トップ情報寺島靖国スペシャル>その39 「20畳以上なければアバンギャルド・トリオは鳴らない?」

その39 「20畳以上なければアバンギャルド・トリオは鳴らない?」


 寺島邸のアバンギャルド・トリオを聴いたのを機にふと気になることが出てきました。それはステレオサウンド誌150号「世界のハイエンドスピーカーその多彩なる音響美」の中で取り上げられた、アバンギャルド・トリオを聴いた4人の評論家による集中試聴の評価や対談の内容です。

 選定された16機種すべてについては目を通していませんが、気になる機種だけは読んでいました。その中でもアバンギャルドについては良い印象として残っていませんでしたのでもう一度読んでみる事にしました。やはり4人とも能力は認めつつも聴けた状態ではないという事を言っています。

 語り始めの菅野氏の言葉からしてホーンに対して勘違いがあるように思います。『アバンギャルドのスピーカーはホーン型の中でもきわめて特異なスピーカーだ』と言っておられるますが、確かに今まで主流であった四角い形状の物からするとその通りで異論はありません。しかし本来ホーンというのは音の事を考えるなら丸いのが本道で、作りやすいし、積み重ねやすい、また梱包や持ち運びにも利点がある関係等から角型が多くなったものと思います。蓄音機しかり、ホーンというのは丸い物で、アバンギャルドは基本に忠実に理想を求めて作っただけです。

 集中試聴に使われた部屋のサイズは20畳ほどの広さらしいですが、『無理して後ろに下げて置いたとしても、それでもホーンの開口部から試聴位置まで2m70cmしか取れない』とあります。その結果として『3つのホーンのブレンドする以前の音しか聴けない事になり、現に今鳴っている音はバラバラだ』とさえ言っています。また、その距離は最低でも4〜5mは必要との事。

 三浦氏 『今日の音はとにかく部屋に入れて無理して鳴らしたという感じ』と述べています。

 柳沢氏 『インパクトのある音の可能性は伝わって来たものの、今日の音は音楽をまともに聴けるものではなかった』とハッキリ語っています。

 傅氏 『鮮度は感じるけど聴いていて落ち着かない』。

 
 このように4氏ともに良くない評価はハッキリしています。

 また、『このスピーカーはセッティングが難しい』と口を揃えて言っています。

 どんなスピーカーも難しいといえば難しいし、簡単といえば簡単です。

 要するにどんなスピーカーであれ、セッティングには高度な技能が要求されます。


 今現在鳴っている音が良くないのは分っているけれど、

 どうしたら良い音になるのかに対しては、

 誰一人として口を開けようとはしません。

 簡単に言ってしまえばほんの数センチスピーカーを前後して、

 その部屋とスピーカーとの和音関係を紡ぎ出してやりさえすれば、

 いっぺんに皆さん方の音の評価は変わるのです。


 食べ物を食べて美味しいとか、不味いと言った感想を述べるだけなら誰でも出来ます。

 その場に立ち会ったスタッフをも含め良い音にした上で聴かなければ、

 機材を提供してくれた会社や製作者に対して義を欠く事になります。

 日本を代表する評論家だという自負があるのであれば、

 その場でセッティングの問題点を指摘し、

 即座に良い音にした状態で聴くのが責務ではないでしょうか。


 変形12畳の寺島邸で日本でも1、2と思えるほどの音を現実に体験したからです。

 スピーカーをその部屋に於ける「音楽波動」に乗せてやりさえすれば、

 ホーンの開口部から最低1,8mあれば鳴ると断言します。

 もちろん大きな3つのホーンの音も一つにまとまりハーモニーします。

 菅野氏の言っている「音がバラバラ」と言うのは、

 試聴位置までの距離が短いのが原因ではなく、

 部屋とスピーカーの位相が合ってないのが原因なのです。

 いくら広い部屋に入れたとしても、

 「音楽波動」に乗せなければどこまで行ってもバラバラです。

 
 「音は見れても、音が診れない!」。

 その場で直せて初めて診れた事になるのです。


backnext