トップ情報ケーブルRGBaスピーカーケーブル試聴体験レポートコンテスト>物理的性能よりも音楽性を重視する人向き

物理的性能よりも音楽性を重視する人向き



----- Original Message -----
From: "T.W"
Sent: Wednesday, December 30, 2009 3:56 AM
To: <info@rosenkranz-jp.com>
Subject: スピーカーケーブル試聴体験のレポートの提出

 

 

カイザーサウンド
貝崎静雄 様

はじめに

ローゼンクランツ30周年記念のレポートコンテストにおいて、短期間ではあったが、スピーカーケーブルP-RGB1a2.7kaiser(2.83m)を試聴する機会をいただき、以下の試聴結果を得た。素人がプロ中のプロに具申するなど愚行であることは承知の上で、あえて考えたことを述べたい。

1. 試聴環境の概要

試聴にあたって使用した機器:
アンプ:TRIODEのTRV-A300SE
CDプレーヤー:マランツCD94-Limited
スピーカー:ハセヒロMM-151S+PARC AudioのDCU-F131W
スピーカーケーブル:P-RGB1a2.7kaiser(2.83m)、
KRYNA(クライナ) Spca3(2.5m)、
品川電線VVF2.0を使った自作品(1.5m)。

試聴に使ったCD及び評価基準:
クラシック、ジャズ、ポップス、ラテン、ハワイアン、落語、蒸気機関車の音、など様々。再生機器のレベルやCD自体の録音の良し悪しは考慮の対象外とし、三種類のケーブルの再生音の違いのみに注意を払った。自身の聴覚による評価ではあるけれども、できるだけ主観的な要素を排除するために、分解能力、歪みの程度、上下左右と奥行きなどの音場感の形成能力、S/N比などを主な評価基準にして優劣を定めた。しかし、ローゼンクランツの製品は音楽性(芸術性)の表現力を抜きにしては語れないので、これはケーブルの物理的・聴覚的再生能力とは別の主観的評価基準として判断材料に加えた。

再生機器のセッティングについて:
セッティングの重要性を考慮すれば、再生機器の価格や性能の差はさほど問題視する必要はないと思われる。客観的に判断できる要素があるとすれば、三種類のスピーカーコード間での相対比較だけであろう。とはいえ、相対比較の精度を上げるために、一応カイザー単位に従ってスピーカーの位置を定めて試聴した。また、自作および安価な他社性インシュレーターを、アンプおよびCDプレーヤーに取り付けて、できるかぎりよい再生環境をつくるように心掛けた。

2. 比較試聴の詳細

試聴結果の表現には、できる限り主観的要素を排除することを心掛けた。なぜなら「目の前で演奏しているかのような」とか「生きた音楽が奏でられている」などの主観的表現は、試聴している当人にとっては的確な表現ではあっても、これを読む他者にはそれらがどの程度ふさわしい表現であるかどうか、見当のつけようがないからである。また、試聴するケーブルに特有の音や癖あるといった、ケーブル自体の性能を聴き分けた記述もできるだけ避けた。なぜなら、聴きとられた音の癖が本当にケーブル固有のものであるかどうか判断できないからである。単に拙宅の安価な機器から発している雑音かもしれない。よって、以下の音の評価は、あくまでも拙宅の機器によって可能になった範囲で、三種類のケーブルを相対比較したものにすぎない。

比較試聴:
品川電線VVF2.0を使った自作品
とあるサイトにこのケーブルの音を称賛する記述があったので、値段の安さもあって購入し、ブチルゴムおよびアルミ箔などを貼って音質の向上を目論んだ。その上で比較試聴したところ、ケーブルの太さに起因すると思われる基本的な諸性能は、3つの中で最も優れていたように思われた。つまり、情報量の多さや音域の広さ、音の密度などで優れているように感じられた。しかしながらその再生音は、オーディオケーブルとしてつくられていないせいであろうか、他のケーブルと比較して、雑音が多く音の分離が悪い。ケーブルの物理的な優位性から期待される本来の性能を、ほとんど取り出せない状態であった。

P-RGB1a2.7kaiser(2.83m)
製造直後とのことだったので、丸二日断続的にエージングをした後、試聴期間が許す限り使用し続けた。
第一印象は、非常に細いケーブルだということである。これでアンプからの情報を十分に伝達できるのか、不安に感じた。実際、再生された音の聴覚上のS/N比は自作品と変わらず、音域の広さにもさほどの違いが感じられなかった。

このスピーカーコードの最大の特徴は、再生音の音楽性の高さである。そしておそらく、この音楽性を引き出す目的で、再生音中の雑音(雑味)を極力抑制するように工夫して製作されていると思われる。言い換えれば、ケーブルを太くするなど素材の性能を高めて音質向上を図るのではなく、むしろ限られた素材の性能を存分に取り出すことで、高い音楽性を備えた再生音が得られるよう工夫されていると思われる。被服の色やカイザー単位に揃えた長さなど、諸々のローゼンクランツ独自の技術の目的は、こうしたことにあるのだろう。これは、他社製品がS/N比や解像度の向上などの物理的・聴覚的音響効果の優秀性を追求しているのとは対称的な取り組みであるように思われる。ローゼンクランツは、新しい高性能の導体や被服の素材を採用したり、防磁や振動対策を施したりといった、物理的処理で得られる再生能力の向上だけでは達成できないものを目指しているように思われる。

KRYNA(クライナ) Spca3 2.5m
比較試聴のために購入した。ケーブルはローゼンクランツ製同様、非常に細い。数日のエージングの後試聴したが、ローゼンクランツ製同様、ケーブルの細さに起因すると思われる音域の広さや迫力は、自作品に劣るようである。しかし、それ以外の音場、解像度、音の生々しさといった物理的・聴覚的再生能力は、いずれも三種のケーブルの中でもっともよいと感じた。このケーブルを使うと、音量がかなり上がったように感じる。また、音を小さくしても、音質はさほど変化しない。髪の毛より細い導線を束ねるなど、豊富な新技術を導入しているためであろうか。KRYNAが標榜するホログラフィック・サウンドは、このケーブルを試聴する限り、拙宅の安価な機器でも決して達成不可能なものではないと感じた。
ただ、物理的・聴覚的再生能力の向上に対する努力とは裏腹に、音楽性についてはあまり注力されていないようで、この点でローゼンクランツとの差が顕著に感じられた。

3. 結論:

上述したことから、P-RGB1a2.7kaiser(2.83m)の優れた音楽性は高く評価できるが、物理的・聴覚的再生能力という点では他社製品よりも優れているとは思えない、との結論を得た。したがって、物理的性能を重視するなら、SP-RGB1a2.7kaiser(2.83m)のコストパフォーマンスは、必ずしも高いとは言えないだろう。しかし、物理的性能よりも音楽性を重視するなら、ぜひとも購入すべき思われる。
とはいえ、再生能力を考慮せず、ただ音楽性を優先して製品を購入するような顧客は、今後次第に少なくなるのではないだろうか。ローゼンクランツ独自の理論とともに新技術の導入によって、音楽性の向上はもとより、他社製品に劣らぬ再生能力の向上に取り組んでほしいと感じた。



← Back     Next →