に撮影と録音を担当して下さる事になっています。


向き合う左右バスホーンの振幅呼吸を合わせる

私の掛け声のもとに、T.Tさんと三人でバスホーンを動かして貰いました。

「あと5ミリ! 行き過ぎ! 1ミリ戻して下さい!」 

向き合う左右バスホーンの間隔は、殆ど隙間のない状態でセッティングしてあります。アバンギャルドを輸入している会社の推奨なんでしょうか、どこもこうしてあるそうです。

くっつけて設置してある4本のバスホーン・エンクロージャーの呼吸による振幅の山谷が、どんなタイミングで互いにぶつかり合っているのか? その音を聴いて分かる人が居ないとは言いませんが、では、どれだけ動かしたら良い音になるのか! その処置の分かる人は先ず居ないと思います。

この見切りが、後々の音に大きく影響して来るのです。

何と言っても、音で言うところの、ピラミッドの基礎工事部分に相当するからです。正に価千金であります。しっかりとした足場が決まって初めて、その上に載せる中低音以上の音も安定するのです。

両者は強い紐帯で繋がっていなければなりません。 


トリオ部の振動対策を完璧にする

トリオ部のホーンを取り付けている鉄パイプ脚の底には、M8のネジが切ってあるので、ローゼンクランツの最高級スパイク:Giant Spikeと、スパイク受けインシュレーター:Giant Baseをコンビで用意しました。


ホーン型スピーカーはデリケートな音が苦手ですが、この両者を使うと緻密かつ大胆なサウンドが可能となります。更にスピーカーボードには音抜けの良いサウンドステーション3/Mを用意します。

頑丈で精度を確保した床コンクリートに、

30数センチ四角の合板パネルを貼った物のどこに問題があるのか?! 

最良の状態ではないか!? 

何故、サウンドステーションとやらの、

スピーカーベースが要るのか?! 

と、お思いでしょう・・・

では、種明かしをしましょう!


合板は木目の繊維が90°ずつ交差して何層にも貼り合わせてあります。

この構造が振動を金縛り状態にし、

身動きを取れなくしてしまいます。

振動の素早い移動を妨げてしまうのです。


時の流れが音楽です! 音は一瞬たりとも待ってはくれません。

時間軸に於ける正確な振動(波動)移動こそが音楽なのです。

如何なる理由があろうとも、ぎくしゃくしてはいけません。


0.003%しか誤差がないと言われた、正確極まりないダイレクト・ドライブ式ターンテーブルでさえ、マグネットのデジタル的極性変化が音の滑らかさに欠けるという理由で、古いベルトドライブ式に徳俵につま先しか残っていない状態から逆転敗けした訳ですから、如何に滑らかな振動の流れが重要であるかがお分かりでしょう。


そのブロック毎のたじろぎこそが問題なのです。

30数センチ進んでは小休止! 

を延々と繰り返します。


床に敷き詰めたパネルの数だけ、至る所にルール無視のぶつかり合いが発生します。だからこそ、サウンドステーションtype3/Mの出番となるのです。この理に適った構造を御覧下さい。波長の違う振動を縦横無尽にいなし、瞬時に裁くメカニズムを構造に盛り込んでいます。

音楽の振動はすべからく疎密波からなり立っています。従って、疎密波の連続性が問われるのです。あからさまな振動の分断が起こるような状況は、聴感上の音楽性を損ねる事に繋がります。

その為に音の走りの速いハードメイプルの表木と、柔らか目の米松を根太にコンビネーションしてあるのです。その台形型の形状は、振動の走る方向性をコントロールしています。細い方へ向かって7:3の割合で処理します。


オクターブ理論を採用

更に、その幅の寸法も音楽性の高い1対2の倍音と1対2/3の5度を組み合わせているのです。憎らしいほど、音楽理論に忠実に造り込んでいます。音楽的魅力が再現出来るべくして出来る、必然のメカニズムであります。

外径はカイザー寸法の黄金比である、

W525/D630、それを横長に使います。


素材、構造、形状、寸法比、

ボタンヘッド・ボルトによる最適トルクコントロール・・・etc

何を取っても手抜きは一切ありません。

音楽のエキスが満載です。


そして、何より都合が良いのは、スピーカー本体を台座ごと簡単に動かせるので、ミクロレベルでセッティングを追い込めるのです。そのスウィートスポットに決まった音を、ひと度耳と脳が体験してしまうと、カイザーサウンドが忘れられなくなるのです。

それほど官能的で麻薬的な魅力を持っています。このサウンドステーションは持ち込み試聴した時には、100%の成約率を誇っている隠れたベストセラーであります。ですから、これ以上の贅沢は無い完璧な布陣が出来上がります。


失われていた音の強さとタイミングを引き出す

正確無比に描く音の強弱のグラデーションと走りの速さは、どんな物にも負けません。T.T邸の第一印象がアタック音の頭が見えない点とその弱さにありました。その部分を改善する為のプランです。

その負の結果に対して付随する形の原因は電源ケーブル部にもあります。構造や考え方がまちまちなACケーブルは、音楽のリズムとテンポを狂わします。

”一糸乱れぬ”と言う言葉がありますが、

その反対の状態となっているのです。

音楽は何にも先んじて、

テンポが命でなければなりません。


さりとて、同一メーカーで揃えてしまうと、傾向こそ違えど必ずある種の癖の度合いが強くなります。それを避ける為に、それぞれの魅力を上手くブレンドするものだと信じ込んでいるのです。事実、それしかやりようが無い現実の中では仕方ないのですが、本来はそうであってはなりません。

その理想を求めて正しい速度表現と共に電源汚染の究明に明け暮れ、完成させたのがローゼンクランツ・オールマイティー型自動制御ケーブルです。今回はそれをフルラインナップで15本用意して、調和の取れたテンポとリズムを体験頂く訳であります。

この手法はローゼンクランツにしか出来ないものですから、上述の通り、一般論としては通用しない旨をご理解賜りたいと存じます。

電源タップ用: 4本
バスホーン用: 4本
パワーアンプ用: 2本+
プリアンプ: 1本
トランスポート用: 1本
クロック用: 1本
DAコンバーター用: 2本
   

買う物が何一つ決まってもいないのに、ここまで私が入れ込むにはそれなりの理由があります。今回はオーディオの為にのみ用意された部屋ですから、何をどう試みてもガラス張りのように、音の結果が正直に出ると睨んだからなのです。

要するに、ローゼンクランツ製品の実力をテストさせて頂ける場でもある訳です。当然商売ですから、持ち込んだ物を買って頂くに越した事はないのですが、本件以上に正確な音のデーターが取れる環境は将来に渡っても無いと判断したからここまで徹底出来たのです。

ぐるりを吸音材で囲うのは、音楽鑑賞には良くありませんが、音のテストには都合が良いのです。機器から発する第一波の音を正確に読み取れる状況にあるからです。即ち、T.T邸は音楽鑑賞に適した部屋というよりも、オーディオのテストルームとして使うのに都合が良く有り難い部屋なのです。お陰で私のスキルアップと共に、音のカラクリの解明の決定打になる筈です。 


電源タップはNIAGARA Hybridを用意

電源タップは今話題沸騰のNIAGARA Hybridが4台です。左右のバスホーン4台に二つのタップを配し、残りの二つは、プリ・パワーのアナログ系とトランスポート、DAコンバーター・クロックのデジタル系に配します。その下にはNIAGARA Hybridの専用ボードNiagara Stationを敷きます。

何と贅沢な電源でしょう! 

電源周りを総入れ替えした直後の音はというと、私の予想を下回った音しかしていません。今日の為に全て新調しました。その点を引き算しても、これ以上は無い! という電源環境を宛てがってやって、この状態というのは相当重症です。

時間の経過と共に良くなって来るのを待ちます。最初の収穫はというと、一番足を引っ張っている原因が特定出来た事です。それは振動の自己減衰を旨とするアクリルボードのオーディオラックです。

”音の走り”と”音のしなり”を命題とした、ローゼンクランツの音作りとの相性がすこぶる良くないのです。リレー競技で言うところの、バトンゾーンでの受け渡しがスムーズに行かない! そんな感じです。

次回3回目はカイザーラックを用意する事がこれで決定事項となりました。


ジャンボ・ディフューザーの配置転換

初回のクリニックが終わって写真を眺めながら次の戦略を練っている時に、ジャンボ・ディフューザーが側壁だけではなく、正面も後ろの面にも掛けられるような構造になっている事に気がついたのです。

また、シュミレーション配置図を何枚か描くと、素晴らしいプランが浮かんで来ました。左右の側面から2本ずつ減らして6本を4本にし、正面にも4本使うのです。

ディフューザーの位置決め

とにかく殺がれたエネルギーを少しでも取り戻さなくてはなりません。前への押し出しが強いはずのホーン型スピーカーが、普通のコーン型のスピーカーより音力が弱いなんて、百に一つあってはならない事です。

部屋のどの位置で聴いても殆ど音の死角が無くなりました。僅かではありますが、部屋の空気が万遍なく動き始めた事を示しています。前回ジャンボディフューザーを割り振りした時の音に比べると、とても安定感があります。


Stream Reviverの試作機をテスト

昨年の暮れには図面を渡しているのですが、穴開け加工は良しとしても溶接に歪が出るので、一時は商品化を諦めざるを得ない覚悟もしたほど難産に難産を極めた商品であります。予定が遅れている為に塗装前の物でテストする事になりました。

Stream Reviverの容積たるや1リッターほどしかありません。約40畳近い吹き抜け部屋だと30万リッターにも及びます。今日は3本使いますので、それでも1リッターで10万リッターを動かさなくてはならない計算になります。

果たして効果が出るのでしょうか?!

製品の性格上しっかりと効果が現れるまでには30分は要します。それでも5分を過ぎ10分ぐらい経つと、音の浸透力が上がって来るのが分かるようになります。壁面ぐるりが吸音材で囲われている事を考えるとこれは凄い事です。

30分を過ぎた頃を見計らって、瞬時にその効果を聴き分ける為に、ビニール袋を被せたり外したりしてテストをしました。すると、明らかなる音楽の鮮度や力感アップに違いを見せてくれると同時に、響きや潤いも良くなりました。T.Tさんは緊張のせいか、その違いが分かる曲と分からない場面があったようですが、同行の中塚氏とJ.T氏はその効果に驚いていました。


入力機器群達を全員を加速度組立

エソテリックは元々メカに強い会社だけあって機器の筐体はガッチリと組み立てられています。音にもそのまま現れています。肩の力を抜いて強い音にも弱い音にも柔軟に対応出来るように、入力機器部のトランスポート、クロック、DAコンバーター全機器に加速度組立を施しました。

音が一気に開放され朗々と鳴るようになり、緻密さも勿論向上します。大型ホーン特有の大作りな鳴り方一辺倒からデリケートな表現までのオールマイティー型へと変貌を遂げたのです。

この加速度組立はカイザーサウンドの十八番ですから、してやったりといったところです。


オスカーブレード・オスカーキャップ・ローズキャップ

上り調子になった所で更にきめの細かい仕事をしておきましょう。トリオのスタンドパイプにカミソリのような形をしたオスカーブレードを片方に4組貼ります。パイプ鳴きを抑えるとともに巧みにいなす効果を持っています。

半分の位置に貼ることによって、辺の1/2の波長振動を強制的に作り出す倍音発生器なのであります。これは安くて音が確実に良くなる、コロンブスの卵的な隠れたベストセラーであります。

プリアンプのRCA空き端子に被せる真鍮製キャップを装着して、音楽の抑揚や美しい響きを作り出すアイテムです。Oscar Cap、Rose Cap共に8個入りで8,400円です。キャップの頭のマークの違いによって微妙に音楽表現に違いが現れるのです。

それもその筈、回路の基盤と直接繋がっているのですから音楽信号に影響を及ぼすのです。こんな細やかな製品まで用意してあるので、クリニックの現場での細やかな音作りが可能なのです。


吸音材を1枚だけ剥がして音の反射をチェック

それでも音が弱いので、思い切って吸音材を剥がしてみる事を提案しました。耳に一番反応する場所を狙ってトリオと同じ高さのすぐ後ろの1枚を剥がしてみました。効果はテキメンで、音に力が付与されたのが分かります。

機器の性能を計る検聴ルームとしては良く出来た部屋だと思います。しかし、趣味として音楽を聴く部屋としては、今の結果を見る限り、全周に吸音材を貼り巡らしているのは、明らかなる勘違いを犯していると言わざるを得ません。


本日の最終セッティング状態

 

力のあるアンプを繋ぎつつも、スピーカーの上から布団や毛布をこれでもかと覆い被せて聴いているのに等しい行為です。もっと分かり易く例えると、「湯を沸かそうと火を炊きつつ、氷を入れて冷ましている」ような状態と言ったら分かって貰えるでしょうか・・・。

エネルギーをそれだけロスしているのです。

これは反射と響きの使い分けが出来ない事から起こる現象です。

魅力ある音色を手に入れるには、”敵にも味方にもなる反射”と、どう向き合い使いこなすかに掛かっています。音楽として欠かせない響きを生かしつつ、音楽の邪魔をする音の共振ピークやディップを出ないように工夫するとしか言いようがありません。

この音楽や芸術については教えて出来るものでもなく、出来る者には出来るし、出来ない者には出来ないのです。要するに頭の中に理屈と感性が対数関係としてイメージ出来る回路がなくてはなりません。

生まれた時から備わっているかどうか! 授かりものと言った方がしっくり来るかもしれません。それを、人は才能とか能力と呼びます。芸術家やアスリートや冒険家はそんな人達ばかりです。


測定器依存は能力低下の始まり

オーディオ界の皆さんは反射と吸音の比率を重要視します。そして、もう一つは、音の残響時間は何秒が望ましいのか。ほぼ全員と言って良いほど、この三つを基準としているようです。

旧態依然とした考え方が蔓延っているのが実情です。本件とは違いますが、最も酷いのは壁の部分に交互に吸音部と反射部を持って来る、分断された不自然な音を作って平気で居られるのが私には分かりません。そうした一派の人達は決まって測定器頼りです。

ピーとか、ガーとかの騒音を計って、

音楽の何が分かるのでしょう?! 

音楽は人間が演じて人間が受け止め感じるものです。


オーディオ機器のセッティングもさる事ながら、オーディオルームの設計力の低さたるや! 何をか言わんやで、業界人の猛省に期待するしかありません。そうでなければ、高いお金を払ったお客さんに顔向けが出来るものではありません。

プロは頂いた代金以上の感動と満足を提供出来てしかるべきです。

吸音材を剥がして分かったのですが、あろう事か吸音材が貼られている下地材に石膏ボードが使われていたのです。コストカットを迫られる分譲マンションとは状況が違います。

何故に石膏ボードをチョイスしたのでしょうか???

どれだけの材料の比較検討の中からその結論に至ったのでしょうか?!

部屋を構成する物性の振動についてどんな考えを持っているのでしょうか?!

音楽の魅力と石膏ボードほど相性が良くない素材はありません!

現在私もT.T邸と同じようなコンクリートの筐体でのオーディオルームの設計をしているところです。カイザーだったらこう設計する! と、いうものを、年内には公開したいと思います。


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