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加速度組立は命のメカニズム

「信義為本」

「上層向上と現状打破とは輪廻の如く」と思いつつも、冒険心と私の好奇心は子供と同じく留まるところを知らない。「自分自身の向上度合いが知りたい!」という欲求が、技術向上と音の成長に伴って段階的にもたげて来るのだ。

その一点に絞る意味でも、今回はタイヤは買わずに加速度組立だけにした。タイヤ交換をしなかった分、加速度組立の期待感は否が応にでも高まる。とは言え、ゴムその物の生命に寿命があるのは明らかだ。

どうせすぐに、新しいタイヤで組み直すのは目に見えてるが、出来るだけ多くのデーターを身体の中に叩き込みたいのだ。それもこれも、全てはオーディオの生きた音作りのノウハウ蓄積の為である。

一度や二度のトライアルで、さもモノにしたかのような口の開け方はしたくない。得心が行くまでやるのがカイザー流。見えるところも見えないところも、手を抜かないでやりたいと思っている。そこだけは譲れない! 何故ならば、「信義為本」が貝崎のDNAだから・・・

過去を振り返ってみれば、加速度組立とタイヤの新品交換を二段階に分けた場合、往々にして後者の効果の方が大きかったのは事実である。タイヤも諺の通り「歳には勝てない!」のは当たり前である。

さて、今回はどういう結果になるのか興味深々だ。


ランチア・カッパの加速度組立

あの餅のような独特の乗り味はタイヤを外した際に足回りを覗いて見て納得出来た。車体の骨格と車軸を受ける為のアーム部分の形状や比率が、しなやかさとなって上手くマッチしているのだろう。

何事も塩梅なのだが、

長さの比率配分ほど快適感と密接に関係するものは無い。

これが、この最近の私の研究から至り着いた答えである。


それは、私がいち早くから提唱していた、

”振動の時間軸”という概念の感覚なのだ。

「速度の時間軸」と「周期の時間軸」の両方が合って、

初めて音楽になるのである。

命あるもの全てそのメカニズムで成り立っている。


快・不快感は長さの比率配分次第!

音楽は振動であり数学である!

数学と音楽はピタゴラスに終始する! 

オーディオこそ、ピッタリそれが当てはまる!


今回のホイールに取り付けるウェイトで気づいた事がある。以前は見るからに”鉛”だと判る物だったが、今日の物はよく見ると”Zn”と書いてある。恐らくエコロジー政策の一環として亜鉛に代わったのだろう。アルミホイールとの馴染みをイメージすると鉛より亜鉛が良い筈だ。

ホイールバランスを取る際、沢山ある同じ数値のウェイトの中から一個を選び出す私を見て、トドちゃんが『自分にも選ばせて下さい』と言うのだ。前回300Cの加速度組立後の走りに強いインパクトを受けたようだし、試乗ドライブも嬉しかったのだろう。

彼の目は生き生きと輝いている。


しかし、どういう加減なのか、このカッパはネジの適材配置が難しく、確定までに随分と時間を要した。トドちゃんが間に入った事によって、私の意識が二つに分散した事もあるのだろうが・・・

それ以前にホイールキャップを外す為の穴探しからして手間取ったのは、カッパの加速度組立の難産を予告していたのかもしれない。結局のところ、どれをどこに使っても、その差が出難いのだろうとの結論に至った。

要するに出来の良いパーツでまとまっている証拠である。

”トドちゃん”が、前回あたりから、

『これが、ここじゃないですか?』 とか、

『次はこうでしょう?』 とか、

言って来るようになった。


『何となくですが・・・、分かるような感じがするだけです』と言葉を濁すが、

次第に私のイメージと重なる確率が高くなっているのは事実だ。

意欲が向上したり、意識を高く持つようになると何かを掴むのだろう・・・。


技術は教わるのではない! 盗むものだ! 

そんな言葉を思い出した。


従って、今回のカッパの加速度組立の半分は、

”トドちゃん”が行ったと言っても良い。


ボルト締めだけは、初めての時から任せっきりだったのだが、ここまでになれば、全てを任せたとしてもかなりのレベルの事をやってのけるだろう。特に最後のトルクレンチでボルトを締める際の、「カキーン」という音に対して、

『もう1回でしょう?!』とか、

『ここは2回ですよね?!』

とか言って、敏感に反応するようになった。


手つきが良くなったのもそうだが、耳を使うようになった事が大きい。トドちゃんが立派なタイヤ職人への道を歩むのは間違いないだろう。彼の表情がそれを物語っている。男4人兄弟の長男と言う事だから頑張って欲しいものである。

いつもの事だが、私が加速度組立を頼むと必ずその日のラストに組んでくれる。途中で他の仕事が割り込むと、集中力が途切れるというのを彼自身が感じているからだ。有り難い事である。

ランチア・カッパの加速度組立を二時間半掛かって完成! 

この後、『南砂の方へ友達と花火を見に行く約束をしている』というので、

タクシー代わりにカッパで彼を送ってあげた。


いきなりカッパが、「ヒュイーン!」と離陸した

加速が凄いという意味ではない、

むしろ、スロスターターである。


車が路面に浮く感じなのだ!

『この優しい乗り心地は、まるでマシュマロのようですね!』


足回りの柔軟さもさる事ながら、

フラウ社製のシートの感触も大きいのだ。


ランチアの芳醇なフィーリングは、

カイザーサウンドが最後の最後に必要とするものである。

とうとうここまで来たか! という思いで一杯だ。

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