カイザー節が炸裂
ジャズ喫茶メグでのイベントはクリスマスイブという事もあって、お客様の入りを心配してたのですが、先月のTMDさんの立見で溢れるまでにはならずも、何とか満席に近い状態になりホッとしました。
喋り始めるや否や、カイザー節が炸裂し、独演会になろうとするその暴走を『どうやって止めようか!?』と、呆然・苦慮する司会進行役の中塚会長と私のやり取りが、生漫才をやっているかのような緊張感と面白さがあったようです。
『まぁ! まぁ! カイザーさん! 長話はそれ位にして、ここらで、ケニーバロンのピアノトリオを1曲聞いて頂きましょう』
『カイザーさんが喋り出したら止まらないんだから・・・』 入り口に陣取っている寺島御大の声が・・・
スピーカーのセッティング技術に驚きの声
今日の出し物のメインは今売り出し中のフルレンジスピーカーのRK-AL12/Gen2です。開演ぎりぎりまで準備に時間を取られていたので、適当に置いただけでのスタートとなりました。
全く調和のない音に私はやり切れず、お客さんに背を向けた状態のままスピーカーの位置調整を始めました。サウンドステーションUにスピーカーを設置していたので、思い通りに動かす事が出来ました。クリニックに伺った先でいつもやっているように、ほんの4〜5センチの間隔を前後左右に微調整するだけで音の調和を取って行きます。
あっという間に完璧な音空間を作り上げたものだから、会場の皆さんは何がどうなって音が変化しているのか、まるで出世魚が、やず→はまち→ぶり、と見る見る大きくなって行くのを見る思いだったでしょう。
已む無く始めたスピーカーの調整法と、その音の変化具合に皆さん方は驚かれたようです。私は決して試聴位置へ戻って音を確認する事はありません。スピーカーを動かしながらその場でセッティングしますし、スピーカーの後ろからでも音合わせが出来ます。
前席左端、即ち右のスピーカーより外に座っている方が、『こんな部屋の端にいても音が見事にスピーカーのセンターに定位して行くのが分かった』と私に耳打ちしてくれたのです。
オーディエンスの「凄い! 凄い!」との囁きが聞こえる様子に気を良くした会長が、曲が終わると同時に、『如何でしたか?』と問いかけると、会場からはヤンヤの大喝采が起こったのです。
そこで私が間髪入れずに、「この程度の事で喜んで頂けるなら私も楽なものです」。「しかし、私が今日出そうとしている音の目標からすると、現時点の音は18点〜20点位のものです」。
いつものように、私は大風呂敷をひろげました。
BIG3インシュレーターの威力
特に10月に発売したばかりのローゼンクランツ・インシュレーターBIG3をCDトランスポートの下に入れた時は、メグの空間が大化けした瞬間でもありました。RK-AL12/Gen2からウッドベースのエキゾチックでうねるような低音が正確なピッチで展開し始めたのには、正直私もちょっとビックリでした。エンクロージャーの設計の成せる技でもあります。
『さて、今回で点数はどれ位まで行きましたでしょうか?』
口々に、『35点! 38点! 40点!』
またまた、会場は大拍手です。
それは、それは、楽しいクリスマスイベントになりつつあります。
「これ位の事で喜んで頂けるのなら、私にとっては楽なものです」
その決め台詞に、又もや大喝采です。
フルレンジスピーカー・RK-AL12/Gen2の実力
ネットワーク回路を介する一般のマルチウェイスピーカーが逆立ちしても表現する事が出来ない、音の深さ方向への浸透力は望遠鏡で覗き見るほどです。"ドラムの叩く音"と"ベースの弾く音"の区別が、まるでそれらの姿が見えるようです。
だから、聴き手の脳はウーハーとかツイーターとか、スピーカーの音として微塵も認識する事はありません。昨今の性能ばかりを追い求めようとする、意味も芸も無いオーディオ業界の流れに、強烈なノックアウトパンチを喰らわした気分です。
オーディオ本来の進むべく道は、今提示しているこの音楽性豊かな表現にあるのです。初志貫徹、志を忘れてはいけません。目先の利益を追っかけているようでは魂を揺さぶる本物の感動は逃げて行くばかりです。
大沢親分に代わって、堕落した業界に私が渇を入れます。
ゲストとしてその場に居られた評論家の林正儀さんが、オーディオアクセサリー143号でRK-AL12/Gen2のレビューを書いて下さったのですが、『音元出版の試聴室での音とは、まるっきり違う実力にはハッキリ言って驚きである!』とまで口にされたのです。
また、音的には良い場所とは言えない店内入口近くの寺島御大からも、親指を立てて私にGoodのシグナルを送って頂きました。
ジャズ向けのディンプルパターン・インシュレーター
『さて、カイザーさん! 次なる出し物は何でしょう?』
『次はDAコンバーターに、ディンプルの入ったBOSSというインシュレーターを入れて聴いて頂こうと思います』
このディンプルで思い出しますのは、寺島さんをギャフンと言わせようとの意気込みで開発を始めたのがその経緯なのですが、シンバルの表面に波打つ、鈍く渋い音を生み出すハンマーリング効果を狙っての挑戦がテーマでした。
私はBIG JAZZに寺島スペシャルというニックネームまで付けて開発したにも拘らず、そのワイルドかつ魅力ある音を分かって貰えず、寺島さんに駄目出しを喰らったのです。その後改良を加えBIG BOSSとBOSSの大小二つのインシュレーターは、空前の大ヒット商品となったのです。このBOSSは10年近く経った今も現行商品として活躍しています。
『入れる度に音が良くなって行くローゼンクランツ・インシュレーターですが、果たして何点まで上がりましたでしょう?』
拍手はどんどん大きくなります。
そして、『口々に信じられない!』 とか、
『インシュレーターでここまで変化するのは、理屈としてどう理解して良いのか全く分からない』というのが皆さんの本音のようです。
『音楽にリズム感や抑揚、そしてノリの良さなどが際立って来たと思います』
『ジャズのエッセンスが注入されました』
高評価で順調に60点位まで貰えたようです。
『カイザーさん! 満点まで行きそうでしょうか?』
会長のそんな突込みにも負けず、
『この程度の事で喜んで頂けるなら、私も楽なものです!』
・・・と強気に、言いつつも、予定していたスパイク受けインシュレーターを今使っているBASIEからCAPTAINに交換する予定だったのが、BIG3と間違えて忘れた事に気がついたものだから、急遽次の言葉が口から飛び出したのです。
「実は、時間切れ引き分けを狙っているところです」
会場はどっと笑いに包まれました。
響きの方向性が音楽の感動を演出する
『次は管球アンプの下にBIG3を入れて聴いて頂きましょう』
入れてすぐはさほどの変化は感じられませんでしたが、徐々に地味に良くなって行くのが確認出来ます。しかし、冷静に考えてみれば、僅か12センチの振動板一発でメグの店内は生きたジャズの音楽に満ち満ちています。どこの席に座っていても、素晴らしい音がするのには全員の方が驚いているようです。
次々とインシュレーターを入れて音を良くして行く事を何度も続けたので、次は音を悪くする方向での試みをしようと思います。ローゼンクランツのインシュレーターには上下の方向性は勿論の事、360度の水平方向に関しても響きの管理をして作られています。
それを示すアルファベットのAマークが刻印してありますが、そのAマークは機材の背面側になるように設置して頂くのが正しい使い方であります。今日のBIG3の場合はタイプUと混乱しないように数字の3を刻印しています。
CDトランスポートの前の一ヶ所だけクルッと180度回転させ、正面に見えるようにすると、どのような音になるのかを聴いて頂こうと思います。私がやったのでは、何か手を加えたと思われてもいけないので、前にいる一番若い方に青年代表としてやって頂こうと思います。
私がペンライトを照らします。
「出来ましたでしょうか?」
『ハイ! 出来ました』
「それでは、会長鳴らして下さい」
『うわっ! 気持ち悪い音!』
『音がグジャグジャでバラバラになった!』
「それでは、青年代表! 元に戻して下さい」
『おお・・! 元に戻った!』
ここで、寺島御大が一言。
『カイザーマジックを見ているようだ!』
「皆さんどうしてこういう現象が起こるのか理屈を考えてみて下さい」
更に、寺島御大が二言目。
『Aマークなんていい加減だと思って今まで信用してなかったが、今回ハッキリと方向性の違いが分かった!』
『じゃぁ!、何故俺んとこでは分からないのだ?』
「そりゃぁ! 寺島さんところの音が悪いからですよ!」
『言ってくれるじゃない!!』
「色々な方向性を管理出来ていないメーカーの商品が殆どの中で、1個変えた位では分かり難いのが当たり前なんです」。「例えて言うなら、オセロの板面で白と黒が半々状態だとその変化に気がつき難いですよね?!」。「皆さんのシステムはそういう状態にある訳です」。「そんな時は私だって難しいですよ」。
「しかし、当社のように方向性を管理した物作りをしているメーカーはどこにもありません」。「そんな状態の中で音の良し悪しのA.B比較をしたところで、決して正しい判断が出来ない事をお解かり頂けたでしょうか?」。
「皆さん合点ですか?」
『ハイ!』
ラックの調整によるセッティングの極みを披露
カイザーサウンドでは日夜努力してセッティング技術の向上に勤めていますが、オーディオラックの位置調整で果たしてどのように音が変わるのでしょうか? この技術はちょっとハードルが高いので、上手く行くかどうか分かりませんが頑張ってみたいと思います。
「それでは、青年代表前へ出てチェックしていて下さい」。「私の免許証を動かしたい位置まで目印に置きます」。「その動かす幅は免許証の約半分です」。
「それでは、動かします!」
「よしっ!」
『うおおおおお〜〜〜!!!』
会場はうめきとも、声とも区別がつかないようなどよめきが起きました。
「不思議でしょ!」
「これこそが、オーディオの謎なんです!」
『時間も来ましたので、名残惜しいですが、お開きにしたいと思います』
「会長! 1分だけ時間を下さい!」
「では、今日おいでの皆様に特別クリスマスプレゼントを差し上げたいと思います」
「皆さんのオーディオシステムのクリニックを無料で行います」
「その代わり昼飯だけ奢って下さい」
「500円のランチでも結構です」
『本当ですか? 名詞を下さい!』
「私も! 私も!」
こんな大盤振る舞いで幕を閉じた、メグでのクリスマスイベントでした。
ご参会下さいました皆様に、「有難う!」と感謝の言葉を申し上げたいと思います。
カイザーサウンドは、世界に誇れる日本人の真の実力を磨く事を誓います。