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明るく粒立ちの良い歯切れの良い音を実現する



----- Original Message -----
From: "T.S"
Sent: Thursday, January 07, 2010 6:41 PM
To: <info@rosenkranz-jp.com>
Subject: Re: 試聴レポートコンテスト参加希望

 

 

応募動機と背景:スピーカーケーブル試聴レポートコンテストに至った経緯を報告する。

私は、音楽を“楽しむ事”に興味があり幾つかの機器を導入していたが、最近になって更に良い音で聴きたいと考えるようになった。つまり、ライブと比較し臨場感が無いという欠点が耳に付き、今ひとつ楽しめないのだ。目の前で演奏や歌を唄っている雰囲気を再現(近付け)して、より音楽を楽しみたいという想いから幾つかのチャレンジをする事にした。

私は、そもそも“オーディオ”という言葉が嫌いである。というのも、音楽を楽しむ事以上に機材やアクセサリー関係に神経質になり本来の目的を忘れている。そんな響きを“オーディオ”という言葉から感じるからである。機器やアクセサリーを“いじる”楽しさも解らないではないが、私にとっては音楽を楽しむ事以上に一生懸命になる必要は無いのだ。
よって、セッティング等は早く解決してしまい“音楽を楽しみたい”のである。

音楽を楽しむ為に、ある程度の音を出せるようにしたい。そうした事から、書籍やインターネットで調べを進めるのだが、その情報はあまりにも怪しく不信なものが多い。あまりにも科学や物理に反するような説明やそれに伴う商品の売り込みには閉口してしまう。そんな中でも、幾つかの情報には有効なものもあり知識として得る事ができたものもある。
ローゼンクランツのHPに出会ったのもそんな事からであり、今回スピーカーケーブルの試聴をさせて頂けるとのことで応募に至ったのである。特にクリニックというサービスを持ち全国をまわられている事から、知識のみに偏らず、経験則におけるセッティング技術を持った方であると推測し一端に触れたい想いである。

私に取っていわゆる“オーディオ”という趣味は無く、好きな音楽を良い状態で聴きたいと想うばかりである。好きな歌手やバンドが目の前で演奏してくれれば「これより幸せなことはない」のである。
その為に、ある時期は自分で調べ検証することにより、その環境を作りたいと考えているのだ。

結論:RosenKranz SP-RGB1aは、明るく粒立ちの良い歯切れの良い音を実現する。それは、実際に録音で意図した音を再現するものでありレコーディング時の雰囲気を伝えるものである。

スピーカーケーブルとして抵抗が小さく不純物を含まない材料を選択することが一般的に音響に良いとされる。純度を上げ抵抗を下げる為に高価な材料を使うケースが見られる。世に出まわる高級ケーブルには、そうした物が多く、その効果に不信感を抱くものも少なくない。

抵抗を下げるだけなら、高価な材料、純度など言わずとも、ケーブルを並列にすれば抵抗は容易に半分にすることが出来るのだ。他の要因により音響に影響することがあるとすれば、それを明らかにして行くことが多くの音楽を楽しみたい人の助けになると考える。

幾つかのケーブルで幾つかの条件を設定して評価すると、科学的に証明された内容に関わらず体感的に良いと思われる音があることが解る。今回幾つかの推定を行って実験を行ったが、抵抗値とは別な要因があり、ケーブルの太さ、長さにバランスのポイントが感じられる部分がある。非科学的な怪しい世界に持ち込むつもりはないが、最終的には計測器の判定では無く“人がどう感じるか”が重要である。また、高価な材料や抵抗値が低ければ音響に良いと言うものではないと考えることが出来る。そういう事から、必ずしも定量化し評価することが絶対ではない、ただし自身が感じることで評価しなければならない部分が重要である。

今回、試聴したRosenKranz SP-RGB1aは、高級ケーブルにありがちな極端に太いスピーカーケーブルとは一線を画し、経験と丁寧な仕事から生まれたものと考えられる。それは、必要かつ適切な材料選択と断面積と長さの調和から実現されたものであると推測できる。人間の感性に訴える音、すなわち録音で意図されたもの、さらにはレコーディングの雰囲気をも伝えるものであると評価した。

推定:スピーカーケーブルの選択、評価についての整理をした
科学的な見方であるが物理面から既成事実であるものも多い。それらを敢えて整理してみた。

a.スピーカーケーブルは、抵抗が小さいものが良好である
・ スピーカーケーブルに使用される材料は、導体そのものの抵抗が低く音響面でも良い特性を示す
・ オームの法則から抵抗値は断面積が大きく長さが短い程に抵抗値が低く音響面でも良い特性を示す
・ その他接触抵抗が存在するが、他の要素の方が大きく極端な事がない限り無視できる

b.ケーブルに使用される導体に方向性は無い
・ 銅線製造の工法としての方向性はあるが分子構造に影響は無い
・ 分子構造に変りが無ければ電流の方向性に与える影響は無い
・ 導体に電流を流しても分子構造に変化は無く、これにより方向性やエージングによる特性変化は無い

c.ケーブルに音響信号を流した時に発生する振動は音響に影響しない
・ 信号によりケーブルが振動することはありえるが、それは無視できるレベルである
・ 振動の速度より音響信号の速度の方が圧倒的に速く、与える影響はほぼ0と考えられる
・ ケーブルに敢えて極端な振動を与えても音響に影響することは無い
(他にも挙げだしたらキリがないが、今回検証できるであろう範囲に留めた)

検証:幾つかのスピーカーケーブル(単なる銅線も含む)を使用して音響への影響を調べる。

実験に使用したケーブルは、銅のOFCレベルおよびそれのメッキ線、電気屋内配線で使用するVVF、チャイムコードで使用するAE線が銅の単線の断面積違いなどである。これに加えて、RosenKranz SP-RGB1a(お借りしたものなので切断するなど手を加えることは出来ないが)を比較対象とした。

実験の内容については、これらを種類別に長さを変える等して評価をして行く。機器を使用した評価を行うのでは無く、敢えて人間の耳にて行う官能検証として概要を報告するものとした。それは、機器は認識されているものを定量化するに過ぎず、測定された結果がすべてであるという認識に立つのは無理があるとの認識である。私は私の理解と納得の為にこれらを実行するが、できれば何らかの指標を得たいとも考えている。

極端に長くしたケーブルでは、スピーカーから出力される音量は小さくなり音の輪郭もぼやけて行く。特に高音成分が減衰することがその原因と思われる。それに対して、ケーブル長を短くして行くと音がハッキリしてくるが、ある程度の長さより短くなると聴覚で識別できる差は無くなる。おそらくダンピングファクターとの関係と考えられ、アンプとスピーカーの能力により補完されるのであろう。よって、能力の低い機器にて検証する方が容易にケーブルの評価が出来ると考えられる。また、ホワイトノイズを流し、アナライザーで測定すれば主に高温成分の減衰により確認できるところがあるであろう。

ケーブルの種類に関わらず、長さと太さ(導体の断面積)の関係から、音が活き〃して感じられるポイントがあるようである。ケーブルの種類の可否については敢えて記載しないが、細いケーブルでは長さの選択枝が少ないものと考えられる。また、活き〃したポイントは程度の差はあれどのケーブルにも存在する。

導体のメッキ、単線、複線の差は感じられず、メッキは導体の保護(酸化防止)、複線は取扱性を考慮したものであると考える。業務用使用を考えると耐久性や取扱性を考慮する必要があり、そういった事を意識したメーカーと製品の仕様が全体の流れを左右したものだろう。個人使用での選択では、まったく違った見解を持つことができるのでこれらにこだわる必要は無い。

ケーブルの方向性に関しては、エージングの必要性などと含め理解できるものでは無かった。機器や室内環境の変化により影響が出ることはありえるので、変化があったとしてもそれらの影響の方が大きく、検証できる状況ではなかったと考えるのが良さそうである。しかし、それらを含めても方向性、エージングの影響は極僅かなものであると考えて良いと判断した。
RosenKranz SP-RGB1aについては、借用したものだけに指定された接続方法のみでの比較検証(ベンチマークテストの対象)とした。

問題は振動に関する検証である。故意に振動を与えるにしても適切な実験機器も無い上に、場合によっては別な影響(ノイズの発生等)も考えられ検証方法を持っていないのが実際である。幸いにも実験機器を借用できる環境があり、本件だけは定量的な評価にて簡単な実験を行ってみた。ここでは、音響機器から離れておりこの検証の基本としてきた官能検証も行っていない。

パルスジェネレーターにてパルスを発生させ、シンクロスコープにてその波形を観察する。振動試験機で発生するノイズを事前確認した上で、ケーブルを試験機に取付けて振動を与える。パルスジェネレーターで発生した波形と振動試験機のノイズ以外の変化が音響にも影響があるであろう内容となる。パルスと振動の周波数を幅広く検証するも変化は認められず、この検証からはケーブルの振動対策は不要であると考えられる。
これについては、適切な検証方法を準備できなかった為に、あくまでも定量化できる範囲において行った代替実験であったことを報告しておく。これを断る理由は、今回は官能検査を主体とし人間が感じる音楽という視点で評価してきたからで、本来正しい実験方法であろう機器を使った定量的分析は今回代替手段であったからである。

これらの事から、ケーブルの抵抗とは直接関係の無いところで適切な長さによる音響の変化があることが解り、方向性や芯線の本数、メッキ、絶縁体の影響は確認することが出来なかった。ケーブルに関しては、物理的に無いのが理想である筈だが、アンプとスピーカーを接続する必要性から電気的接続媒体として“あるもの”として設計されているのだという考え方が出来る。適切なケーブルがセッティングされることによって、意図した音響が得られるという考え方だ。アンプとスピーカーの設計者が異なれば意図した、媒体は異なり一般ユーザーはそれを耳で確認する他はない。

長さに関しては、ローゼンクランツにてカイザースケールなる考え方があり、RosenKranz SP-RGB1aの長さ違いの検証を行いたかった。カイザースケールの有効性についても評価がし切れなかったのが残念である。疑問に思われるのは、ケーブル長さに於いては、測り始めと測り終わりの位置を理解し辛いこと、私の検証では材料や太さとの関係もありポイントが夫々異なるのではないか?という結果からである。

今回は、官能検証を行ったが、人間の耳や記憶さらには、その時点の環境や心理にも影響されるところがあるであろう。先入観を持たずに検証を行ったが、私の判断がどれだけのものであったかも不安定要素として含める必要がある。
また、これらの検証から、購入したものをセッティングする事の重要性。少なくともユーザー自身の耳や感性による調整を行う必要性を強く訴えたい。何の調整もせずに、機器やアクセサリーを購入し設置したとしても良いリスニング環境は出来ない。ある程度はコストのかかる部分もあるだろうが、自分で作り上げるべきものがあることは間違いない。これらは、神経質なものであってはいけない、ゆったりと音楽を楽しむための一時的作業であり、いくつものパラメタ調整を永遠に繰り返すものではない。

その為に必要であろう道しるべとして、先人による適切な指標や手順などがあれば本当に嬉しいのだが・・・。
                                           
―以上―



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